ランマークの副作用対策に特定のOTCを推奨?(Update)

 先日ブルーレターが出たランマーク皮下注について、RISFAX で気になる記事(全部は読めていません)を掲載しているので、ググってみました。

安全対策で自社OTC製品を推奨
第一三共 ランマークの副作用防止に、医療現場に不信感も
(RISFAX 2012.09.28)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=39442

 そこで、第一三共の下記ページを見たところ(最近更新されたので、該当部分は削除された可能性あり)、なぜか、新カルシチュウ®D3お取扱い薬局・薬店一覧というリンクがあります。(普通はこのページにこのリンクはあり得ない)

ランマーク®皮下注120mgによる低カルシウム血症に関する重要なお知らせ
(第一三共 2012.09.28)
http://www.daiichisankyo.co.jp/20120911.html 

 そこでさらにググってみると、卵巣がん体験者の会スマイリーの活動報告(ブログ)の記事に注目される内容が記されていました。

【緊急】ランマーク®皮下注120mgを使用される患者様とご家族の皆様へ
(卵巣がん体験者の会スマイリー活動報告 2012.09.11)
http://ovarysmiley.blogspot.jp/2012/09/120mg.html

 スマイリーに寄せられた医師からの情報として、かなり気になる部分があったので、引用させて頂きます。

  • 「腎臓が悪くない患者さんは、薬局にて第一三共のカルシチュウを購入し飲んでいただくことになります」ランマークで失うカルシウムと天然のビタミンDを補充するために医師よりカルシチュウ(OTC薬)を薬局に購入に行くよう指示されると思います。病院でランマークの治療をうけ、薬局にカルシチュウを買いに行くという煩雑な手間になりますが、忘れずに薬局に買いに行くようにしてください。
  • 「腎臓が悪い患者さんは、カルシチュウとは別のカルシウムやビタミンの考慮が必要になる場合もあるので必要に応じて腎臓の専門医等にご相談ください」。腎臓が悪い患者さんはカルシウムなどの調整が必要となるようです。医師とご相談のうえ調整してください。医師は製薬企業に確認する、場合によっては腎臓の専門医に相談するなどして調整をお願いいたします。
  • 自己判断でカルシウムを補充したりビタミンを補充したりしないでください」。ランマークを用いる患者さんは医師と相談の上、必要なカルシウム、ビタミンDの補充をしてください。自己判断で薬局で売っているカルシチュウとは別の薬をつかったり、サプリメントで補充をしないようにしてください。また、カルシチュウを医師から指示された量以上に飲むことはやめてください。また、薬局で別のメーカーの別のお薬をお勧めされるかもしれませんが、医師から指示されたものを買うようにしてください。

そして、薬剤師対しては、

  • カルシチュウはOTC薬であり、薬局により置いてないお店もあるようです。
  • がん骨転移に対するランマークの治療は皮下注であることなど患者への負担も少ない部分もあり承認以降多くのがん種で治療に用いられています。
  • がん骨転移の患者さんがカルシチュウを探して薬局を何軒もはしごをするのはたいへんな負担になります。
  • がん診療連携拠点病院近く、がん患者が多く通う医療機関の近くの薬局の皆様には今回の件をご理解いただきカルシチュウを取り扱っていただけるようお声掛けいただけますと幸いです。
  • また患者さんの副作用を多くの目がチェックすることで防げると思います。今回ブルーレターが出たことを多くの薬剤師さんに知っていただきたいと思いますので情報のシェアをお願いいたします。

 RISFAXの記事が示す通り、明らかに特定のカルシウム剤が医師から推奨されていることがうかがえます。(それで、第一三共のHPにわざわざ取扱店のリンクがあるんだ)

 下記ブログを見ると、臨床試験の際にどうもカルシチュウが使われた可能性があり、これを根拠に推奨されている可能性もあります。(だからといって他じゃダメという根拠は?)

ランマーク皮下注120mg投与中における重篤な低カルシウム血症について(2012.09.16)
http://reboundex.blog100.fc2.com/blog-entry-480.html

 インタビューフォームを見ると、「毎日少なくともカルシウムとして500mg及び天然型ビタミンD(コレカロシフェロール)として400IUの投与を行うこと。」となっていて、これに該当するのは「カルシチュウ」だけということらしいのですが、PMDAで検索したところ、カタセ錠D3もこの基準を満たしていますが。

 関連記事がないかどうか、もう少しあたってみます。

関連情報:TOPICS 2012.09.11 ランマーク皮下注にブルーレター

9月28日 13:20更新


2012年09月28日 11:01 投稿

コメントが9つあります

  1.  2つの点があるようです。
    (1) 腎機能に異常がない患者さんは、天然型のD3とカルシウム剤を推奨。 (活性型D3では、過剰作用の恐れがあるため。)
    (2) 医療用医薬品では、天然型D3の製剤が、事実上全滅している。

     なお、保険診療で給付することは当然駄目ですが、サプリメントを進める内科医も山ほどいるといわれています。 第一三共も、自社品以外も例示している様子ですが、痛くない腹を探られて困っているというのが本音では?

  2. うちの薬局もリストに載ってる

    眼科からソフトサンティアや皮膚科からリアップの
    購入指示書をもらって買いにくる人もいますから、
    患者さんにとって有用なら問題ないんじゃないですかね。

  3. アポネット 小嶋

    まいけるさん、マサさん コメントありがとうございます。

    特定の商品を推奨することはよくないということはないと考えますが、「カルシウムとして500mg及び天然型ビタミンD(コレカロシフェロール)として400IU」が基準であれば、それを示して、「こういうものもあります」という説明ならこういった疑念になることはなかったと思います。

    でも、これを患者さんに理解してもらうのはやはりむずかしいのでしょうね。

    下記DIニュースでは、「治験時、日本人患者に対しては、全試験期間を通じ、新カルシチュウD3(一般用医薬品)使用」って書いてありましたね。

    DI EXPRESS 2012.7(山口大薬剤部 p2下の方)
    http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yakuzai/de0020.pdf

    承認審査書とかも見たんですけど、どんなものがCaの補充に使われていたかはちょっとよく分からなかったけど。

    Prolia では カルシウム1000mg ビタミンD 400IU となっていたので、日本の基準もこれに準じているのでしょうね。

  4.  インタビューフォームを流し読みしてみたのですが、小嶋さんの指摘されるように「カルシウムとして500mg及び天然型ビタミンD(コレカロシフェロール)として400IU」との記述は有りますが、山口大学薬剤部の掲げる情報は見当たらないようです。 臨床治験の文献での起債なのでしょうか?
     自社品(少なくとも子会社の製品)であれば、取扱店リストを掲げることは可能でも、他の企業の品について、同様のリストを掲げることは難しそうです。

  5.  スマイリーの掲出しているものも、医師からの伝聞としており、かつ「医師」の方も面倒を省くために逸脱をしないよう強く促しています。 
     天然型ビタミンD3及びカルシウムということで、活性型ビタミンD3を誤って取らないようにということが本質のようです。

  6. アポネット 小嶋

    現時点では日薬・第一三共のホームページにアップされていませんが、今FAXで送られてきた、日薬ニュース号外172号でこの件について触れています。
    (17:00追記、日薬会員向けページに掲載されました→リンク・会員のみ)

    ——————————————-

    「新カルシチュウD3患者用カード」をご持参されたお客様へのご対応について
     《一般用・カルシウム/ビタミンD配合剤を販売されている薬局・薬店様へ》

     弊社医療用医薬品ランマークの安全性速報(平成24年9月11日付)に基づき、重篤な低カルシウム血症の発現軽減を目的とした一般用・カルシウム/ビタミンD配合剤の経口補充を徹底することとなりました。このため、ランマークでの治療を開始される患者様のうち、血清補正カルシウム値が高値でない患者様(全国で一か月約1000人と推定)を中心に、「新カルシチュウD3患者用カード」が医療機関様を通じて配布されています。
     つきましては、当該カードを提示され、購入を希望される患者様もしくはご家族が貴店に来訪されましたら、下表薬剤をご案内いただきますようお願い申し上げます。

    ①新カルシチュウD3(第一三共ヘルスケア)
    ②ワダガルシュームエース(ワダカルシウム)
    ③カルカルシン(佐藤)
    ④カタセ錠D3(全薬工業)

    尚、当該カードには特定製剤名(新カルシチュウD3)が記載されておりますが、これはランマーク開発時の臨床試験においてカルシウム及びビタミンD補充のために「新カルシチュウD3」が使用されたことを踏まえた行政当局からの指導に基づく記載です。従いまして、同剤とほぽ同量のカルシウム及びビタミンDを含有する製剤(上表中の②~④)をご案内いただくことで問題はございません。なお、各医療機関様にも同様の案内をしております。

    以下略

    ———————————–

    「新カルシチュウD3患者用カード」なるものを配布しているのであれば、もっと早く周知すべきだったのでは?

    でも、果たして患者さんは、「新カルシチュウD3と同じです」といって納得してくれるのでしょうかね?

  7. はじめまして。いつも大変参考になる情報ありがとうございます。
    私は上記コメントをひととおり拝見した上で発言しますが、
    「メーカーの詭弁にしか見えない」と思います。

    理由はシンプルで、説明が後になっているからです。
    普通は根拠を示した上で、代表的な商品は・・・と繋げるものです。
    他者の商品を紹介したのも、おそらくは何らかの反感を買ったからでは?

    活性型でも低用量投与では駄目なんでしょうか?
    検討する余裕がないので、現実的には難しいかもしれませんが・・・。
    製薬メーカーの説明にはいつも科学性が足りない気がします。

  8. アポネット 小嶋

    27日の日薬ニュース号外でもアナウンスがありますが、「新カルシチュウD3」については自費購入から無償提供になったそうです。

    ランマーク皮下注120mg投与患者への「新カルチュウD3」の無償提供について
    (日本臨床腫瘍薬学会 2012.11.28)
    http://jaspo-oncology.org/jo7ycvegc-38/#_38
    http://jaspo-oncology.org/学会からのお知らせ/?action=common_download_main&upload_id=258

  9. ヒト型抗RANKL モノクローナル抗体製剤「ランマーク皮下注120mg」(第一三共)
    は、副作用として低カルシウム血症が現れることがあります。そのため、「重要な基本
    的注意」で、「必要に応じて、カルシウム及びビタミンD を補充するなどの適切な処
    置を行うこと」と注意喚起を行ってきました。
      
    今回、国内販売開始後、重篤な低カルシウム血症が14 例報告されたこと、また、米
    国販売開始後においても、死亡例3 例を含む低カルシウム血症が多数報告されているこ
    とから、「重要な基本的注意」が「高カルシウム血症患者を除き、原則として、カルシ
    ウム及びビタミンD を経口補充すること」へ改訂となりました。
     本剤による低カルシウム血症は、初回投与後2 週間以内に発現することが多いと報告
    されています。また、本剤自体に腎毒性は認められていませんが、腎機能障害のある患
    者では、低カルシウム血症の発現率が高いことが報告されているため注意が必要です。
     本剤を使用する際は、以下の事項にご留意下さい。
     <重要な基本的注意>(一部抜粋)
     ・投与前に低カルシウム血症が認められた場合には、低カルシウム血症を是正した
      後に、本剤の投与を開始する。
     ・本剤投与開始前及び、投与後に定期的に血清カルシウム、リン等の血清電解質
      濃度を測定する。
     ・高カルシウム血症患者を除き、原則として、カルシウム(500mg/日)及び
      ビタミンD(400IU/日(天然型))を経口補充する。
      処方例)アスパラCA 錠200mg     1 回1 錠1 日3 回 又は
          乳酸カルシウム水和物1g/包  1 回1 包1 日3 回
          及び
          アルファロール1μg(活性型) 1 回1 カプセル1 日1 回