パーキンソン病治療薬と心臓弁膜症

 NEJM誌の最新号に、心臓弁膜症と麦角アルカロイド誘導体のペルゴリド、カベルゴリンの使用が関連づけられるとする2つの論文が掲載されています。

 一つは、何らかのパーキンソン病治療薬を飲んでいる患者155人と健常者90人の心エコーを比較分析したイタリアの研究グループによる研究で、ペルゴリド(64例)またはカベルゴリン(49例)を使用している人の中でそれぞれ、23.4%、28.6%で中程度以上の心臓弁膜症を有しているということがわかったそうです。(コントロール群では5.6%。ただし、統計上の有意差は明確にはなっていない)

 Valvular Heart Disease and the Use of Dopamine Agonists for Parkinson’s Disease
   (N Engl J Med 2007 Jan 4; 356:39-46)
     http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/356/1/39

 もう一つの研究は、少なくとも2種類以上の抗パーキンソン病薬を服用している英国の11,417人を約4年間の追跡調査をしたドイツの研究グループの研究で、ペルゴリドを服用している人は他剤を服用している人に比べ7.1倍(もっとも高容量を服用していた場合では37倍)、またカベルゴリンを服用している人でも4.9倍(高容量を服用していた場合では50.3倍)も心臓弁膜症のリスクが高まることがわかったそうです。(他の麦角アルカロイド誘導体のブロモクリプチンやリスリド、非麦角アルカロイド系では増加はみられなかったが、アマンタジンでは増加がみられた)

 Dopamine Agonists and the Risk of Cardiac-Valve Regurgitation
 (N Engl J Med 2007 Jan 4; 356:29-38)
     http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/356/1/29

 今回の研究は、かつて食欲抑制剤として米国で使われていた5-HT作動薬のフェンフルラミンが心毒性で1997年に発売が中止されたのを参考に、5-HTB2作用のあるペルゴリド、カベルゴリンも同様の副作用があるのではないかという仮説の下に調べられたものですが、今回の結果を受けて、5-HTB2作用のある他剤についても処方を避けるべきであるとしています。

 既に米国では、ペルゴリドについては2003年には黒枠警告にされるなど、心臓弁膜症の副作用は既に周知はされてはいますが、今回の予想を超えるリスクの増大がわかったことで、研究者らはこの2剤について、リスクとベネフィットを考慮して使うべきとしています。また各紙によれば、「新しい薬剤が出ているのでこれらの処方は推奨できない」「FDAは承認を見直すべきだ」などの声もあがっているようです。

参考:ロイター通信、ニューヨークタイムス、Foodconsumer.org 1月3日
 Parkinson’s drugs may be riskier than thought
  (MSNBC 2007.1.3 AP通信配信)
   http://www.msnbc.msn.com/id/16454843/
 Heart-Valve Disease Linked to Two Parkinson’s Drugs
  (Medpage TODAY 2007.1.4)
   http://www.medpagetoday.com/Cardiology/AcuteCoronarySyndrome/tb/4801

1月4日18時10分掲載 5日14時20分更新


2007年01月04日 18:10 投稿

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