論文・報告あれこれ 2013年2月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。サイドバーに各月記事へのリンク、右下に最終更新日を記してあります。

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
02.24 Perceptions of German GPs on benefits and risks of benzodiazepines and Z-drugs.
Swiss Med Wkly . 2013 Jan 17;143:0.)

現在のエビデンスやガイドラインではサポートされていないにもかかわらず多くの国で、ベンゾジアゼピン系の代わりに、ゾルビデムやゾピクロンなどの“Z-drugs”が処方されているが、この研究はドイツのGPがこれらについてどのような認識を持っているかを調べた。Z-drugsの方がベンゾジアセピン系より効果があり安全だと答えた。(日本でも同じ質問内容で調査するとおもしろい)
02.22 A review of the differences and similarities between generic drugs and their originator counterparts, including economic benefits associated with usage of generic medicines, using Ireland as a case study
 (BMC Pharmacol Toxicol. Published Online 5 Jan 2013)
米国と欧州を中心にジェネリック政策についてレビューしたもの。これまでの医薬品政策の歴史的経緯なども記されていて興味深い。国により生物学的同等性の考え方に相違があるとした。
02.21 Analgesic use and the risk of kidney cancer: A meta-analysis of epidemiologic studies.
( Int J Cancer Published Online 7 Feb 2013)
鎮痛剤の使用と腎臓がんの発症リスクを調べた20の研究のメタアナリシス。鎮痛剤は3つのタイプ分け比較、相対リスクはアセトアミノフェンで1.28、NSAIDsで1.25で有意差があったが、アスピリンでは1.10で有意差はなかった。
02.17 Vitamin B6 deficiency and diseases in elderly people — a study in nursing homes.
BMC Geriatr.Pulished Online 8 Feb 2013)
ビタミンB6の不足が目立つナーシングホームの高齢者と病気との関連を調べた研究。ビタミンB6の不足者は半数に達し、ビタミンサプリメントは効果的であるとした。
02.17 Dietary intake of saturated fatty acids and incident stroke and coronary heart disease in Japanese communities: the JPHC Study
Eur Heart J published Online 12 Feb 2013)
多目的コホート研究JPHC Study の報告。今回は、飽和脂肪酸の食事での摂取と脳卒中や心臓発作などの発症リスクについて検討したもの。
02.17 Use and Views on Social Networking Sites of Pharmacy Students in the United Kingdom
Am J Pharm Educ Published Online 12 Feb 2013)
英国のある薬学部で行われ学生のソーシャルネットワーキングの利用度を調べた調査。569人の学生のうち377人が回答。回答者の91.8%が利用、うち98.6%がFace Book で、ツイッターが33.7%だった。一方で、プロフェッショナリズムに対して不適切な態度も潜在的に見られた。ちなみに引用文献によれば、米国でもFace Book を88%という。
02.17 Experiences from consumer reports on psychiatric adverse drug reactions with antidepressant medication: a qualitative study of reports to a consumer association
BMC Pharmacol Toxicol Published Online 23 Dec 2012)
スウェーデンでは2008年から当局への副作用の患者直接報告が可能になっているが、2002年から先行して行われていたNPO団体のKILENが収集した抗うつ薬に関するフリーテキストコメント付きの181のレポートを解析したもの。
02.17 Association Between Prescribing of Cardiovascular and Psychotropic Medications and Hospital Admission for Falls or Fractures.
Drugs Aging.Published Online 6 Feb 2013)
心血管系や精神神経系の薬剤の使用と転倒との関係を調べた研究。これら薬剤使用によるオッズ比は転倒1.54、骨折1.68。薬効別ではSSRIでOR1.66、非SSRI/三環系抗うつ薬でOR4.39、複数薬の使用でOR3.05だった。
02.17 Pharmaco-nutrient interactions – a systematic review of zinc and antihypertensive therapy.
Int J Clin Pract Published Online 26 Dec 2012)
降圧剤が亜鉛の血清や尿中レベルに影響を与えるかどうかを調べたレビュー。利用できるエビデンスからACE阻害剤の使用との関連が示唆された他、AEBやサイアザイド系利尿薬でも血清レベルを減らす可能性がある。
02.08 Factors associated with falls among older adults living in institutions.
BMC Geriatr. Published 15 Jan 2013)
施設で暮らす高齢者の転倒に関連となる原因を調べたスペインの研究。尿失禁(RR = 2.56[95% CI、1.32-4.94])、抗うつ薬の使用(RR = 2.32[95% CI、1.22-4.40)、不整脈(RR = 2.00[95% CI、1.05-3.81])の他、多剤使用などが危険因子となった。
02.07 Oral bowel cleansing products – serious electrolyte disturbances
(豪州TGA Medicines Safety Update Volume 4, Number 1, February 2013)
経口の腸浄化剤(oral bowel cleansing products)により、脱水や電解質異常に陥る場合があるとした注意喚起。TGAには2002年1月から51の有害事象の報告があり、心停止や脳に障害をきたした事例もあった。心不全や腎機能障害がある高齢者や虚弱者への投与は潜在的にリスクが高いことを知っておくべきとした
02.07 Thyroxine (Eutroxsig and Oroxine) and fractures
(豪州TGA Medicines Safety Update Volume 4, Number 1, February 2013)
長期間のチロキシン補充療法を調べた2つの研究を解析。過剰なチロキシンは骨粗鬆症のリスクを増すだけではなく、高齢者において、不整脈、筋力低下、転倒のリスクも増すかもしれないとした。
02.07 Progressive multifocal leukoencephalopathy – a rare but serious disease
(豪州TGA Medicines Safety Update Volume 4, Number 1, February 2013)
豪州・ニュージーランドの有害事象データベースには免疫調整関連の薬剤で28例の進行性多巣性白質脳症 (PML)の報告があった。リツキシマブ13とNatalizumab13で多かった
02.07 WHO issues new guidance on dietary salt and potassium
(WHO 2012.01.30)

成人のナトリウム摂取量を1日に2000mgあるいは塩5g以下にするべきだとするWHOの新たな指針。一方でカリウムは3510mg以上を摂るべきであるとした。
02.07 Minutes of the PRAC meeting 26-29 November 2012
(EMA 2013.01.23)
EMA(欧州医薬品庁)のファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)の議事録。○○によるシグナル検出などが議論された。
02.07 Minutes of the PRAC meeting 29-31 October 2012
(EMA 2012.12.03)
EMA(欧州医薬品庁)のファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)の議事録。○○によるシグナル検出などが議論された。
02.07 OTC医薬品に関わる専門家教育と供給等に関する調査研究 
(2011年度厚生労働科学研究)(上記リンク先検索画面で、OTC医薬品に関わるまたは201132078Aというキーワードを入れ、検索をかけて下さい)
全国の訪問介護事業所を対象とし、ヘルパーから要介護者のOTC医薬品に関る問題点(購入や保管、使用など)と望ましいOTC医薬品の供給体制についてアンケート調査を行ったもので、要介護者の64.4%がOTC医薬品の購入が困難とされた。また、OTC医薬品購入困難者に対する調査からはOTC医薬品の使用方法、管理内容が不適切と考えられるものが多く、OTC医薬品も含めた薬剤師による在宅あるいは居宅での管理指導の必要性が推察された。(現時点では概要版のみ。報告書が掲載されたら紹介したい2月18日に全文が掲載されました)
02.07 薬剤師需給動向の予測に関する研究
(2010・11年度厚生労働科学研究)(上記リンク先検索画面で、薬剤師需給動向というキーワードを入れ、検索をかけて下さい)
6年制教育を経て養成される薬剤師の社会的需要ならびに6年制教育導入後の供給の動向に影響を与える要因の抽出・整理、またこれらをパラメータとして、需給を予測するための手法・モデルの確立などを目的に行われた研究。現場の薬剤師(2010年度)や業界動向(2011年度)のインタビューをまとめたものが興味深い

最終更新日:2013年2月24日

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