令和6年度緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業報告書

14日、令和6年度に行われた緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業報告書が公表されています

令和6年度報告書全文
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001486690.pdf

概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001487238.pdf

結果の概要は以下の通りです

  • 2023年11月28日~2025年1月31日の販売数は 6,813。約半数の都道府県で100件超を販売
  • 協力薬局への来局時期及び曜日について大きなばらつきは見られなかったが、来局時間に関しては、概ね9時から19時に集中しており、夜間・早朝(21時から8時まで)の来局は全体の2%程度だった
  • 購入者の年齢層は多くが20-39歳であったが、16-19歳も9%程度あった
  • 薬局までの移動時間は1時間未満が79.6%だったが、2時間以上かかった人もいた
  • 6,433 件が「販売可」、327件が「販売可とするが受診が必要」、53 件が「販売不可」であった
  • 面談を「個室ではない場所」のみで実施した薬局は約3割を占め、間仕切りの設置、対応時間の工夫、環境音楽等により工夫が行われていた。「プライバシーへの配慮」へのアンケート結果では、大きな問題は報告されなかった
  • 研究参加の同意確認後から販売可否判断までに要した平均的な時間は、「30 分」と回答した薬局が最も多かった
  • 購入者への満足度調査では「薬剤師の対応」「説明のわかりやすさ」「プライバシーへの配慮」への満足度は高い一方で、「支払った費用」の満足度は低い傾向にあった
  • 13薬局では16歳未満者に対する問い合わせがあった
  • 11薬局では面前服用を拒否したために販売できなかった方がいた
  • 購入者の約85%において、服用3~5週間後に産婦人科医を受診しておらず、また、避妊の成否を妊娠検査薬で確認していなかった。

詳細を確認すると、販売数について、薬局数を増やして新規研究が開始される(2023.11.28~2024.09.24)までの約10か月で5386件だったのに対して、それ以降の約4か月(2024.09.25~2025.01.31)では1427件であり、協力薬局が145→339に増えたのにもかかわらず販売実数はむしろ減っていました。

研究事業ということで、事業自体を知らなかった人も多かったのでは。

ちなみに豪州で行われている経口避妊薬の試験販売では、きちんと告知のポスターがあるんですよね。

日本でも要望があったのになぜ行わなかったのでしょうか?

考察や対応策について

地域によっては日本語を解さない方が多く居住する地域であったり、あるいは、インバウンドの増加により海外の方が購入に訪れたりする可能性も今後は否定できない。資材に関しては、外国語(英語)のものも準備することが望ましいのではないか。

面前での服用や服用後の指導に要する時間を含めると、1 件あたりの販売時間は一般的な OTC 販売に⽐較して⻑時間であることが推定されたことからも、安全性を確保した上での効率的な事前確認の在り方など、販売時間を短縮するための工夫が必要でないか。

連携システムは重要であり、ワンストップ支援センターにおいて、婦人科医を中心に、救急センターの医師、プライマリーケア医、かかりつけ医等の医師全体としてどう取り組んでいくのか。また、各地域でワンストップ支援センターをどう構築していくのか。

アプリや医療 DX等の活用により、72 時間以内の緊急避妊薬の提供や服薬後のフォローアップを確実に行うための医師、薬剤師等ステークホルダー間の情報共有システムの構築や、消費者・国民への緊急避妊薬に関する正しい情報提供と教育啓発が必要。

「薬剤師の研修、医療機関との連携、土日の開局、薬の在庫等の観点から、対象薬局を検討するとすれば、「一部地域の薬局」ではなく、「すべての地域の一部薬局」における試験的運用とする方が適切ではないか。」との意見が出された。

総括的意見から

検討結果、総じて、課題点に対応したうえで緊急避妊薬の早期のスイッチ OTC 化が望まれるとの方向性の意見であった。

しかしながら、緊急避妊薬をスイッチ OTC 化する際には、企業からの OTC としての薬事承認申請を受け、薬事・食品衛生審議会等における迅速な対応策の採否判断及び薬事承認が必要となる。

加えて、薬剤師による対面販売を担保できる医薬品販売に係る薬事規制の検討が必要であるほか、対応策の選択・採否にあたり、試験的運用を通じて更なるデータ・情報の集積が望ましいとの意見もある。

このため、今後、地域の一部薬局で試行的に女性へ緊急避妊薬(処方箋医薬品)の販売を行うこと(処方箋医薬品の取扱に関する通知の一部改正が必要)を通じ、緊急避妊薬の適正販売が確保できるか、あるいは代替手段(チェックリスト、リーフレット等の活用等)でも問題ないか等を調査解析し(モデル的調査研究の実施)、その結果を厚生労働省が広く公表するとともに、薬事・食品衛生審議会要指導・一般用医薬品部会等にも報告し、個別品目審査・審議の際の具体的対応策の選択・採否の一助として使うことも考えられる。

いずれにしても、緊急避妊薬のスイッチ OTC 化を望む多くの女性に思いをいたし、これらのことについて可能な限り早期の対応が強く望まれる。

さあここまで課題や対応策が出尽くしたのに、研究事業を継続する意義はどこにあるのでしょう

また、面前服用について、この報告書では63ページに「本事業においては、購入者が薬剤師の面前で服用することで販売していた。これは、転売等の不適切な使用を防止しつつ、必要な人に必要な緊急避妊薬を薬局から提供するために面前服用したものであり、面前服用を前提として薬剤師が販売する体制が適切であると考えられた。」と記されているだけで、面前服用についての必要性や考察を行っていません。

さらに、産婦人科やワンストップ支援センター等と連携が特に強調されている点が気になりました。

そして、総括的意見の中にある「緊急避妊薬をスイッチ OTC 化する際には、企業からの OTC としての薬事承認申請が必要」というハードルもあります。

製薬企業が生活者の視点にたって、すみやかに承認申請をし、薬事審議会(要指導・一般用医薬品部会)がで速やかに審議されることを望むものです。

関連情報:TOPICS
2025.05.12 緊急避妊薬の特定要指導医薬品化で想定されること(参院厚労委)
2025.05.05 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、プライマリヘルスケアの実現としての緊急避妊薬販売
2025.04.20 海外における緊急避妊薬の規制状況と日本でも求められる施策


2025年05月14日 18:10 投稿

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>