論文・報告あれこれ 2013年4月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。サイドバーに各月記事へのリンク、右下に最終更新日を記してあります。

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
04.23 Effects of sitagliptin beyond glycemic control: focus on quality of life
Cardiovascular Diabetology Published Online 21 Feb 2013)

シタグリプチンの血糖降下作用以外の効果を調べた佐賀大の研究。血圧や血清脂質、睡眠の質の改善も認められたとした。
04.23 特定施設入居者の服薬内容の検証に関するモデル事業報告書
(特定協 2013.03.31)
老人ホーム、サ高住の入居者の服薬内容の実態や課題等について把握するとともに、実際に主治医とともに服薬内容を再確認・見直すことにより、入居者の服薬内容の変化をモデル28施設1086人について調査した。処方を受けている薬局数は1か所とした人が85.4%を占めた。
04.23 Cigarette smoking and smoking cessation in relation to risk of rheumatoid arthritis in women
Arthritis Res Ther Published Online 22 Apr 2013)

スウェーデンのコホート研究。54-89歳の女性34101人を追跡調査。1~7本/日たばこを吸う人は吸わない人と比べ関節リウマチの発症リスクは2.31倍、喫煙期間が1~25年で1.6倍など、喫煙本数・喫煙期間が多いほど、関節リウマチの発症リスクが高い傾向にあった。 
04.23 Bisphosphonate Use and Risk of Colorectal Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis
Br J Clin Pharmacol Published Online 18 Apr 2013)
ビスホスホネートと大腸がんリスクの関連性を調べたシスティマティック・レビュー。相対危険度は0.85、また長期的な使用の場合は0.73で、保護効果が示唆された。
04.23 Safety and efficacy of duloxetine treatment in older and younger patients with osteoarthritis knee pain: a post hoc, subgroup analysis of two randomized, placebo-controlled trials
BMC Musculoskelet Disord Published Online 17 Apr 2013)
変形性膝関節症のへのデュロキセチン(サインバルタ)の有効性について調べたRCT。60mg/日で効果が見られた。有害事象は若者でめまいが多かったものの、それ以外は若者・高齢者で傾向は変わらなかった。
04.23 Osteoarthritis guidelines: a progressive role for topical nonsteroidal anti-inflammatory drugs
J Multidiscip Healthc Published Online 4 Apr 2013)
変形性関節症GLにおけるNSAIDs外用薬の役割についての総説
04.23 Neuropsychiatric adverse events of varenicline: a systematic review of published reports.
J Clin Psychopharmacol. 2013 Feb;33(1):55-62.)

バレニクリンの精神神経系の有害事象25例について詳しく検討をしたもの。
04.23 Pregnancy outcome following maternal exposure to statins: a multicentre prospective study.
BJOG. 2013 Mar;120(4):463-71.)

スタチンの胎児への影響を調べた多施設後ろ向き研究。暴露群で早産のオッズ比が2.1となったものの、出生時体重や在胎週数に有意差はなく、また催奇形性は認められなかった。
04.23 Age-Related Response to Redeemed Antidepressants Measured by Completed Suicide in Older Adults: A Nationwide Cohort Study.
(Am J Geriatr Psychiatry Published Online 6 Feb 2013)
抗うつ剤の使用との関連が疑われる自殺について年齢による違いがあるかどうかを調べたデンマークの population-based cohort study。抗うつ剤を処方されている人では自殺率の年齢依存減少が見られ、研究者らは、高齢者では抗うつ薬がより奏効しているかもしれないとした。
04.23 Investigation of herb-drug interactions with ginkgo biloba in women receiving hormonal treatment for early breast cancer
Springerplus Published Online 22 Mar 2013)
早期乳がんの治療で用いられる、アナストロゾール、レトロゾール、タモキシフェンのイチョウ葉エキスの併用による薬物動態の影響は調べた研究。影響は受けなかった。(早期乳がん患者はどういう目的で使うんだろう?)
04.23 Mometasone furoate nasal spray plus oxymetazoline nasal spray: Short-term efficacy and safety in seasonal allergic rhinitis
Am J Rhinol Allergy. 2013 Mar;27(2):102-8.)
フランカルボン酸モメタゾン点鼻にオキシメタゾリン点鼻を上乗せした場合の季節性アレルギー性鼻炎治療の有用性と安全性を検討したもの
04.23 Galantamine-associated nightmares and anxiety
Consult Pharm. 2013 Apr;28(4):243-6.)
症例報告。悪夢の出現は、ガランタミンを開始した時から始まり、増量とともにひどくなった。
04.23 Agricultural Implications of the Fukushima Nuclear Accident
Springer

原子力発電所の事故後の農業に与える放射性物質汚染の影響について記したもの。無料でアクセスできる。
04.09 Sex, drugs and alcohol: drug interactions of concern to consumers
Aust Prescr 2013;36:46-8)
アルコールと相互作用がある薬剤、避妊薬と相互作用のある薬剤についての総説
04.09 Drug-induced sexual dysfunction in men and women
Aust Prescr 2013;36:42-5)
性機能不全を起こす可能性がある医薬品についての総説
04.09 飲酒・喫煙・薬物乱用についての全国中学生意識・実態調査(2012年)研究報告書
(厚生労働科学研究 2013.03)

2年に1回行われている全国調査。今回初めて「脱法ドラッグ」の使用経験について尋ねたところ、回答した54,486人中、 脱法ドラッグを1回でも使ったことがあると回答したのは120人(0.2%)で、誘われた経験があるのは404人(0.7%)に上った。。
04.09 全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(2012年)研究報告書(厚生労働科学研究) 

これも2年ごとに行われている調査。全国有床精神科医療施設1609施設を対象に行われたもの。薬物関連障害患者848症例を検討。主たる原因薬物の割合は多い順に覚せい剤(42.0%)、脱法ドラッグ(16.3%)、睡眠薬・抗不安薬(15.1%)、有機溶剤(7.7%)と続いた。脱法ドラッグ関連障害患者は若者男性が多く、従来とは異なる新たな薬物乱用層が出現した可能性が推測されるとした。
04.09 Effects of sitagliptin beyond glycemic control: focus on quality of life
(Cardiovascular Diabetology Published Online 21 Feb 2013)

佐賀大が中心になって行った、シタグリプチンの血糖コントロール以外の効果を検討した前向きオープンラベル多施設試験。血圧や脂質プロファイル、QOL、糖尿病による症状の他、睡眠の質も改善させるとした。
04.09 Economic impact of switching to fixed-dose combination therapy for Japanese hypertensive patients: a retrospective cost analysis
BMC Health Services Research Published Online 3 Apr 2013)
降圧剤配合剤の経済学的効果を検討した明薬と日調の研究。
04.09 Towards better patient care: drugs to avoid Drugs that should not be used
Prescrire Int 2013; 22 (137): 108-111.)

いわゆる「使ってはいけないくすり」のリスト。仏 english.prescrire 誌 掲載の2010-2012年の情報を総括したもの。薬効群ごとにその理由が示されている。日本でもおなじみの薬も出てくる。
04.09 Dietary patterns and risk of dementia in an elderly Japanese population: the Hisayama Study.
Am J Clin Nutr. Published Online 3 Apr 2013)

食事パターンと認知症発症リスクとの関連を検討した久山町研究。1回の食事において、大豆と大豆製品、野菜、藻類、牛乳・乳製品の摂取量が多く、米の摂取量が少ない食事パターンは、認知症発症のリスクを有意に低下させることが示された。
04.09 高齢者糖尿病患者における緊急入院症例に関する検討
(薬学雑誌 133(4) p473-478 2013)
JA吉田総合病院の報告。80歳以上の患者で感染症、低血糖を原因とした場合、死亡退院する割合が高いことが分かった
04.09 SAPG Recommendations for antibiotic use in frail elderly
(Scottish Medicines Consortium 2013.02)

スコットランドのl抗菌薬処方グループがまとめた虚弱な高齢者(frail elderly)に抗生剤を処方する際に考慮すべき点をまとめた指針。
04.09 Antihypertensive Drugs and the Risk of Congenital Anomalies.
Pharmacotherapy.Published Online 1 Apr 2013)
降圧剤と先天性異常のリスクを調べた、Matched cohort study。相対リスク比はACE阻害薬で2.5、βブロッカーで1.4に達したが、統計学的有意差はなかった。
04.09 Safety and efficacy of long-term esomeprazole 20 mg in Japanese patients with a history of peptic ulcer receiving daily non-steroidal anti-inflammatory drugs
BMC Gastroenterology Published Online 26Mar 2013)
エソメプラゾールをNSAIDsの潰瘍予防に使用した場合の有効性と安全性に関する日本の研究
04.09 第1回 日本医師会 在宅医療支援フォーラム
(日医 2013.04.02 掲載)
ビデオと資料がアップされており、各地域の取り組み状況を知ることができます。
04.01 電通総研、「市販薬のインターネット販売に関する意識調査」を実施
― インターネット販売に賛成が6割、市場は最大で約2,400億円拡大する可能性 ―

(電通 News Relases 2013.03.27)
全国 20代~60代の男女(性・年代ごとに200名ずつ)を対象としたインターネット調査。市販薬のインターネット販売には賛成6割、反対1割だった。「インターネット販売に感じるメリット」「インターネット販売に感じるデメリット」の男女別年齢別の違いは興味深い。
04.01 Statins of high versus low cholesterol-lowering efficacy and the development of severe renal failure
Pharmacoepidemiol Drug Saf Published Online 22 Mar 2013)
台湾の後向きコホート研究。コレステロール低下作用の強いスタチン(アトルバスタチン・ロスバスタチン)では作用能弱いスタチン(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン)と比べ、重篤な腎障害のリスクが増加する可能性がある(ハザード比1.13)
04.01  Ginkgo biloba Extract for Patients with Early Diabetic Nephropathy: A Systematic Review
(Evid Based Complement Alternat Med 2013)
(オープンアクセス)
初期の糖尿性腎障害に対するイチョウ葉エキスの有用性と安全性についての中国のシスティマティック・レビュー。中国では腎機能と蛋白尿の改善目的で使われているとのこと。(血小板凝集抑制作用が確かにあるけど、本当かなあという気も。)
04.01 Meta-analysis: colonoscopic post-polypectomy bleeding in patients on continued clopidogrel therapy
Aliment Pharmacol Ther Published Online 26 Mar 2013)
(オープンアクセス)
クロピドグレルを使用中の人が大腸内視鏡的ポリープ切除する場合は、5~7日の服用中止が勧奨されているが、継続服用した場合の出血リスクを調べたシスティマティック・レビュー。相対リスク比は2.54。30日以内の出血の場合は有意差がなかったが、30日経過して起こる出血の相対リスク比は4.66だった
04.01 Use of tiotropium Respimat(R) SMI vs. tiotropium Handihaler(R) and mortality in patients with COPD.
Eur Respir J. Published Online 21 Mar 2013)

最近何かと話題のチオトロピウムのデバイスによる安全性の違いを調べたオランダのコホート研究。ハンドヘラーと比べ、レスピマットの死亡リスクは27%増で、心血管や脳血管死は56%増加した。また、心血管疾患を有する患者では死亡リスクは1.36倍となった。
04.01 Safety and tolerability of inhalational anticholinergics in COPD
Drug Healthc Patient Saf Published Online  8 Mar 2013)
(オープンアクセス)
COPDの治療における吸入抗コリン薬の安全性と忍容性についての総説。
04.01 High-frequency use of over-the-counter analgesics among adolescents: reflections of an emerging difficult life, a cross-sectional study.
Scand J Caring Sci. Published online 20 Mar 2013)
ノルウェーの中規模も町の6つの中学で行われた断面研究。10年生(15-16歳)の26%がOTC鎮痛薬を週に1回~毎日常用していた。常用している生徒は、カフェイン飲料を好んだり、自尊心が低い傾向があった。
04.01 Over-the-counter medicine abuse – a review of the literature
J Subst Use. 2013 April; 18(2): 82–107.)
(オープンアクセス)
1990年から2011年までに発表されたOTC医薬品の乱用に関する報告や研究をレビューしたもの。
04.01 Pharmacist-led workshops to enhance pharmacotherapy knowledge for medical students.
Teach Learn Med. 2013 Apr-Jun;25(2):118-21.)
薬剤師主導による医学生のための薬物療法の知識を高めるためのワークショップについての報告。満足度は高かったが、薬物療法の知識のテストでのパフォーマンスは改善しなかった。(フルテキストで読んでみたい)
04.01 Tobacco imagery on prime time UK television
Tob Control Published Online 11 MAr 2013)
(オープンアクセス)
映画での喫煙シーンが青少年の喫煙行動に影響するとの報告があるのを踏まえ、英国TVのプライムタイム番組におけるたばこ関連シーンの露出度がどのくらいあるかを調べた研究(日本でもこういうう研究はだれかやった方がいいかも)
04.01 Adverse Drug Reaction-Related Hospitalizations Among Seniors, 2006 to 2011
(Canadian Institute for Health Information 2013.03.26)

カナダの研究機関がまとめた、副作用による高齢者の入院事例に関する報告書
04.01 横浜薬科大学に対する大学評価(認証評価)結果
公益社団法人大学基準協会・2012年度「大学評価」の結果について

大学などの評価機関「大学基準協会」が2012年度に実施した大学の認証評価結果で「不適合」となってしまった、横浜薬科大学の認定評価書。随分細かなところまで調べ、厳しい評価を行っていることがわかる。
04.01 Reports of adverse reactions comprising hearing loss and memory problems in association with the use of tadalafil (Cialis®)
(Danish Pharmacovigilance Update 17 Jan 2013)
市販後調査に関する、デンマーク医薬品庁の定期刊行誌から。PDE-5阻害薬の使用との関連が疑われる聴力の問題(聴力損失、耳鳴)8例と一時的な記憶喪失の4例の副作用報告を受け取った。
04.01 Time to First Cigarette and 4-(Methylnitrosamino)-1-(3-Pyridyl)-1-Butanol (NNAL) Levels in Adult Smokers; National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES), 2007–2010
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev Published Online 29 Mar 2013)

げっ歯類の肺がんを誘発するとする NNALという物質の血中濃度で発がんリスクを調べた研究。起床後5分以内にたばこを吸う人では肺がんや口腔がんの発症リスクを高めるとした。
04.01 Minutes of the PRAC meeting 4-7 February 2013
(EMA Published 15 Mar 2013)
2月4-7日に行われたEMA(欧州医薬品庁)のファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)の議事録。トラマドール(低血糖)のシグナル検出などが記されています。

最終更新日:2013年4月24日

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