薬物使用と生活に関する全国高校生調査2024

厚生労働省研究班はこのほど、2024年9月~2025年2月にかけて実施された全国の高校生における飲酒・喫煙を含めた薬物使用および生活に関する実態調査の結果をまとめ、報告書として公表しています。

報告書は下記サイトに掲載されています。

【精神保健研究所】
薬物依存研究部・研究報告書
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/index.html

<厚生労働省 依存症に関する調査研究事業・青少年および学校関係者を対象とする薬物依存に関する全国調査と薬物問題への対応に関する研究>

薬物使用と生活に関する全国高校生調査2024(令和7年度研究報告書)https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/highschool2024.pdf

全国から無作為に選ばれた236校(想定生徒数193,543名)を対象に調査を実施。120校52,065名から回答が得られています。

令和元年、令和4年度にも同様の調査が行われており、一部、過去の調査結果と比較しました。

●アルコール、たばこ、違法薬物について

今回 R4 R1
アルコールを飲んだことがある
(生涯経験率)
17.8% 20.6% 27.3%
男子 19.1% 24.2% 30.3%
女子 15.9% 17.2% 24.1%
たばこを吸ったことがある
(生涯経験率)
2.7% 2.6% 4.7%
男子 3.3% 3.7% 6.4%
女子 1.7% 1.5% 2.8%
違法薬物を使用したことがある
(生涯経験率)
0.40%  0.25% 0.5%

 

●市販薬の乱用経験について
「治療目的でなく、ハイになるため、気分を変えるために決められた量や回数を超えて使用すること」と定義

 今回 R4
過去1年間に市販薬の乱用経験 1.36% 1.6%
男子 0.93% 1.2%
女子 1.71% 1.7%

前回調査と比べ減少しているものの、女子については横ばい

市販薬の乱用経験を有する高校生は約70人に1人の割合に相当する

今回の調査では、乱用経験がある人の中での使用頻度と入手先も尋ねています

使用頻度

  • ほとんど毎日 4.6%
  • 週に数回   6.3%
  • 月に数回     17.7%
  • 年に1~数回 40.1%
  • 頻度不明    10.9%

入手経路

  • 実店舗     54.1%
  • 家の常備薬   25.6%
  • インターネット 5.8%
  • 友人・恋人・知人 4.2%

さらに地域別(ブロック別)傾向についても解析、市販薬乱用の経験率に地域差はほとんどなく、乱用問題は東京や大阪など大都市圏に限らず、全国的な広がっていることが示唆されているとしています。

●エナージードリンクについて

今回 R4 R1
過去一か月の飲用経験 25.9% 30.9% 27.7%
男子 33.0% 42.5% 39.1%
女子 17.6% 20.9% 15.6%
過去一か月の摂取頻度  1~2日 15.3%  16.8% 16.0%
3~5日 5.5%  7.1% 6.5%
6~9日 2.2% 3.1% 2.8%
10~19日 1.3% 1.8% 1.5%
20~29日 0.4% 0.6% 0.5%
毎日 0.4% 0.4% 0.6%

さらに今回の調査ではカフェインの製剤の過去1か月の使用経験も尋ねています

●カフェイン製剤について

今回
過去一か月の服用経験 13.4%
男子 14.3%
女子 12.3%
過去一か月の服用頻度  1~2日 6.3%
3~5日 2.8%
6~9日 1.4%
10~19日 1.1%
20~29日 0.4%
毎日 0.7%

 

ざっと読んでみて感じたことは、たばこや飲酒については、小学校からの薬物乱用防止教育で体への害などについてが伝えてきた成果か、興味半分での使用が減っているように思いました。

一方で気になったのは、乱用で使用した市販薬の入手経路に「家の常備薬」とした回答が一定の割合でみられたことです。これは別の調査でも同様な結果が示されています。(→TOPICS 2025.08.15

既に意見募集の締め切り期日が過ぎてしまいましたが、指定濫用防止医薬品の包装制限について、総合感冒薬などは7日を上限とする省令案が示されました(→TOPICS 2025.11.13)が、ファミリーユースなどとして家にこれら大包装品が常備されていれば、乱用のリスクは確実にあると思います。

家族などの同居者による市販薬の厳重な監視の他に、やはりなるべく少ない包装数に制限することは必要だと思います。(数日前にこのレポートが確認できていたら、意見提出の際これを引用していた)

あと驚いたのが、高校生の間でエナージドリンクやカフェイン製剤の使用が広がっている点です。過量服用だけでなく、カフェインを含む清涼飲料水等との相加摂取も考慮する必要があり、何らかの健康リスクについて啓発する必要があるでしょう。

特に中学・高校でおこなわれる「くすり教育」では、このことについてしっかり伝えること必要ではないでしょうか。

参考:
薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021(令和4年研究報告書)
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/highschool2021_ver2.pdf

薬物使用と生活に関する全国高校生調査2018(令和元年研究報告書)
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/highschool2018.pdf

【独自】市販薬乱用、週に数回以上1割 高校生の経験者回答、頻度初算出
(東京新聞/共同通信 2025.12.12)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/455528

関連情報:TOPICS
2025.11.13 指定濫用防止医薬品の風邪薬などの大包装品は7日分までに制限へ
2025.08.15 市販薬の過剰摂取で救急外来を受診した患者の疫学的特徴は?
2025.06.17 高校生の市販薬乱用と学校生活や家庭生活との関係性
2025.04.15 濫用等のおそれのある医薬品の成分指定に係る研究(2024厚生労働科学研究)


2025年12月13日 15:15 投稿

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