論文・報告あれこれ 2025年4月

他サイトではあまり紹介されていないものを中心に、ちょっと気になった論文や報告、発表などをピックアップしました。気になったものは独立記事に するかもしれません。誤りがあったらご指摘下さい。必ずしも最近アップされたものとは限りません。(特にJ-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間 過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。サイドバーに各月記事へのリンク、右下に最終更新日を記してあります。

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
04.30 Evaluation of bioaccessibility, metabolic clearance and interaction with xenobiotic receptors (PXR and AhR) of cinnamaldehyde
Food Chemistry 17 Dec 2024)
シナモンの主成分が一部の処方薬の効能を抑制する可能性がある
ただ、シナモンオイルは可能性は低い
高濃度のシナモンを栄養補助食品として摂取する場合は留意が必要→PressRelease
04.27 Effects of caffeinated chewing gum-induced sympathetic activation and diuretic effect on the rapid rate of weight loss in bodybuilders: a double-blind crossover study
BMC Sports Sci Med Rehabil 2025 Apr 26)
カフェイン入りガムを噛むと交感神経活動が増加し、ボディビルダーの脱水症状が促進される
04.27 これからの薬剤師・薬局~日薬会長 岩月進
(日本医薬品卸売業連合会・月刊卸薬業2025年3月号)
2025.01.30に開催された特別講演の講演録
04.26 Impact of Switch to Non-Prescription Status on the Safety Profile of Sildenafil and Tadalafil: Assessment of Pharmacovigilance Databases
J Pharmacovigil 2024 Dec 9)
サノフィ社サポートの研究
処方薬から非RxまたはOTCへの切り替えが、使用パターンの変化、有害事象の増加、または安全性に関する新たな懸念と関連しているという明確な証拠は認められなかった
04.26 若年女性のやせ形成と健康障害の主要因を抽出するための基礎的研究~文献レビュー、実態調査、生理学的解明における包括的調査~
(2023厚生労働科学研究)
我が国における若年やせ女性の形成は、ボディイメージに起因する可能性が示唆された
中高生のやせとその関連要因、また、生活習慣や健康問題の実態について明らかになった。やせの早期対策、また総合的な支援が必要である
04.26 New Pharmacy Service Launches in Weyburn-Patients to Benefit from Increased Access to Mental Health Medication Management
(加サスカチュワン州政府 2025.04.25)
精神科領域のパイロットプロジェクト
共同診療協定により、参加薬剤師は必要に応じて患者に薬を開始したり、治療を最適化するために薬や投与量を変更したり、薬の投与を中止したりすることができる
関連記事
04.25 6,000人調査から見た「OTC類似薬の保険適用除外」
(三菱総研 MRIオピニオン(2025年5月号))
軽症受診・頻回受診の抑制に向けたポイントについて考察
医療介護制度の持続可能性を高めるためには、OTC類似薬の保険適用除外をはじめとする制度改革を検討する必要がある
04.25 Access to medical abortion and abortion care in Japan
Prev Med Rep. 2025 Mar 29)
日本における薬剤による中絶の普及状況と中絶前後のケアの現状を調査
薬剤師が中絶前後のケアに関与していると報告した施設はわずか
中絶薬がオーバ・ザ・ガウンターで販売される可能性を考慮すると、薬剤による中絶ケアへのアクセスと質の向上のためには、薬剤師も多職種連携に含めるべきである→関連・厚生労働科学研究
04.25 Evaluating the understandability and actionability of Japanese human papillomavirus vaccination educational materials on cervical cancer
Health Promot Int. 2025 Mar 5)
日本のHPVワクチン接種に関する教育資料のほとんどは、理解しやすさや実践しやすさが不十分で、必要な情報内容がすべて網羅されているわけではなかった
数字、医学用語、視覚的補助の使用に関して、多くの資料で改善が必要
性行為を始める前のワクチン接種の重要性と男性にとってのワクチン接種のメリットを資料に含める必要がある
04.25 Potential of coconut oil as a mosquito repellent
Trop Med Health. 2025 Apr 23)
長崎大がケニアで行った研究
ココナッツオイルは、実験室環境での蚊の吸血行動を減らす効果がある可能性が示され、フィールド研究でも蚊刺されの減少との関連性が示された
04.24 Exploring Doping Awareness: Medical Experts’ Perspectives and Their Commitment to Doping Prevention
Pharmcy 24 Apr 2025)
ブルガリアの医師薬剤師、医学生薬学生へのアンチ・ドーピングの意識調査 回答者の40%以上が、多くの植物に含まれる分子ヒゲナミンが、意図しないドーピングの原因となる可能性があることを認識していなかった
04.24 Change in Default Prescription Length and Statin Prescribing Behavior
JAMA Intern Med. Apr 7, 2025)
米letter
スタチンの処方日数の標準を30日→90日に期間にしたところ、患者が薬剤を入手するために行動しなければならない頻度が減り、アドヒアランスが改善された(人種および社会経済的格差も考慮必要?)
04.24 Short-acting beta 2 agonists (SABA) (salbutamol and terbutaline): reminder of the risks from overuse in asthma and to be aware of changes in the SABA prescribing guidelines
(MHRA Drug Safety Update 2025.04.24)
サルブタモールなどの短時間作用型β刺激吸入薬の適正使用に関する注意喚起→プレスリリース
04.21 A fatal intoxication case due to the serotonin syndrome induced by dextromethorphan and moclobemide overdose
Leg Med (Tokyo). 2025 Feb 27)
個人輸入で入手したデキストロメトルファン(Fudecough)とモクロベミド(A型MAO阻害剤、うつ病治療薬)を併用して、セロトニン症候群を起こして致死した症例
04.21 認知症の本人参画型研究についての調査研究事業
(認知症の人と家族の会 2025.04.17)
認知症領域での研究における当事者参画の意義について、国内外の動向や市民の意思調査などを検討
04.21 The relative toxicity of medicines detected after poisoning suicide deaths in Australia, 2013–19: a data linkage case series study
Med J Aust. 21 Apr 2025)
オピオイド、睡眠鎮静剤、三環系抗うつ薬、プロプラノロールは、予想されるよりも自殺死亡に関与する頻度が高い
薬剤を処方する際には、薬物クラスの中で最も毒性の低いものを選択し、毒性の高い薬剤は限られた量で供給する必要がある→論説
04.20 「健康食品」の安全性・有効性情報データベースを活用した健康食品の安全性確保に関する研究
(2023厚生労働科学研究)
アドバイザリースタッフ・健康食品領域研修認定薬剤師といった専門資格保有者の存在を認知している者は5~7%
健康サポート薬局の認知度は5.8%
04.17 閉経前までの成人女性における低体重や低栄養による健康課題―新たな症候群の確立について―
(日本肥満学会・女性の低体重/低栄養症候群ワーキンググループ)
低体重や低栄養が原因で生じる骨密度の低下や月経周期異常など、さまざまな症状や体調不良を示す女性の健康状態を、新たな症候群として確立する必要があるとした提言
04.15 地域包括ケアシステムの資源としての民間企業と連携した多様な高齢者の「居場所」の利活用のあり方に関する調査研究事業
(令和6年度 老人保健健康増進等事業)
事例集で、西宮市の白澤薬局、行田市のウエルシア薬局の取り組みが紹介
04.12 Food sweeteners: Angels or clowns for human health?
Curr Res Food Sci. 2025 Mar 12)
甘味料の定義と分類、使用によるヒトの健康への影響についてレビュー
04.12 Community-level social capital and polypharmacy among public assistance recipients in Japan: A multilevel cross-sectional study
SSM Popul Health. 2025 Mar 20)
生活保護を受けている成人の69.5%は、6種類以上の経口薬を服用
地域社会における高齢者の市民参加を促進することが、生活保護受給者のポリファーマシーの解決に役立つ可能性がある→関連厚生労働科学研究(報告書未アップ)
04.12 Community pharmacists’ role in optimising antibiotic use: The HAPPY PATIENT project to improve dispensing practices in five EU countries
Res Social Adm Pharm. 2025 Mar 22)
フランス、ギリシャ、リトアニア、ポーランド、スペインEU5か国の地域薬局で行われた共同研究
抗菌薬の適正使用を最適化するパートナーとして、地域薬局の可能性が示された
04.11 Associations of medical outcomes with substances involved in suicide attempt cases age 50 and older reported to U.S. Poison Centers, 2016-2023
Front Public Health. 2025 Mar 26
医療従事者は、抗うつ薬や鎮静薬を処方されている高齢者の自殺リスクの兆候を評価し、認識するための研修を受ける必要がある
04.11 地域連携薬局・専門医療機関連携薬局が地域で果たすべき機能に関する調査研究
(2023厚生労働科学研究)
認定されている地域連携薬局(約3900薬局)、専門医療機関関連薬局(約170薬局)における地域における他の医療施設との連携およびその具体的活動の実態を明らかにし、今後、地域において認定薬局がどのような機能を果たすことが望まれるかを調査
2023年度は調査票の作成のとどまった
04.11 薬局における口腔の健康維持・増進を推進する薬剤師対象教育プログラムの開発および地域住民を対象とした口腔の健康サポート事業の有用性評価
(2023厚生労働科学研究)
健康サポート薬局に勤務する健康サポート薬局研修修了薬剤師が地域住民の口腔の健康維持・増進に介入することの、歯科健診率改善効果を検討
04.09 Repository of National Essential Medicines Lists (nEMLs)
(WHO)
世界各国で策定された必須医薬品リストのポータル。日本はなぜか「基礎的医薬品」のリストが紹介
WHOプレスリリース
04.09 Use of carbamazepine during pregnancy: Growth risks for babies
(Medsafe 2025.04.09)
最近の観察研究によると、妊娠中のカルバマゼピンの使用は、在胎週数に対して小さい赤ちゃんが生まれたり、小頭症になったりするリスクを高める可能性があることが明らかになった
04.09 How can pharmacist remuneration systems in Europe contribute to generic medicine dispensing?
Pharm Pract (Granada). 2012 Jan;10(1):3-8.)
ほとんどのヨーロッパ諸国における薬剤師の報酬は、1品目あたりの固定報酬と、医薬品の取得価額または納入価額の一定割合の組み合わせで構成されている
04.09 Analysis of the impact of removing mucolytics and expectorants from the list of reimbursable drugs on prescription rates: a time-series analysis for France 1998-2010
(Health Policy. 2011 Oct;102(2-3):159-69)
2006年3月に、去痰薬などが保険償還の対象から外されたフランスでの措置が、代替薬 (他の気管支拡張薬、鎮咳薬、抗菌薬) の処方、および公的健康保険のコストに及ぼす影響を評価
04.06 医療機関・薬局の低密度エリアにおける医薬品供給の実態と流通コスト分析
(2023厚生労働科学特別研究)
流通不採算の発生が深刻化し、一部の品目で出荷調整が長期化する中、流通不採算の実態を数量的に把握し、その深刻度を明らかにした
関連記事(日本経済新聞2025.04.06)
04.05 薬名類似に起因する薬剤誤処方の傾向分析―薬剤師による誤調剤事例との比較―
(医薬品情報学 26(4) p178-185,2025)
慶応大の研究。薬局ヒヤリ・ハット事例から、薬剤名の類似性に起因する処方ミス234件と調剤ミス152件が抽出された
04.05 長期薬物治療患者におけるリフィル制度に関する意識調査
(医薬品情報学 26(4) p198-207,2025)
東薬大の研究。利用率が低い理由と今後の展開を推測するため、6か月以上継続して薬物治療を受けている患者を対象にリフィル制度に対する意識をWEB調査リフィル制度を利用したくない理由について、自由記述では次のような意見があった・制度を使うと病院側の利益が減る面が想像できるため、利用したくても医師には言い出しにくいと感じる
・制度が変わっても医師がそれを拒むような診療をしている。そういった問題点をどこに訴えればいいのか
04.03 Developing an Ecotoxicological Classification for Frequently Used Drugs in Primary Care
Int J Environ Res Public Health. 2025 Feb 16)
広く使用されている医薬品を生態毒性、つまり水生生態系への危険性に基づいて分類、一般的に処方される医薬品(特に抗菌剤やNSAIDs)が、水生生物多様性に不可欠な魚、藻類、細菌の健康に重大な影響を及ぼすことが明らかになった→EurekAlert!
04.02 Recognizing Pharmacists’ Expanding Role in Canadian Healthcare
(Léger 2025.04.02)
カナダ各州の薬剤師の役割の拡大についての概要を紹介したもの
04.01 アルファカルシドールからエルデカルシトールへの変更が血清Calcium(Ca)値と腎機能に及ぼす影響
(YAKUGAKU ZASSHI 145(4) p351-357,2025)
<エルデカルシトールを新たに開始または変更した場合、血清Caレベルを2週目以内に測定する必要がある
04.01 これまでの議論のまとめ(在宅医療における薬剤提供のあり方について)
(厚労省 2025.03.31)
唯一とりまとめが難航していたもの。理想論ばかりが並んでいるが、薬剤師が関わらなくてもすむこと、できないことをしっかり線引きする必要があると思う。臨時的な対応」が必要な状態に至ることがないように、「地域医薬品提供体制のためのアクションリスト(仮称)」を策定される予定

最終更新日:2025年4月30日

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