25日、医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議が開催され、緊急避妊薬のスイッチOTC化に向けての議論が行われました。
第32回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議
(厚労省 2025.05.23開催)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58149.html
検討会議では、まず緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業報告書が紹介されました
令和6年度緊急避妊薬の適正販売に係る環境整備のための調査事業の報告について
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001492228.pdf
本Blogでも記事にしてあります(→TOPICS 2025.05.14)
次いで、この間の動きや国会での附帯決議などが紹介されました。
緊急避妊薬のスイッチOTC化に向けた進捗等について
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001492229.pdf
次に、当事者の立場で今回構成員となった、『緊急避妊薬を薬局でプロジェクト』の方がこれまでの取り組みや要望を求めました
緊急避妊薬の適切で安心・安全なアクセスの実現に向けてOTC化における課題と対応策について
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001492290.pdf
プロジェクトの方は、緊急避妊薬のOTC化に向けては次のような要望を示しました
・アクセスを妨げない販売方法
面前服用を条件としない
必要な手順を省く(フォローアップ受診は必要はない)
手に入れやすい価格
・販売対象者の拡大
年齢制限撤廃、未成年でも保護者の同意などは不要
72時間後でも購入できる(GLなどでは120時間以内でも可能)
多言語への対応
・必要な人すべてに届く販売体制
多くの店舗で購入できるよう、販売の薬剤師に条件を付けない
一般用医薬品への以降を可能にする
性教育の充実・使用者への十分な情報提供
ついで、日本産婦人科医会/日本家族計画協会の北村邦夫氏が、日本の状況を踏まえたプレゼンを行いました
緊急避妊薬のスイッチOTC化に対して今すべきことは何か?
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001492231.pdf
この中で、北村氏は
面前服用:必要
年齢制限:不要
親の同意:不要
緊急避妊薬服用後の産婦人科受診:必要
という見解を示しました。
特に面前服用については、なりすましや「転売」「悪用」の懸念、倫理・人権を配慮し、犯罪防止だとして、強く面前服用の必要性を訴えました(スライド13-14ページ)
また、薬局や薬剤師の資質にも言及しています(スライド14ページ)
さらに、「希望により女性薬剤師を選択できる仕組みを作る」などといった提案を行っています(スライド15ページ)
そして、
- 緊急避妊薬を可能な限り早く服用することは重要だが、アクセスのし易さの改善だけでいいのか
- 緊急避妊薬の服用で、その後の性交で妊娠の可能性を高める危険性があることを、事前に説明する必要がある
- 緊急避妊薬はスタートであってゴールではない。その後の避妊指導をどうするか
といった課題を示しています
議論で次のような意見や要望が出されました(発言者や内容に聞き違いがあるかもしれません)
- 調査事業で産婦人科との連携は深まったので続けたい(薬剤師会の構成員)
- 見直しは、リテラシーがあがってから(薬剤師会の構成員)
- 持ち帰ると不安になるので、その場で飲んだ方がいい(COML)
- 全部の薬局が対応できるとは考えていない、対応できる薬局がわかる情報を発信して欲しい(COML)
- 日本では意思決定はフェアではない、女性を守りたいので面前服用が必要(新聞社委員)
- 学校で性教育は難しい、薬局やドラッグストアで情報提供が必要、日常の教育として何が必要なのか、何を伝えるべきかのコンテンツを作って欲しい (チェーンドラッグ協会委員)
- 調査事業がおこなわれていることの広報を薬局内でも認めて欲しい(チェーンドラッグ協会委員)
議論を聞いていて、面前服用と産婦人科医との連携を確認するための会議だったように思いました。
また、一部の委員は原稿を読んでいるようにも見え、シナリオがあったのではないかと思いました。
国会の附帯決議(→TOPICS 2025.05.13、2025.04.16)にそって、「当事者、とりわけ若い世代の意見を代表する者を検討の場に参画せしめること」を行ったことで、議論としては全て終了したと言えるでしょう。
『規制改革実施計画』(2024.06.21)では、「スイッチOTC化の承認申請から承認の可否判断までの総期間を1年以内に設定する」(p56)ことになっています。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/program/240621/01_program.pdf
また、『スイッチOTCの審査の改善方策等について』(スイッチ OTC WG 2024.09.04)で、「スイッチ OTC化の承認申請から承認の可否判断までの総期間を1年以内に設定すると定められたことを確実に達成するためには、当局側及び申請企業側双方がそれに向けて努力を行う必要がある」とされていています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001298435.pdf
さらに、先日、あすか製薬がスイッチOTCとしての去年5月に製造販売申請をしていたことを明らかに(→TOPICS 2025.05.15)していることを考えると、このスケジュール通りであれば、早ければ6月に審議され、年内に発売となる可能性があります。
おそらく、当事者の方たちからの意見を聞くのは今回限りになるでしょうから、今後はあすか製薬さんとPMDAの審査、審議会での議論に委ねられることになるでしょう。(ただ、こちらは非公開)
薬剤師の構成員からは、まだ研究事業が必要といった声があがりましたが、今後も研究事業は必要なのでしょうか? いったい何のために、かという疑問も出てきます。
産婦人科医会の意向にそった販売体制づくりのために薬剤師会が利用されてきたかと思うと、正直腹が立ちました。
個人的にはもう研究事業は中止すべきだと思います。
関連情報:TOPICS
2025.05.17 緊急避妊薬のOTC化についての現場の認識(2020-21年調査)
2025.05.12 緊急避妊薬の特定要指導医薬品化で想定されること(参院厚労委)
2025.05.14 令和6年度緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業報告書
2025.05.15 緊急避妊薬のスイッチOTCとしてのメーカー製造販売申請が明らかに
2025年05月23日 23:10 投稿
関連記事です
【緊急避妊薬のOTC化】評価検討会議は終結、薬事審議会での承認可否判断へ
(ドラビズon-line 2025.05.23)
https://www.dgs-on-line.com/articles/3012