論文・報告あれこれ 2012年2月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ)
概要・コメント
02.23 Effectiveness and Safety of Antiepileptic Medications in Patients With Epilepsy
(AHRQ Research Review – Final – Dec. 21, 2011)

AHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality: 米国医療研究品質調査機)がまとめた高齢者におけるてんかんの薬物療法についての評価。ジェネリックへの代替調剤への影響が詳しく記されている点が注目
02.23 Prescribing of Potentially Inappropriate Medications for the Elderly: An Analysis Based on the PRISCUS List
Dtsch Arztebl Int 2012; 109[5]: 69-75)
(オープンアクセス)

ドイツ版のBeersリストのPRISCUS List にある医薬品の使用状況を調べたもの。804,400人の高齢者のデータを調査。25%の高齢者に少なくとも1種類以上のリスト薬が使用、男性より女性の方が使用率が高かった。処方で多かったのはアミトリプチン (2.6%)、acetyldigoxin (2.4%),、tetrazepam (2.0%)、オキセザパム(2.0%)などだった。(日本にも患者データベースがあれば実態調査ができるんだけど)
 02.23 Assessing the problem of counterfeit medications in the United Kingdom
Int J Clin Pract. 2012 Mar;66(3):241-50. Epub 2011 Nov 9.)
(今のところオープンアクセス)

英国における偽造医薬品(counterfeit medication)問題について英国の状況を中心にまとめたもの。多くの論文や報告が引用されている。最新の推計だと世界的な売り上げは750億ドルに達し、5年間で倍増した。近年は正規のルートでもみつかっている一方、利便性や価格の安さから生活者の安易な利用も増えている。研究者らは医療専門職が偽造医薬品と疑われる事例を積極的に当局に報告する必要があるとしている。
02.23 The efficacy of ma-huang-tang (maoto) against influenza
Health Vol.3, No.5, 300-303 (2011))
(オープンアクセス)

日経メディカルオンラインで紹介されていた、順天堂大で行われたインフルエンザ治療に関するRCT。インフルエンザ迅速診断キットでA型陽性と分かった45人を対象に、無作為化し、ツムラ麻黄湯9人、タミフル13人、リレンザ6人、タミフル+麻黄湯の9人の4群に分けて比較したもの。発熱、筋肉痛、頭痛、関節痛、だるさ、咳の6項目で評価。麻黄湯は抗ウイルス薬と同等の効果が認められ、関節痛に関しては麻黄湯の方が優位な改善効果が見られた。
02.09 高齢者の診療ガイドライン
(日本老年医学会雑誌 48(6),633-650 2011)
第53回日本老年医学会学術集会の記録としてまとめられたもの。脳卒中・認知症・糖尿病・COPD及び高血圧について、エビデンスと高齢者における治療の留意点などが記されている
02.09 高齢者の皮膚疾患,特に褥瘡のケアと治療
(日本老年医学会雑誌 48(6),613-615 2011)
第53回日本老年医学会学術集会における教育講演をまとめたもの
02.09 高齢者のめまい
(日本老年医学会雑誌 48(6),613-615 2011)
第53回日本老年医学会学術集会における教育講演をまとめたもの
02.09 高齢者の感染症と抗菌薬の投与法
(日本老年医学会雑誌 48(6),613-615 2011)
第53回日本老年医学会学術集会における教育講演をまとめたもの
02.09 高齢者の感染症
(日本老年医学会雑誌 48(5),447-465 2011)
高齢者における抗菌薬の考え方や使い方、高齢者感染症の予防法などをまとめた特集記事
02.09 ステロイド吸入薬の服薬指導における薬局薬剤師の 意識と指導内容との関連
(医薬品情報学 13(3),119-124)
ステロイド吸入薬の服薬指導における薬局薬剤師の意識と指導内容について行ったアンケート調査の結果報告。研究者らはガイドラインや治療薬に関する知識に加え、吸入指導の意義や必要性に対する意識づけ、演習やロールぷれいなど実践的能力の習得が可能となる実習の導入が必要だとしています。
02.09 汎用データベースソフトを用いた持参薬識別システムの 構築と有用性の検討
(医薬品情報学 13(3),103-112 2011)
北大病院における持参薬識別業務の手順などについて紹介したもの、Access と じほう社の「日本医薬品集DB」で業務の効率化を図っているという。
02.09 実務実習生の医薬品情報リテラシー向上を 目的とした医薬品情報実習の効果
(医薬品情報学 13(3),95-102 2011)
実務実習における医薬品リテラシー(読み書きできる能力)実習の現状を紹介するとともに、実習前後でどの程度リテラシーの向上が認められているか否かを検証した報告。(今の学生さんはこんな実習を行っているんだ)
02.09 薬局薬剤師による心電図モニタリング:塩酸ドネペジル服用に伴い延長した QTcが相互作用薬の変更により短縮した一例
(薬学雑誌 132(2), 237-241 2012)
薬剤性のtorsades de pointes (TdP)のリスクを地域薬局レベルで携帯型心電計を用いて調べた症例報告。ドネぺジルの併用薬として投与されていたベニジピンをアムロジピンに代えたら、TdPのリスクが減ったというもの。(将来的には地域薬局でもこういうチェックが必要となるか?)
02.09 Risk of new acute myocardial infarction hospitalization associated with use of oral and parenteral non-steroidal anti-inflammation drugs (NSAIDs): a case-crossover study of Taiwan’s National Health Insurance claims database and review of current evidence
(BMC Cardiovascular Disorders, Published: 2 February 2012)
(オープンアクセス)
NSAIDsの使用と急性心筋梗塞との関連性を台湾の患者データベースを用いて調べた研究。日本では承認されていない、Ketorolacの発症リスクが際立って高い。(台湾のこの手法の研究が多いような気がする)
02.09 Educating non-medical prescribers.
Br J Clin Pharmacol. 2012 Feb 2.Epub ahead of print)
独立処方が認められている薬剤師や看護師などの教育プログラムがどのように行われているかを紹介したもの
02.04 「薬学教育6年制」は何をもたらすのか㊤
(集中CONFIDENTIAL 2012.02.01)
ちょっと気になった雑誌記事。服薬指導料の不正請求というのは言い過ぎたと思うけど、米国の薬剤師ようにはなれないという指摘は正しいと思う。日本ではドラッグストアが地域密着を目指していると言われているけれども、記事指摘のように課題も多いのも事実。「大手ではなく、地域に根付いている個人薬局をネットワーク化したり、公的補助をしたりして支えた方が地域密着型のかかりつけ薬局になる」という意見は支持したい。
02.04 Direct to consumer Internet advertising of statins: an assessment of safety
Pharmacoepidemiol Drug Saf published online 2 Feb 2012(オープンアクセス)
スタチンが購入できる184のオンラインサイトをポイントで評価したもの。副作用についての記載は十分でなかった。
02.04 Geographic Accessibility of Community Pharmacies in Ontario
(Healthcare Policy, 6(3) 2011: 36-45)
ジェネリック政策で利益の大幅低下が予想されるオンタリオ市における地域薬局のアクセス状況を徒歩・自動車で移動した場合で調べたもの。
02.04 Impact of pharmacist interventions on patients’ adherence to antidepressants and patient-reported outcomes: a systematic review
Patient Preference and Adherence 2012, 6:87-100)
薬剤師が介入した抗うつ薬による薬物療法に関する119の研究のシステマティック・レビュー。薬剤師による患者へのカウンセリングと治療モニタリングが抗うつ薬による薬物治療のアドヒアランスを改善する。
02.04 Anticholinergic and sedative
medicines~Prescribing considerations for people with dementia
Australian family physician Published :2012 Jan 23)(オープンアクセス)
抗コリン作用薬や鎮静薬との認知症や初期の認知機能の低下について検討したもの。著者はこれらのくすりを使用しないことで認知機能の低下が防げるかもしれないとして、例えば尿失禁で用いられる抗コリン作用薬の使用は4週間で効果がなかったらやめる、抗うつ薬についても使用は慎重であるべきとしている。
02.04 Fluoroquinolone-induced liver injury: three new cases and a review of the literature
Eur J Clin Pharmacol. Published:2012 Jan 14.)
2000-2011年のMEDLINEデータベースなどから確認されたフルオロキノロンとの関連がある肝損傷の症例35を検討したもの。多くの症例で中止後4週間以内で肝酵素が正常範囲に戻ったが、いkつかの症例では腎不全を併発するなどの重篤例があった
02.04 Adult Mortality Attributable to Preventable Risk Factors for Non-Communicable Diseases and Injuries in Japan: A Comparative Risk Assessment
PLoS Med 9(1) Published: January 24, 2012)(オープンアクセス)

日本人の死亡原因について2007年のデータを用いて行った東大の研究。高血糖、肥満、飲酒、高塩分摂取など16の危険因子で解析。喫煙が原因だったのが12万9千人で、高血圧、運度不足が続いた。研究者らは国に効果的な禁煙プログラムの推進と高血圧の管理にういての対策に期待を示している。国内では厚生労働科学研究としてもまとめられている。
02.04 Irreversible Atorvastatin-Associated Hearing Loss
Pharmacotherapy published online: 24 JAN 2012)
アトルバスタチンとの関連が疑われる聴力損失の症例報告
02.04 Statins and the Risk of Hepatocellular Carcinoma in Patients With Hepatitis B Virus Infection
JCO published online on January 23, 2012)

スタチンが潜在的な防護効果があるのではないかとしてB型慢性肝炎(HBV)患者に対して行われた、台湾のデータベースを用いたコホート研究。33,413人を追跡調査したところ1021人が肝細胞がん(HCC)となったが、スタチン投与群の方が用量依存的にリスクが低かった

2012年02月23日 22:50 投稿

コメントが1つあります

  1. 日薬も厚労省も、地域に根付いた薬局を潰してますよね。
    厚生局の指導で感じたのですが。1人薬剤師の小さい所はそもそも資本力がないだから、薬情や後発その他もろもろもにお金をかけれず、膨大な時間と手間をかけて「手作り」じゃないですか。
    その努力は全く無視で、「この程度の結果ですか?」って対応でした。
    そんなもん大手の資本力と同じに考え、メーカーにお金払ってパソコンに入力すれば何でも出来てくるところの方が良しとされるのは納得いきませんでした。
    心を無視して、小奇麗な薬剤師でないと患者さんは納得しないと勘違いしてるって思います。
    薬局に紙切れさえ持ってくればお金が入るシステムだから、色々納得いかないって思われるのじゃないですかね。OTCが主流の頃は、まず信頼関係でしたけど。

    ドラッグストアが地域に根付いてると主張されるなら、夜間・休日も対応すべきですね。
    早朝や夜間になると、ドラッグ開いてないからって、店を開けさせられます。