論文・報告あれこれ 2013年6月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

 ★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。サイドバーに各月記事へのリンク、右下に最終更新日を記してあります。

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
06.28 Antipsychotics for delirium in the general hospital setting in consecutive 2453 inpatients: a prospective observational study.
Int J Geriatr Psychiatry. Published Online 25 Jun 2013)
国内33施設で行われた前向き観察研究。入院中にせん妄が発症した患者2534人に対して投与された抗精神病薬が、どのような影響を及ぼしたかを調べたもの。術後のせん妄に使われたケースがもっとも多く、認知症の合併も30%あった。投与薬剤はリスペリドンが34%で最も多く、クエチアピン、ハロペリドールなどが続いた。有害事象は22例(誤嚥性肺炎17例、心血管イベント4例、静脈血栓症が1例)だった。研究者らは、せん妄に対する抗精神病薬の投与のリスクは低いのではないかとした。
06.28 Risk of Falling and Hypnotic Drugs: Retrospective Study of Inpatients
(Drugs R D. 13(2) p159-164,2013)
眠剤などと転倒の関連について、群大病院の入院患者を対象に調べた研究。オッズ比はブロチゾラム、ゾピクロン、エスタゾラムで高かったが、ゾルピデムでは有意差はなかった。07年のデータなので日本語の論文もあるかも。
06.28 Gastroparesis in adults – oral erythromycin
(NICE 2013.06.17)
NICE の Off Label 情報。エリスロマイシンが、Gastroparesis(胃不全麻痺)に有効というもの。昔からエビデンスはあるみたいです。
06.28 Caffeine-Containing Medicines Increase the Risk of Hemorrhagic Stroke.
Stroke published Online 6 Jun 2013)

カフェイン含有医薬品と出血性脳卒中との関連を調べた、韓国の多施設症例対照研究。調整オッズ比は2.23(95%CI1.41-3.69)だった。研究データが古く、今は使用されていないフェニルプロパノールアミンの影響も否定できないが、日本で広く使われている、カフェイン入りドリンク剤やOTCかぜ薬や痛み止めの常用などは大丈夫なのかと思う。
06.28 Adverse drug reactions reported by consumers for nervous system medications in Europe 2007 to 2011
BMC Pharmacol Toxicol. Published Online 13 Jun 2013)
EudraVigilanceデータベースの患者による有害事象のうち、神経系薬剤についての事例を検討したもの。薬効別では抗てんかん薬が多く、成分ではプレガバリン、バレニクリンが多くを占めた。
06.28 Does early life exposure to antibiotics increase the risk of eczema?
Br J Dermatology Published Online 20 Jun 2013)

システィマティック・レビュー。乳児期の抗生剤への暴露は湿疹のリスクを増すことが示唆されたが、レビューの対象となったのがRCTより観察研究が多かったこと、自己申告に頼るというものも含まれていることから、さらなる研究が必要。
06.28 ‘I can’t be an addict. I am.’ Over-the-counter medicine abuse: a qualitative study.
BMJ open Pulished Online 17 Jun 2013)
インターネット支援組織のリクルートで集まった、コデインなどが配合されたOTC医薬品の乱用者25名にインタビューして、傾向を検討したもの。研究者らは3つのタイプに分けられるとした。
06.28 Decreased Alcohol Consumption Among Former Male Users of Finasteride with Persistent Sexual Side Effects: A Preliminary Report
Alcoholism: Clinical and Experimental Research Published Online Jun 2013)

フィナステリド服用者で性的副作用経験をした人では、アルコール摂取量も減少したとして有用性があるのではないかとした研究。性的副作用になり、アルコールも飲む気にならなくなったことも考えられ、偶然なのか、関連性があるのかは、この論文で判断するのは難しい。(動物実験では有効とのデータもあるらしい)
06.28 Statin toxicity from macrolide antibiotic coprescription: a population-based cohort study.
Ann Intern Med . Published Online 18 Jun 2013)

カナダのPopulation-Based Cohort Study。スタチン使用中の患者がエリスロマイシンやクラリスロマイシンを併用するとアジロスマイシンと比べ、横紋筋融解症による入院リスクなどが増加した
06.28 UK moves towards safe and effective electronic cigarettes and other nicotine-containing products
(MHRA 2013.0612)

英医薬品庁のプレスリリース。2016年までに、電子たばこを医薬品として規制すると発表。ニュージーランドなどでは医薬品扱いになっていて薬局のみで販売が可能とのこと。
06.10 薬剤師のマスク着用が患者の相談行動心理に及ぼす影響
(薬学雑誌 133(6) p737-745)
紹介のツイートしたら、 ものすごいリツートとなった慶応大の報告。薬剤師と信頼関係を構築していない患者にとって、薬局薬剤師のマスク着用が服薬指導時に患者の相談行動を妨げる要因となり得ることが示唆された。夏場に行われた研究なので、インフルエンザシーズンだと若干とらえ方が違うかも。マスクを着用したときのコミュニケーションには留意が必要らしい。
06.10 薬剤師を真の“ゲートキーパー”とするために ~薬剤師が潜在的な精神科疾患や過量投与, 自殺をピックアップできるようになるためにはどうすることが必要か~ 
(薬学雑誌 133(6) p597-643)
今年横浜で行われた、日本薬学会第132年会S37シンポジウムの発表を基にまとめた誌上シンポジム。本サイトで取り上げた厚生労働科学研究などが取り上げられている。かなりのページ数なので、じっくり読んでみたい。
06.10 Risk Factors for Adverse Symptoms During Dipeptidyl Peptidase-IV Inhibitor Therapy: A Questionnaire-Based Study Carried Out by the Japan Pharmaceutical Association Drug Event Monitoring Project in Kumamoto Prefecture
Drug Saf Published Online 7 June 2013)
過去にもこういった投稿があったかもしれませんが、私は初めて見ました。去年行われた日薬DEMのデータで解析したもの。熊本県のデータ限定で解析?~シタグリプチンまたはアログリプチンによる低血糖は肝疾患、女性、アルコール消費(週3回以上)に関連付けることができた。
06.10 Risk of acute kidney injury associated with the use of fluoroquinolones
CMAJ 3 June 2013)
フルオロキノロン系抗菌薬と急性腎障害との関連を調べたコホート研究。フルオロキノロン系抗菌剤を使用すると急性腎障害の発症リスクが2.18倍に。ARBと併用すると4.46倍になった。また、薬剤別では、シプロフロキサシンが2.76倍と最も高く、モキシフロキサシンが2.09倍、レボフロキサシンが1.69倍と続いた。
06.10 Smoking and drug interactions
Aust Prescr 2013;36:102–4)
たばこと医薬品の相互作用についての総説
06.10  Statins in older adults
Aust Prescr  2013;36:79-82)
高齢者へのスタチン投与に疑問を投げかける総説
06.10 Home medication reviews by community pharmacists~Reaching out to homebound patients
Can Pharm J 146(3) p139-142,2013)

カナダオンタリオ州で行われている MedsCheck at Home Program についての報告。オンタリオ保健省のページを見ると、このプログラムは日本のように医師の指示の下ではなく、独立的にチェックすようです。
06.10 Total cholesterol and lipoprotein composition are associated with dry eye disease in Korean women
(Lipids in Health and Disease  Published Online 5 June 2013)
脂質異常症とドライアイの関連性を調べた韓国の研究。年齢やBMI、ライフスタイル、医学的要因を調整後の女性でのオッズ比は1.77だったが、男性では有意差はなかった
06.10 Clarithromycin substantially increases steady-state bosentan exposure in healthy volunteers
Br J Clin Pharmacol . Published Online 6 June 2013)
クラリスロマイシンによるボセンタンの薬物動態への影響を調べた研究。遺伝子の型に関係なく、AUCを 3.7 倍、Cmax を3.8倍に増大させた。クラリスロマイシンを併用するときはボセンタンの減量が必要だとした。
06.10 Interaction of thiopental with esomeprazole in critically ill patients.
Eur J Clin Pharmacol Published Online 30 May 2013)
チオペンタールが投与されている重症患者でのエソメプラゾールを併用した場合の薬物動態を検討したもの。分布容積を増大させることが示され、目標の血中濃度に達しないときは相互作用を考慮すべきとした。
06.10 Reports of Sexual Disorders Related to Serotonin Reuptake Inhibitors in the French Pharmacovigilance Database: An Example of Underreporting.
Drug Saf. Published Online 1 June 2013)
フランスの副作用報告データシステムのデータを解析したもの。SSRI/SNRI 関連の性機能障害は過少報告の可能性があり、医師はきちんと患者に副作用について助言すべきであるとした。
06.10 Safety profile of antiviral medications: A pharmacovigilance study using the Italian spontaneous-reporting database.
Am J Health Syst Pharm. 2013 Jun 15;70(12):1039-1046.)
イタリアの自発的副作用データベースで抗ウイルス薬の安全性について検討したもの。最も重篤な血液障害、腎障害、精神神経系の有害事象は、リバビリン+インターフェロン、アシクロビル、バラシクロビル、インジナビルなどで見られた。
06.10 Risk of serious atrial fibrillation and stroke with use of bisphosphonates: Evidence from a meta-analysis.
Chest Published Online 5 May 2013)
 ビスホスホネートの心臓への影響を調べたメタアナリシス。6つの観察研究(N=149,856)と6つのRCT (N=41, 375) を解析、心血管死亡のリスク増は見られなかったが、入院が必要な心房細動は有意に増加した。
06.10 Warfarin slows deterioration of renal function in elderly patients with chronic kidney disease and atrial fibrillation.
Clin Interv Aging. Published Online 10 May 2013)
台湾の後向き観察研究。ワーファリン療法は高齢のCKDや心房細動を有する患者の腎機能の悪化を遅らせたり、生存を改善するかもしれないとした。
06.10 Chemical Exposures During Pregnancy (Scientific Impact Paper 37)
(PCOG Published 5 June 2013)

英国王立産婦人科協会がまとめた、妊娠中の化学製品(医薬品や生活用品も含む)への暴露に注意を促したもの。
06.10 Cold season in primary care
NZ BPJ issue52  p26-33 2013.04)
新たに見つけた、ニュージーランドの非営利独立系の医学雑誌の記事。かぜのプライマリケアについての総説。代替医療についての有効性についても触れている。もちろん小児には抗ヒスタミン剤などは使用しないよう求めている。
06.10 Mastication and Risk for Diabetes in a Japanese Population: A Cross-Sectional Study
PLoS ONE Published Online 5 June 2013)

滋賀県長浜市と京大医学研究科で行われている、長浜コホートによる断面調査。咀嚼と糖尿病との関連を調べたもの。咀嚼力が高い人とゆっくり食べることが糖尿病の発生を防ぐとした仮説が支持された(男性のみ有意差が示された有意差までは示せなかった
06.10 Inhalation Toxicity of Humidifier Disinfectants as a Risk Factor of Children’s Interstitial Lung Disease in Korea: A Case-Control Study
PLoS ONE Published Online 5 June 2013)
韓国のCase-Control Study。冬の加湿器の使用が、春の小児の間質性肺疾患のリスク増につながった
06.10 Drops of madness? Recreational misuse of tropicamide collyrium; early warning alerts from Russia and Italy.
(Gen Hosp Psychiatry. Publishe Online 5 May 2013)
海外ではトロピカミド点眼薬を recreational 目的で不正使用(点滴)するケースがあるらしい。 
06.10 Paracetamol, aspirin and indomethacin display endocrine disrupting properties in the adult human testis in vitro
Hum. Reprod. Published Online 12 May 2013)
in vitro の研究なのでエビデンスのほどは何ともいえませんが、アセトアミノフェンやアスピリン、インドメタシンが男性の生殖機能に影響を及ぼすかもしれないとして、仏国内で特に注目を集めていた論文。

 


最終更新日:2013年6月29日

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