つわりとメトクロプラミドの使用

 妊娠初期のつわりへの対応は、催奇形性の懸念から薬物療法を行いにくいのが現状ですが、メトクロプラミド(プリンペラン)につわりへの適応があるイスラエルで、妊娠初期に母親が使用した場合、実際に出生児に影響があったかどうかという研究結果がNEJM 誌に掲載されています。

(薬剤師関連のstudyについて、一部については下記のスタイルで紹介することにしました。記述法などに誤りがございましたらご指摘下さい。)

研究の
目的や背景
つわりの症状緩和にメトクロプラミドを使用した場合、出生児に影響があるか
研究の方法  
どんな患者が研究の対象? イスラエル南部地域のSoroka Medical Centerで単胎児を出産した15〜49歳の女性81,703人のデータ
何を指標? 妊娠第一三半期にメトクロプラミドの処方記録がある人(3,458人)
何と比較? 妊娠第一三半期にメトクロプラミドの処方記録のない人(78,245人)
わかったこと 母親の年齢、喫煙の有無、人種などを考慮して統計学的処理をしたところメトクロプラミドへの暴露が出生児に与える影響はなかった(暴露群 vs 非暴露群)

大きな奇形 (OR 1.04, 95% CI 0.89 to 1.21)(5.3% vs 4.9%)
軽度の奇形 (OR 1.10, 95% CI 0.92 to 1.31)
低体重児の出生 (OR 1.01, 95% CI 0.89 to 1.14)(8.5% vs 8.3%)
早産 (OR 1.15, 95% CI 0.99 to 1.34)(6.3% vs 5.9%)
周産期の死亡 (OR 0.87, 95% CI 0.55 to 1.38)(1.5% vs 2.2%)
1分後の低アプガースコア (OR 0.97, 95% CI 0.84 to 1.13)
5分後の低アプガースコア (OR 0.84, 95% CI 0.57 to 1.22)

コ メ ン ト 研究者らは、つわり対策としてメトクロプラミド使用することは安全であるとしていますが、この研究ではメトクロプラミドを実際に服用したかどうかは確認しておらず、また研究者らが講演などでお金を受け取っていることから、一部の研究者の間からは、使用には慎重であるべきだとする声もあります。
論 文 名 The Safety of Metoclopramide Use in the First Trimester of Pregnancy
掲載雑誌等 N Engl J Med 2009; 360: 2528-35.
リ ン ク http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/360/24/2528

関連情報:
アプガースコア(妊娠・出産・おっぱい・育児情報)
 http://memoru.babymilk.jp/ninnsinn/akatyan/apgar.html

TOPICS 2009.02.28 メトクロプラミドによる遅発性ジスキネジアは非可逆的(米FDA)

論文紹介記事:
 Antiemetic Agent Safe During First Trimester of Pregnancy
   (Medpage TODAY 2009.6.09)
  http://www.medpagetoday.com/OBGYN/Pregnancy/14644
 Morning sickness drug shown safe for babies
  (MSNBC 2009.6.10 AP配信)
  http://www.msnbc.msn.com/id/31208741/
 Study: A Safe Drug for Morning Sickness?(TIMES 2009.6.10)
  http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1903944,00.html


2009年06月11日 12:41 投稿

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