生活者がOABの判断をすることは難しい(米FDA諮問委)

 とりあえず速報です。TOPICS 2012.09.05 で紹介しました、米FDAの非処方せん薬諮問委員会(Nonprescription Drugs Advisory Committee)が9日開催され、オキシブチニン(本邦販売名:ポラキス他)の貼付剤(oxybutynin transdermal system)のOTC品を承認するかどうかの審議が行われました。

November 9, 2012: Nonprescription Drugs Advisory Committee Meeting Announcement
http://www.fda.gov/AdvisoryCommittees/Calendar/ucm317757.htm 

 諮問委は、FDAの議事予定(→リンク)で示されているように、まずメーカーによるプレゼンと質疑応答、FDAによるプレゼン(医療用医薬品としてのこれまでの臨床試験の概要、有害事象、生活者が使った場合の調査の評価。2010年頃から26薬局が参加したラベルの理解度を知らべたトライアルの紹介なども行われている)と質疑応答、Open Public Hearing、議論という形で行われたようです。(メーカーのプレゼンの後半とFDAのプレゼンの前半は実際にWEBで見ましたが、眠くなってしまい早々と寝てしまいました)

Briefing Information for the November 9, 2012 Meeting of the Nonprescription Drugs Advisory Committee(討議資料)
 →FDA →Merck Consumer Care
 (これを基にスライドでプレゼンしたという印象。ラベルがどう生活者に理解されるかの研究にページが割かれている。4~5日すればスライドもアップされると思う)

 メーカープレゼンや支援団体からは、「過活動性膀胱(OAB)は中高年の女性にはよくある疾患であり、かといって医師に相談しない(恥ずかしい?)ので、選択肢の必要として有用」との意見が示されたようですが、一方で「OABと似た症状は、尿路感染症、膀胱がん、妊娠、前立腺の病気(OTC版は、前立腺がんの発見が遅れないよう、女性専用なっているが、トライアルでは男性の誤用の可能性があったらしい)、コントロールされていない糖尿病で起こりうり、生活者の自己判断でそれを見分けることは難しい」という意見も示されたそうです。

 結局、生活者が自己判断で適切に選べるかどうか(Does the totality of the data support that consumers can appropriately self-select to use the oxybutynin transdermal system (TDS) in an over-the-counter (OTC) setting?)ということについての評決は、5対6で、諮問委員会としては選ぶことは難しいとの評決が行われています。

 前記事コメントでまいけるさんが紹介されている通り、米国では欧州や日本のような要薬剤師というカテゴリーがありません。このことも、私は今回の評決につながった可能性があると考えています。

 2007年にスタチンのLovastatinのOTC化が支持されなかったように、販売にあたって薬剤師どのように関わるかのような仕組みがないと、FDAが今後検討している、英国や豪州、ニュージーランドのような積極的なOTC医薬品へのスイッチは米国では難しいような気がしました。(Medpage TODAY によれば、使用を2週間までに制限し、改善しなかったら受診勧告をするというラベルに変更するという意見も示されたようですが)

  今回の評決を受けて、来年1月末までにOTC版を承認するかどうかの決定を行いますが、これまでの慣例でいくと、現時点では承認されない公算が高くなりました。

関連情報:TOPICS
 2012.09.05 米FDA諮問委、オキチブチニン貼付剤のスイッチを審議へ
 2012.03.23 OTCの活用を検討する注目の米FDA公聴会が始まる
 2012.04.23 OTC医薬品の活用を検討する米FDA公聴会(続報)
 2012.01.14 過活動膀胱の概念は患者さんのためのもの? それとも?

参考:
FDA Panel Wary on Making Bladder Control Drug OTC
(MedPage TODAY 2012.11.09)
http://www.medpagetoday.com/OBGYN/UrinaryIncontinence/35874
FDA Panel Splits on Merck Plan to Sell Bladder Drug Over-The-Counter
(NASDAQ 2012.11.09 WSJ 配信?)
http://www.nasdaq.com/article/fda-panel-splits-on-merck-plan-to-sell-bladder-drug-over-the-counter-20121109-00891


2012年11月10日 10:09 投稿

コメントが2つあります

  1.  これまでの経験を踏まえ、米FDAは、RxとOTCという2分割の枠組みは変えずに、一定の要件を備えた薬局(ドラッグストア)では、Rxを処方せん無しに薬剤師の判断【?】で販売するという枠組みを提案しています。 これについても賛否両論がある訳ですが、この新パラダイムについて留意しておく必要がありそうです。

  2. アポネット 小嶋

    スライドなどがアップされました、(議事録はまだです)

    2012 Meeting Materials, Nonprescription Drugs Advisory Committee→リンク

    スライドは分厚い資料から抜粋したものになっています。

    FDAプレゼンテーション・スライド→リンク

    メーカー(Merck Consumer Care)プレゼンテーションスライド→リンク