論文・報告あれこれ 2020年8月

しばらくお休みにしていましたが、気が向いたときにときどき再開します。来月以降も継続できるかどうかはわかりません。これまでにツイートしているものが多いです。

他サイトではあまり紹介されていないものを中心に、ちょっと気になった論文や報告、発表などをピックアップしました。気になったものは独立記事に するかもしれません。誤りがあったらご指摘下さい。必ずしも最近アップされたものとは限りません。(特にJ-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間 過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。サイドバーに各月記事へのリンク、右下に最終更新日を記してあります。

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
08.15 Over-the-Counter Ocular Decongestants in the United States – Mechanisms of Action and Clinical Utility for Management of Ocular Redness
(Clinical Optometry 23 July 2020)
点眼薬に配合されるテトラヒドロゾリン、ナファゾリンなどの充血緩和剤についての作用機序と有用性や安全性についてのレビュー
08.14 薬剤師の卒後研修カリキュラムの調査研究
(2019厚生労働科学研究)
米国と国内の状況をまとめたもの。米国におけるレジデント研修は、臨床薬剤師としてのキャリアパスの最初のステップとして、患者ケアに直接かかわるためには必須となっており、米国薬剤師業務の発展に最も大きなな影響を及ぼしたと言われている。現在、薬学部卒業生の30−40%がレジデント研修を希望しており、その数は年々増加している。国内調査では、1505施設から回答。そのうちの約3割の施設で、カリキュラムに基づいた1ヶ月以上の薬剤師レジデントあるいは新人教育として卒後研修が実施。修了後の進路は、実施施設への就職がもっとも多かったが、他の病院や薬系大学の教員、行政機関の他、22名、5%が保険薬局にも就職。
08.14 The Effect of Coffee on Pharmacokinetic Properties of Drugs : A Review
Biomed Res Int. 2020 Jul 24)
コーヒーの薬物代謝への影響について検討したもの
08.14 Herbal Medicine for Cardiovascular Diseases: Efficacy, Mechanisms, and Safety
Front Pharmacol. 2020 Apr 7)
ニンジン、イチョウ葉、マンネンタケ(霊芝)などをレビュー
08.14 Ginkgo biloba L. and cardiac arrhythmias
(WHO Pharmaceuticals Newsletter No. 3, 2020 p14-22)
シグナル検出イチョウ葉エキスが不整脈と関連があるかもしれない
08.14 Lévétiracétam (KEPPRA) et allongement de l’intervalle QT
(ANSM 2020.8.3)
2020年7月のEMAのPRACでレベチラセタム(イーケプラ)がQT延長を引き起こす可能性があると結論付けられたことを受け、仏ANSMはQT延長が知られている薬との併用等を注意喚起
08.14 The outcome of domiciliary medication reviews and their impact: a systematic review
Int J Pharm Pract 2020 Jun 28)
在宅患者への薬物療法についてのレビューの取り組みについてのレビュー。対象となった引用文献にもあたってみたい。
08.14 Pharmacy services and role development in UK general practice: a cross‐sectional survey
Int J Pharm Pract 2020 Jul 5)
現在、英国ではGPに薬剤師を配置する政策がすすめられているが、先行?事業として行われた地域でどのようなサービスが行われたかを調べたもの。今後さらにGPへの薬剤師の配置がすすむことが予感される。
08.14 Job Satisfaction among Swedish Pharmacists
Pharmacy. 2020 Jul 24)
スウェーデンの Umeå 大学の薬学プログラムを卒業した薬剤師を対象に調査。以前行われた調査とも比較。満足度は高い
08.14 A Systematic Review of Randomized Controlled Trials of Telehealth and Digital Technology Use by Community Pharmacists to Improve Public Health
Pharmacy. 2020 Aug 4)
地域薬剤師が、Public Health 目的で使用している遠隔医療とデジタル技術のツールを特定し、これらが Public Health のアウトカムにプラスの影響を与えるかどうかを調べたもの
08.14 健康食品の安全性確保に資する情報提供、品質確保、被害情報収集体制の構築に関する研究
(2019厚生労働科学研究)
「薬局における健康食品および食事・栄養摂取に関する相談の実態調査」他、興味深い分担研究が並びます

関連ツイート

08.14 次世代バイオ医薬品等の革新的な医薬品創出に向けた環境整備に関する研究
(2019厚生労働科学研究)
病院ならびに地域におけるバイオ医薬品を含むフォーミュラリー作成状況、BSの採用や使用、処方せん発行の状況とともに、BS使用促進に関わる課題についても調査
08.14 薬価制度抜本改革に係る医薬品開発環境および流通環境の実態調査研究
(2019厚生労働科学研究)
今後の薬価制度のあり方についての基礎資料を整備し、今後の医薬品関連産業のあり方の視座から課題の整理と提言を行うことを目的に行われた。別紙3の「医療用医薬品と書籍流通の相違」というのが興味深い
08.14 かかりつけ薬剤師の専門性の検討とそのアウトカムの調査
(2019厚生労働科学研究・総合)
下記研究の総合研究(3年間のまとめの報告)「長期処方の分割調剤における診療報酬点数のシュミレーション」が興味深い

関連ツイート

08.14 かかりつけ薬剤師の専門性の検討とそのアウトカムの調査
(2019厚生労働科学研究・総括)
総括研究年度終了報告書の「保険者機能を通じたかかりつけ薬剤師の介入による処方の改善」というのが興味深い。日本は支払い側(保険者)の権限をもっと強くした方がいいと思う。

関連ツイート

08.14 An overview of pharmacy’s impact on immunisation coverage: A global survey
(FIP 2020.08.04)

2016年以来の4年ぶりの調査結果。世界99か国を調査結果をまとめたもので、 36の国と地域で薬剤師によるワクチン投与が可(薬局主体では23カ国)。前回調査との比較も
レポートでは規制の枠組み、ワクチンの管理、償還モデル、トレーニング、予防接種の記録、薬局業務の拡大への障壁など、薬剤師主導の予防接種などさまざまな側面を評価。→関連ツイート
08.14 緊急避妊薬の承認とその一般用医薬品化に関する議論 (1)
(国際公共政策研究. 8(1) P.191-P.205, 2003)

緊急避妊薬の承認とその一般用医薬品化に関する議論 (2 ・完)
(国際公共政策研究. 8(2) P.85-P.101, 2004)

2003年の阪大の紀要論文。2000年台前半までの経緯知るうえで参考になります。

  1. はじめに
  2. 緊急避妊法の変遷と社会的意義
  3. 緊急避妊薬の承認とその-般用医薬品化に関する議論
  4. 日本における緊急避妊薬の承認とその-般用医薬品化への展望
  5. おわりに
08.14 かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究
(2019年度厚生労働科学研究)
分担研究

  • プロトコールに基づく経口抗がん薬薬物治療管理の効果を実証する調査~長崎大学病院と長崎県薬剤師会会員薬局連携研究~
  • 栃木県立がんセンター地域での取り組み
  • 医療機関と保険薬局の連携推進DVD の制作と連携の課題
  • シンポジウム講演スライド
  • 登録販売者の資質向上のあり方に関する研究
  • オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤に係る研修会の標準プログラムの策定
  • 2019.12.14開催の「オンライン診療における緊急避妊薬に関する講習会-調剤する薬剤師さんへ向けての指導講習-」のスライド
08.14 Chronic pain: assessment and management(Draft)
(NICE 2020.08)

NSAIDsやアセトアミノフェンよりも、アミトリプチンやSSRIなどの抗うつ剤などを推奨?
08.14 ラメルテオン・スボレキサントを含めた睡眠薬の服用と転倒への影響:症例対照研究
(薬学雑誌 140(8) p1041-1049, 2020)
札幌医科大学附属病院の研究
08.14 Outpatient Prescriptions of Kampo Formulations in Japan
Intern Med July 21, 2020)
JMDC の2017年4月~2018年3月のデータを解析
最も処方されたのは、葛根湯、小青竜湯、麻黄湯、麦門冬湯、五苓散の順。以下、麻黄附子細辛湯、桔梗湯、芍薬甘草湯、葛根湯加川きゅうシンイ、補中益気湯、当帰芍薬散、加味逍遙散、半夏厚朴湯、小柴胡湯加桔梗石膏、六君子湯、桂枝茯苓丸、十味敗毒湯、大建中湯、柴胡桂枝湯、柴苓湯の順
処方の85%で西洋薬と組み合わせて使用​​
08.14 ミニ特集 セミナー/話題
(ファルマシア 55(8) p737-769, 2019)
  • ドーピングとアンチ・ドーピング
  • ドーピング検査の流れとその後の手続き
  • OTC医薬品に関するアンチ・ドーピング情報と問題点
  • スポーツファーマシストの役割-和歌山国体における取り組み
  • アンチ・ドーピング規則違反の現状と課題
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたアンチ・ドーピング活動
  • ドーピング検査における検体分析
  • アスリートのパフォーマンス向上や身体ケアへの薬剤師としての支援
08.14 大正~昭和初期におけるセルフメディケーションとしての配置薬~愛知県の配置販売一個人業者の史料の検討~
(薬史学雑誌 55(1) p83-91, 2020)
赤木佳寿子氏らの調査報告。こういったものも史実として受け入れる必要がある
08.14 日本の薬学を哲学する
(薬史学雑誌 55(1) p78-82, 2020)
今の日本の薬学(教育)にこういう概念はないかもしれない
08.14 我が国の薬剤師生涯学習の歩みについて―内山 充先生を偲んで―
(薬史学雑誌 55(1) p38-53, 2020)
08.14 日本生まれの肝 ・ 胆 ・ 消化機能改善剤 ウルソデオキシコール酸開発の歩み
(薬史学雑誌 55(1) p13-20, 2020)
現在も世界各国で肝疾患などに広く用いられているウルソデオキシコール酸(UDCA)が世界で初めて発売されたのは,今から 60 年以上も前の日本においてであった
08.14 認知症治療剤研究開発の潮流
(薬史学雑誌 55(1) p1-5, 2020)
日本薬史学会 2019 年会での、エーザイ 木村禎治氏の年会講演を補筆したもの
08.14 THE A.R.T. OF COMMUNITY PHARMACY :
ADVICE-ONLY , REFERRALS & TREATMENT
(Community Pharmacy Scotland)

NHS Pharmacy First の立ち上げにあわせて発表された研究。こんなにたくさんのadvice ができるのだろうか
08.14 NHS Pharmacy First Info Hub
(Community Pharmacy Scotland)

 

コロナの影響で開始が遅れていた、これまでの Minor Ailment Services に代わって、2020.7.29 からスコットランドで開始される NHS Pharmacy First の情報サイト。軽度疾患へのアドバイス、医薬品の提供、GPへの紹介などが主なサービスで、対象を介護施設(care homes)在住者にも広げ、GPチーム向けのガイダンスも示している。日本は薬剤師が在宅業務に注力、一方、英国を初め海外では、チョットした病気は薬局へといった、今や minor illnesses への対応がトレンド。この差は何だろう。

関連ツイート

08.14 New obesity strategy unveiled as country urged to lose weight to beat coronavirus (COVID-19) and protect the NHS
(Department of Health and Social Care 2020.07.27)
ジャンクフードの広告規制は他国でも模索されているが、今回の英国のは具体的。日本ではまず無理

  • 脂肪、砂糖、塩分が多い食品のテレビやオンライン広告は、子どもたちが目にする午後9時までは禁止する
  • 塩分、糖分、脂肪分が多い不健康な食品の「1つ買うと1つ無料」などのプロモーションを制限する
  • アルコールなどのカロリー表示を推進する
08.14 Methylephedrine-induced heart failure in a habitual user of paediatric cough syrup: a case report
Eur Heart J Case Rep. 2020 Jun; 4(3): 1–4.)
国内症例報告。せき止めになっているがアセトアミノフェンが配合されているので、小児用風邪薬の液剤の濫用。夜勤での睡眠を回避するために20年間にわたり、1日3~4本のペースで大量に服用。入院時、胸部X線は肺うっ血を明らかにし、心電図は左軸偏差を伴う洞性頻脈を示した。某総合風邪薬を習慣的に使用している人はこういうことになるリスクがあることに留意して欲しい。商品名はおそらくこれ(今はコデインフリー)
08.14 Adverse event detection using the FDA post-marketing drug safety surveillance system: Cardiotoxicity associated with loperamide abuse and misuse
(J Am Pharm Assoc. 2017 Jan 7)
アンサングシンデレラ関連で検索してヒットした論文。米FDAの有害事象報告システム(FAERS)に寄せられた、ロペラミドの使用との関連が疑われる重篤な心臓の有害事象報告を解析したもの。
08.14 Over-the-Counter Ocular Decongestants in the United States – Mechanisms of Action and Clinical Utility for Management of Ocular Redness
Clinical Optometry 23 July 2020)
点眼薬に配合されるテトラヒドロゾリン、ナファゾリンなどの充血緩和剤についての作用機序と有用性や安全性についてのレビュー
08.14 数えきれないほど叩かれて-日本のスポーツにおける子どもの虐待
(ヒューマン・ライツ・ウォッチ 2020.07.20)

08.14 Generic instruments for drug discontinuation in primary care: A systematic review
Br J Clin Pharmacol 26 March 2020)
プライマリケア領域におけるpolypharmacy患者の薬剤中止のための一般的な手段についてレビュー
08.14 PAGB survey suggests coronavirus will change attitudes to NHS use
(PAGB 2020.07.20)
英国のOTC業界団体がまとめたレポート
08.14 医療システムの持続可能性とイノベーションの両立タスクフォース 有識者報告書
(日本医療政策機構 2020.07.17)

08.14 2019年 海外情勢報告
(厚労省)
英国における薬事の紹介は詳しい。薬剤師や薬局に関する規制・監督は、全国薬事評議会 (General Pharmaceutical Council)が実施。薬剤師の役割の見直しについても検討が進められ、薬剤師による処方が可能な薬剤の種類が増加し、相談指導に係る報酬の評価基準も改訂され、薬剤師が様々な事項の相談にのることができるようになった。
08.14 戦後日本における薬剤師職能の変容 : 医薬分業の発達史の観点から
(一橋大機関リポジトリ 2016.03.18)
赤木佳寿子さんの博士論文(社会学)。病院薬剤師が臨床の場に出るようになった背景や経緯についても、わかりやすく触れられている。
08.14 患者・生活者は、医薬品についてインターネット上で、どのような情報を求めているか?
(社会薬学 39(1) p.35-39, 2020)
昭和大岸本らの報告。患者・生活者がネット上で医薬品についてどのような情報を求めているか明らかにするため、 Yahoo! 知恵袋を対象に医薬品やヘルスケアに関する質問を抽出し、内容分析を行った。

最終更新日:2020年8月15日

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