論文・報告あれこれ 2012年4月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ)
概要・コメント
04.22 Ideal and actual involvement of community pharmacists in health promotion and prevention: a cross-sectional study in Quebec, Canada
BMC public health.2012 Mar 15;12(1):192.)
(オープンアクセス)
地域薬局が健康増進(health-promotion)と予防活動(preventive services)を行うことについての薬剤師の認識と取組状況について調べた、カナダ・モントリオールの薬剤師1250人に行われたアンケート調査。高血圧や糖尿病、高脂血症、Sexual Health などへの関与の必要性を感じているが、実際に行っているのは半数に満たない。行えない理由としては、時間の不足、他職種との協働の不足、スタッフや資材の不足、報酬の問題などを挙げている。(カナダでもこういう結果なんだから、調剤に追われている日本は調剤業務の簡素化や助手の導入をしない無理なんだろうな)
04.22 Price, familiarity, and availability determine the choice of drug – a population-based survey five years after generic substitution was introduced in Finland
BMC Clin Pharmacol. Published online 2011 December 15.)
(オープンアクセス)
2003年からジェネリックの義務づけが行われているフィィンランドの国民3000人を対象に2008年に行われたアンケート調査。選択にあたって重視したものは、価格(72%)、親しみさ(familiarity)(56%)と有用性(42%)の3つが重要とされたが、国産品であるかどうか添加物などは重視はしていなかった。また、変更を拒否した(10%くらいいるらしい)理由を尋ねると価格がもっとも高い順位だった(フィンランドでは、複数のGEが在庫してあったら患者が選ぶのかなあ?)
04.22 The use of complementary and alternative medicine (CAM) in children: a telephone-based survey in Korea
BMC Complementary and Alternative Medicine Published: 20 April 2012)
(オープンアクセス)
子どもへの代替医療(complementary and alternative medicine (CAM))の利用状況について調べた韓国で行われた電話アンケートの結果。回答者の65.3%が利用したことがあると答え、自然薬(natural products)が89.3%で最も多かった。52.7%の親たちが満足と答えた一方、29.1%の親たちが西洋医からの助言を求めた。研究者らは代替医療の安全性や有用性に関する情報を提供すべきだとしている。
04.22  Nicorandil associated anal ulcers: an estimate of incidence.
Ann R Coll Surg Engl. 2012 Apr;94(3):170-2.)
患者データベースを用いて、ニコランジル(シグマート)の使用と肛門潰瘍(anal ulcers)の頻度を調べた英国の研究。6年間に1379人の使用者があり、30人が発症していた。研究者らは毎年服用者1000人につき4人程度発症する可能性があるとして、リスクを患者に説明すべきであるとしている。
04.22 Older patient, physician and pharmacist perspectives about community pharmacists’ roles
Int I PharmacyPractice Online First 2012.04.11)
薬剤師による患者介入の役割について、高齢患者、医師、薬剤師に展望について尋ねた研究。(調査数は少数だがさまざまな意見があるらしく、フルテキストで読んでみたい。)
04.22 Patient satisfaction with pharmaceutical care delivery in community pharmacies
(Patient Prefer Adherence 12(6).337-348,2012)
薬局業務経験で行う学生の相談業務と薬剤師の相談業務について患者満足度を調べた米国の研究。
04.22 Speech privacy at community pharmacies.
J Acoust Soc Am. 2012 Apr;131(4):3418.)
地域薬局における相談スペースのプライバシー確保について84薬局への電話アンケートと患者160人のインターネット調査を行った日大の報告。薬剤師の社会的な役割などさまざまな課題があるという。(ググると日本語の論文もあるみたい)
04.08 Effect of Domperidone on Insufficient Lactation in Puerperal Women: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Obstet Gynecol Int.Volume 2012 (2012), Article ID 642893, 7 pages)
(オープンアクセス)
出産後の乳汁分泌不全におけるドンペリドンの有用性についてのシスティマティック・レビューを行ったもの。24の研究のうち3つの研究をメタアナリシス。その結果、治療のオプションとしては有用だとした。
04.08 Hypertensive disorders of pregnancy
Aust Prescr 2012;35:47-50)
(オープンアクセス)
妊娠中や妊娠後の高血圧への対応法などを記したもの。妊娠中に比較的安全なものとして、ラベタロール、オクスプレノロール、ニフェジピン、メチルドパ、ヒドララジン、プラゾシンなどを挙げている。
04.08 The professional pharmacist and the pharmacy business
Aust Prescr 2011;34:34-5)
(オープンアクセス)
豪州の処方医向けの公的雑誌の論説。冒頭で、薬剤師に対してプライマリ及び予防医療で期待されるとしたうえで、薬剤師の役割を記した他、プライマリヘルスケアにおけるトリアージに期待を寄せている。(1年前の発行。日本でもこういった発言が厚労省や医師からどんどん出されて欲しいな)
04.02 医薬分業は患者のためか?
(3月29日 WEDGE Infinity)
あの川渕孝一氏が、再び保険薬局のあり方について注文。「一物二価」を問題にするなら定率ではなく定額負担にすれば解決すると思う。ただ、「保険薬局がどんな付加価値を提供しているかを示すべきだ」という主張には耳を傾けたい。
04.02 Antidepressant Use During Pregnancy and the Risk of Pregnancy Induced Hypertension
Br J Clin Pharmacol Online first 2012.03.21)
(今のところオープンアクセス)
抗うつ薬の使用と妊娠高血圧の増加リスクの関連性を調べたnested case-control study。相対危険度は全体で1.53で、SSRIに限ると1.60、さらにパロキセチンだおと1.81となった。
04.02 Results of a national survey on OTC medicines, Part 2: Do pharmacists support switching prescription agents to over-the-counter status?
CPJ 2012;145(2):73-76)
(オープンアクセス)
シンバスタチン、オメプラゾール、フルチカゾン点鼻の3剤について、スイッチOTCとしてふさわしいかどうかをカナダ国内の5037人の薬剤師にあてて行われたアンケート調査の結果。シンバスタチンで88%、オメプラゾール61%と多くの薬剤師はスイッチを支持しなかった。
04.02 How can pharmacist remuneration systems in Europe contribute to generic medicine dispensing?
Pharmacy Practice 2012; 10(1): 3-8.)
(オープンアクセス)
 欧州におけるジェネリック使用推進の取組をPharmacists’ remuneration(薬剤師に対する報酬)という視点で調査しまとめたもの。日本のような調剤料のような仕組みがないので一概には比較できないが、Dispensing Feeが設けられている国もある。 また、一方で値引きが認められている国もあり興味深い。
04.02 Pharmacy Communication to Adolescents and Their Physicians Regarding Access to Emergency Contraception
Pediatrics Online Firstr 2012.03.26)
(今のところオープンアクセス)

緊急避妊薬の購入アクセスの状況や、販売時の薬剤師とのコミュニケーションの状況を調査したもの。5都市943の薬局で実施。調査結果については、各紙とも批判がある。
04.02 Antidepressants and the relief of osteoarthritic pain – Findings from a study examining adjunctive duloxetine
(Int J Clin Pract  Online First 2012.03.12)
(今のところオープンアクセス)
研究者らが他紙に掲載した論文を引用した、抗うつ薬のデュロキセチンによる単剤療法が関節炎に有効ではないかとする展望記事。
04.02 Efficacy and Safety of Innovator versus Generic Drugs in Patients with Epilepsy: A Systematic Review
Pharmacotherapy 2012; 32: 314-322)

抗てんかん薬をジェネッリックで代替調剤をお行った場合の有用性と安全性に関する研究にういてシスティマティック・レビューを行ったもの。カルバマゼピン、フェニトイン、パルプロ酸の3剤とデータが限られるが、有用性、有害事象などについて有意差は認められなかった

2012年04月22日 22:50 投稿

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