論文・報告あれこれ 2012年3月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ)
概要・コメント
03.21
Off-Label Use of Antipsychotic Medications in Medicaid
Am J Manag Care. 2012;18(3):e109-e117)
42州のメディケード・プログラムの」データから抗精神病薬の適応外使用(Off-Label Use)の状況を調べたもの。適応外使用は57.6%だったが高齢者、低年齢で使用率は髙かった。医薬品別では、リスペリドンとオランザピンが高かった。
03.21 What differentiates primary care physicians who predominantly prescribe diuretics for treating mild to moderate hypertension from those who do not? A comparative qualitative study
BMC Family Practice 2012, Published: 29 February 2012)
(オープンアクセス)
サイザイド系利尿剤は軽度から中度の高血圧症の治療に費用効果がよいが、実際はARBやACE阻害剤など高価な医薬品が処方される傾向にあることから、カナダ・ケベック集の29人のプライマリケア医に処方決定の方法についてインタビューしてその原因を探ったもの。研究者らはプラマリケア医らが、利尿薬についの安全性などについて誤った認識がある一方、製薬企業のマーケティング戦略が影響しているとしている。(日本でもこういった調査をきちんとやったらとどんな結果が出るか楽しみ)
03.21

Challenges to Australia’s national health policy from trade and investment agreements
Med J Aust 2012; 196 (5): 354-356.)
(オープンアクセス)

たばこパッケージの簡素化や医薬品の承認、処方薬の広告など、豪州における米国とのTPP交渉における課題について論述。
03.17 The Regulation of Nicotine in the United Kingdom: How Nicotine Gum Came to Be a Medicine, but Not a Drug
J. of Law and Society Online First 2012.2.21)
(今のところオープンアクセス)
社会の変化や法制度の問題など、さまざまな視点からニコチンガムが医薬品として社会に認知されるまでの歩みをまとめたもの。
03.17
保険薬局において副作用を疑う症例に対応する際の課題

(医薬品情報学 13(4):194-198 (2012))
香川県薬剤師会生涯教育研修会に参加した薬剤師に行ったアンケート調査をもとにまとめたもの。英国MUR、豪州HMRを例に挙げて、日本でも、患者が自身の抱える治療上の注意点を医師・薬剤師の双方に気軽に確認できる情報共有のあり方を模索する必要があるとした他、副作用の捉え方について、リスクコミュニーケーションのあり方について議論をすすめ、患者と医師・薬剤師との合意形成が必要だとしている。
03.17 ドラッグストア来店者を対象としたサプリメントに関する 要望の実態調査
(医薬品情報学 13(4):173-182 (2012))
サプリメントや健康食品に関する知識や販売店への要望などについて、神戸学院大近隣のドラッグストア2店舗に来店した740名に行ったアンケート調査の結果。(206名から回答) 消費者の年齢で求める情報や知識の程度に違いが明らかになった他、具体的に何を摂取すべきなのかを明確にできていない消費者の状況もうかがわれた。
03.17 葉酸の神経管閉鎖障害リスク低下効果に関する薬剤師の認識
(医薬品情報学 13(4):167-172 (2012))
葉酸は妊娠前から十分量摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが低減することが明らかになっていますが、このことについて薬剤師がどの程度理解しているかを調べた研究。対象は仙台市薬剤師会主催の学術研修会参加者で、回答した166人中104人(62.7%)はこのこについて認識していたが、摂取推奨量や摂取方法などの適切な知識は有していなかった。(私もそう)
03.16 Roles of pharmacists in expanding access to safe and effective medical abortion in developing countries: A review of the literature
(Journal of Public Health Policy advance online publication 8 March 2012)
(今のところオープンアクセス)
妊娠中絶と薬局や薬剤師の関わりについての文献をレビューした研究。開発途上国などでは、ミソプロストール(サイトテック)を中絶目的で薬局で販売するケースがある一方、医療機関への橋渡し役をおこなっているという報告もあるという。
03.16 「薬学教育6年制」は何をもたらすのか㊦
(集中CONFIDENTIAL 2012.03.15)
先月のあれこれで紹介した雑誌記事の後編。懸念していたことがその通りとなっているとの印象。ただ、「現場での服薬指導の形骸化」というのは何を指していっているのだろう。必要な情報を患者や生活者に与えていないというのであれば、薬学教育の6年制の問題ではなく、現場の問題である。 また、薬学教育6年制の真の狙いをあらためて問い、6年制卒薬剤師が活躍できる環境を早急に整えるべきであるという指摘は、本サイトでも以前から指摘していた通り。ただこれは教育現場の責任ではなく、将来展望を未だ明らかにできない日薬に責任が一番あると思う。
03.12 認知行動療法と動機付け面接法を用いた禁煙指導実習の構築
(薬学雑誌 132(3) 369-379 (2012))
独自に構築した認知行動療法と動機づけ面接法を取り入れた禁煙指導プログラムを病院で実務実習を受けた薬学部5年生を対象に実施し、喫煙に対する意識の変化と禁煙指導に対する意欲・自信度に関するアンケートを行いまとめたもの。
03.12 訪問薬剤管理指導を受けている認知症治療薬服用患者の属性及び服薬アドヒアランスとの関連要因に関する予備的研究
(薬学雑誌 132(3) 387-393 (2012))
訪問薬剤管理指導を受けている認知症治療薬服用患者の属性把握と服用状況との関連要因について調べたもの。服薬状況の良否には、住環境や薬の保管管理者が関連していることが示唆された。一方施設入居者では、服薬に起因した認知機能の低下や身体機能の悪化を薬剤師が確認し難く、施設入居者に対しても、より積極的に訪問薬剤管理指導の業務内容を充実されることが肝要だとしている。
03.12 A Systematic Review of the Evidence for Pharmacist Care of Patients With Dyslipidemia
(Phar Online First 2012.02.28)
脂質異常症の管理における薬剤師による介入が標準的ケアと比べてどの程度有用であるかどうかを調べたシステマティックレビュー。
03.12 Bleeding Risk with Dabigatran in the Frail Elderly
N Engl J Med 2012; 366:864-866
豪州とNZの血液協会が共同で行ったダビガトラン(プラザキサ)による出血イベントの調査結果。25%が不適切な使用によるものだった。高齢者の出血イベントは用量を減量しただけでは解消しない。また、腎機能の低下や低体重では出血リスクは潜在的に増す。
03.12 Cardiovascular, Ocular and Bone Adverse Reactions Associated with Thiazolidinediones: A Disproportionality Analysis of the US FDA Adverse Event Reporting System Database.
Drug Saf. Online First 2012.02.29)
チアゾリジン系薬剤(TZDs)と心筋梗塞、骨折、横紋浮腫の発症リスクについて、米FDAの有害事象報告システムのデータを用いてしたもの。心筋梗塞と骨折リスクについてはよく知られていますが、黄斑浮腫もオッズ比3.38と高い(ロシグリタゾンに限るとオッズ比5.5なので、ピオグリタゾンはそれほど高くないかもしれない。日本の添付文書でもその他の注意で、「視力低下があらわれた場合には黄斑浮腫の可能性を考慮すること」との記載があるので現場では留意が必要だと思う。
03.12 Information sources used by parents to learn about medications they are giving their children.
Res Social Adm Pharm. Online First 2012.02.29)
薬物治療を受ける子供の両親に対して、医薬品使用の判断についての情報源などを尋ねたフィンランドで行われた断面調査。12歳以下の子供を持つ6000人をランダムで選び出し、67%から回答を得た。両親が利用したことがあるとした情報源は、医者(72%)、患者向けのリーフレット(PILs)(67%)、看護師または学校保健師(52%)などが続き、薬剤師は44%だった。
03.12 Views of the Scottish general public on community pharmacy weight management services: international implications
Int J Clin Pharm.  Online First 2012.03.05)
 スコットランドで行われている地域薬局における肥満マネジメント(weight management)についての一般住民の見方について調べた断面調査。6000人をランダムで選び出し、20.6%から回答。回答者の60.1%がこのマネジメントに同意したものの、薬局におけるヘルスサービスであるとの認識は高くなかった。また、プライバシーや専門知識への不足への懸念も低くなかった。
03.11 An Over-the-Counter Simulation Study of a Single-Tablet Emergency Contraceptive in Young Females
Obstet Gynecol. Online First 2012.03.05)
緊急避妊薬がOTCとなっている米国でも年齢が低い場合はティーンのためのクリニック(teen reproductive health clinics)を受診する必要がありますが、より若い年齢層での販売可能を見据えて行われた、シュミレーション。5都市のティーンのためのクリニックを利用した11~17歳の助成を対象に製品ラベルの内容が理解でき、正しく使用できるかどうかを確認した。
03.11 A survey of opinions on emergency contraception in young women in Southern Italy
Eur J Contracept Reprod Health Care. Online First 2012.03.04)
南イタリア地方で行われた若い女性を対象に行われた緊急避妊薬(HEC)についてのアンケート調査。(754人、平均年齢19.5歳) 16%がHECを使用したことがあると答え、使用の理由はコンドームの破裂が57%、望まない妊娠への認識不足が25%、性交時における避妊薬の入手困難18%と続いた。研究者らはHECの使用が性的行動のリスクは高めないとした上で、OTCとしての有用性は若者に対する性教育プログラムも同時並行に改善する必要があるとした。
03.11 Use of thiazolidinediones and risk of osteoporotic fracture: disease or drugs?
Pharmacoepidemiol Drug Saf. Published online 6 MAR 2012)
チアゾリジン(TZD)による骨折リスクはよく知られているところですが、糖尿病の程度によってもそのリスクが異なる可能性があるとした研究。
03.11 Drug-induced Stevens–Johnson syndrome: case series from tertiary care centre in Gujarat
Pharmacoepidemiol Drug Saf. Published online 28 FEB 2012)
スチーブンス・ジョンソン症候群 (SJS)が、どのような薬剤で起こりやすいかを調べたインドの病院の研究。3年間で29の事例があり、最も多かったのがイブプロフェンの5例で、抗てんかん薬や抗菌薬なども多くを占めた。SJS症状を呈するまでの平均時間は15.9日で、治療による軽快には14.2日を要したが、症状発現までの時間は薬剤によって差があった。
03.11 A community pharmacy-based cardiovascular screening service: views of service users and the public
Int J Pharmacy practice published online 9 MAR 2012)
英国で行われている地域薬局における心臓血管病スクリーニング(pharmacy-based cardiovascular disease (CVD) screening)サービスについて、薬局スタッフが利用者に対して行ったアンケート調査の結果。利用者の90.7%は薬局がスクリーニングを行うことに対して適切な場所であるとの印象を持った。プライバシーと守秘性に対する懸念への対処が今後の課題。

2012年03月21日 21:45 投稿

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