ディレグラ配合錠は長期連用には適さず

 19日開催の薬食審薬事分科会で、フェキソフェナジン塩酸塩と塩酸プソイドエフェドリンの合剤のディレグラ配合錠の添付文書案が示されています。(正式承認はおそらく1か月以内、薬価収載は2月か3月か)

 重要な基本的注意に、「本剤の使用は鼻閉症状が強い期間のみの最小限の期間にとどめ、鼻閉症状の緩解がみられた場合には、速やかに抗ヒスタミン剤単独療法等への切り替えを考慮すること。(本剤を2週間を超えて投与したときの有効性及び安全性は検討されていない)」と記されており、長期の服用には適さないことがうかがわれます。

ディレグラ配合錠の添付文書案
(日刊薬業行政資料)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226585918847#page=39

 【効能又は効果】
アレルギー性鼻炎

(効能又は効果に関連する使用上の注意)
鼻閉症状が中等症以上の場合に本剤の使用を検討すること。

【用法及び用量】
通常、成人及び12歳以上の小児には1回2錠(フェキソフェナジン塩酸塩として60mg及び塩酸プソイドエフェドリンとして120mg)を1日2回、朝及び夕の空腹時に経口投与する。(プソイドエフェドリンはOTC配合量の倍)

(用法及び用量に関連する使用上の注意)
塩酸プソイドエフェドリンは主として腎臓を経て尿中に排泄されるので、腎機能障害のある息者では適宜減量すること。(排泄が遅延し、作用が強くあらわれるおそれがある。)

【禁忌】
1.本剤の成分及び塩酸エフェドリンと化学構造が類似する化合物(エフェドリン塩酸塩又はメテルエフェドリン塩酸塩を含有する製剤)に対し過敏症の既往歴のある患者
2.モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害斉」を投与中又は投与中止後14日以内の患者(併用により、急激に血圧が上昇するおそれがある)
3.重症の高血圧の患者(症状が悪化するおそれがある)
4.重症の冠動脈疾患の息者(症状が悪化するおそれがある)
5.狭隅角緑内障の患者(症状が悪化するおそれがある)
6.尿閉のある患者(症状が悪化するおそれがある)
7.交感神経刺激薬による不眠、めまい、脱力、振戦、不整脈等の既往歴のある患者(塩酸プソイドエフェドリンの交感神経刺激作用が強くあらわれるおそれがある)

 一方、OTCの鼻炎薬にも1日量がディレグラ配合錠への配合量の半分ながら、塩酸プソイドエフェドリンを含むものが多く存在します。

パブロン鼻炎カプセルS
http://www.info.pmda.go.jp/ogo/J0601012956_02_01

 医療用の禁忌にあたる「してはいけないこと」の項には、「前立腺肥大による排尿困難」の症状がある人、「高血圧、心臓病、甲状腺機能障害、糖尿病」の診断を受けた人の記載がありますが、連用については「長期連用しないでください」との記載があるだけで、具体的な期間については触れられていません。

 ちなみに、仏医薬品安全庁(ANSM:the National Agency for the Safety of Medicines)も最近、塩酸プソイドエフェドリンやフォレニレフリン、オキシメタゾリン(局所使用も含む)などの充血緩和薬について、2011年12月に示された「使用は最大5日まで遵守する」「重症高血圧、冠動脈疾患、重度の痙攣の既往歴がある人、15歳未満には使用しない」などの適正使用に関する事項について、改めて留意するよう呼びかけが行われています。

Décongestionnants de la sphère ORL renfermant un vasoconstricteur : Mise en garde de l’ANSM – Point d’information
(ANSM 2012.12.11 フランス語)
http://ansm.sante.fr/S-informer/Points-d-information-Points-d-information/Decongestionnants-de-la-sphere-ORL-renfermant-un-vasoconstricteur-Mise-en-garde-de-l-ANSM-Point-d-information

 今回長期連用には適さずとなっていたので安心しましたが、果たして処方の場で、この制限が守られるかどうかについては一抹の不安があります。

(2013.01.28 追記)
関連記事です→TOPICS 2013.01.17 ディレグラ配合錠の審査報告書を読んでみた

関連情報:TOPICS 2012.11.16 ディレグラ配合錠ってニーズがあるのかなあ


2012年12月20日 00:45 投稿

コメントが5つあります

  1. アポネット 小嶋

    3日の厚生労働委員会で、民主党の柚木道義委員が、ディレグラ配合錠薬価算定のありかたと、適正使用、管理の問題に言及しています。

    厚生労働委員会4月3日(衆議院インターネット審議中継)
    http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=42606&media_type=fp
    (50分あたりから57分あたりまで)

    「ディレグラ」の有用性加算に国会で物言い、厚労相もやや理解
    (RISFAX 2013.04.04)
    http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=40923

    プソイドエフェドリンが覚せい剤原料として、世界で厳しい販売管理が行われていると言及していますが、OTC販売のあり方はどうなんでしょうね?(→関連記事

  2.  プソイドエフェドリンは、覚せい剤原料として我が国では古くから規制をされています。 近年、米国を中心に覚せい剤密造への対応をとして、プソイドエフェドリン製剤の販売規制(購入量の制限、非処方せん薬からの除外)等を求める地方自治体レベルの動きが報道されています。
     ただし、覚せい剤密造については、医薬品製剤からの抽出は、理屈としては可能ですが、乱用薬物の供給源としては引き合うものではないとされています。(理屈よりも感情の世界?)

  3.  もう一つ、OTCの風邪薬などでは、以前から長期連用を戒める文言が必ず記載されています。 プソイドエフェドリン配合によって追加されたものではありません。

  4. アポネット 小嶋

    いつもコメントありがとうございます。ご意見はもっともです。

    この問題となるとすぐついコメントをしたくなるのですが、私も日本では密造というのはまずないと思っています。

    ただ、海外での報道を見ると、日本では全く心配ないのかと思うと、やはり気がかりで、今回国会の場で他の議員さんに、海外ではこういう状況にもあると認識してもらったという意味はあると思っています。

    それと、医療用で長期連用に適さないと情報提供するように注意喚起されていますが、プソリドエフェドリンの配合量とは異なるとはいえ、OTCはどうかというと、私の周りでも大包装のものがセルフで山積みになっています。

    今年はアレグラなどにシフトしていると思いますが、第一類が売れない店舗ではこういったものがメインになるでしょうから、一声かけて、「長期連用しないで下さいね」と情報提供が行われているかどうかとなると、やはり疑問です。

  5.  日本でも、薬局・薬店から買い集めた医薬品から分離抽出したエフェドリンを原料に覚せい剤の密造を暴力団に脅されて企てた薬科大学生が成功する前に摘発されたという記事があったように思います。
     医療用医薬品の添付文書は、医療従事者向けと理解されているため、実際の服用者に何を伝達するかは、医師あるいは薬剤師の判断に任されています。また、処方箋による交付であれば、医療従事者によるチェックがかかることになります。 逆に、そのチェックのうえで長期交付も可能とされるものです。
     OTC医薬品の販売に当たって、薬剤師もしくは登録販売者の管理を求めているのは、生活者の気づいていないあたりを支援することが期待されているものと考えます。 ただし、そのような支援を薬剤師【あるいは登録販売者】が行った場合の報酬や不利益をこうむらないような保護の仕組みはいまだ十分ではないのではないかと懸念しています。