論文・報告あれこれ 2012年7月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。 

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ)
概要・コメント
07.23 Impact of antidepressant treatment: a study from The Netherlands
(Patient Intelligence Published Online  18 July 2012)
(オープンアクセス)
抗うつ薬の投与を受けているオランダの成人844人に対して行われたアンケート調査の結果。回答者303人(86%がGPにより抑うつと診断)の結果を解析。方法は考えうる14の副作用について経験の有無を尋ねたもので、回答者の42%が2~6週間で効果を実感した一方、60%が副作用を経験したことがあると答えた。研究し者らはまた、Discussion で 糖尿病やCOPDなどの慢性疾患と比べ治療費用が高いと指摘している
 07.23 Self-medication of regular headache: a community pharmacy-based survey
Eur J Neurology 19(8) p1093-1099 published Online 23 Feb 2012)
セルフメディケーションでの対応が行われている頭痛の特徴と使用されている薬剤の使用について調べたベルギー地域薬局で行われた研究。(詳細な研究方法はよくわからない) 回答者528人中42.6%が医師から頭痛の診断を受けていなかった。もっとも使われていたのはアセトアミノフェンで、偏頭痛と診断されていた25%がトリプタンを使用、12%が予防薬を使用していた。乱用の傾向も一部見られたが、使用を控えるよう助言を受けたのは14.5%に留まった。
07.23 Prenatal tolerability of acetaminophen and other over-the-counter non-selective cyclooxygenase inhibitors.
Pharmacol Rep. 2012 May;64(3):521-7.)

妊娠中の鎮痛剤の使用と胎児への影響をまとめた総説(ポーランドの英語の雑誌)
07.23 Over-the-counter Acne Treatments: A Review
J Clin Aesthet Dermatol. 2012;5(5):32–40.)
OTCによる、にきび治療に関する総説
07.19

Vitamin B12 supplementation improves rates of sustained viral response in patients chronically infected with hepatitis C virus
Gut Published Online 17 July 2012)

肝臓がビタミンB12の生合成の場であることに着目し、C型肝炎の治療においてビタミンB12を基礎治療に追加することで影響があるかどうかを調べた研究。4週間では差は見られなかったが、24週間ではビタミンB12を追加することでウイルス持続陰性化(rate of sustained viral response)率が34%に上昇させるなど、大幅に向上させた。
07.19 Sleep…Naturally: A Review of the Efficacy of Herbal Remedies for Managing Insomnia
Alternative and Complementary Therapies. JUNE 2012, 18(3): 136-140.)

不眠に利用されているハーブ等についてエビデンスがあるかどうかを電子データベースで調べた研究。効果があるとされているとされる14についてチェックを行ったが研究としてあったのは6つに過ぎず、これらについてもエビデンスは十分ではなかった
07.16 Canadian Pharmacists Association Conference, Whistler, BC
CPJ 145(4) 別刷) 
今年6月に行われたカナダ薬剤師会の学術大会のアブストラクトとポスター。さまざまな取り組みが発表されていて興味深い。
07.16 フィジカルアセスメント(PE:physical examination)に関する2時間の研修プログラムを終えた開局薬剤師などに、4週間後、実際に行ったかどうかなどのアンケートを行った結果の報告。回答した34人中28人が実施するにあたっては障壁があるなどと答えた。
07.16 地域薬局におけるHbA1c測定スクリーニングのパイロットプログラムの報告。5分くらいで結果がわかるバイエル社の機器を使用。薬剤師からの情報提供も含め20~25分をかけている。日本の糖尿病診断アクセス革命の方が先行しているかもしれない。こちらの報告も期待したい。
07.16 Reappraisal of Acetazolamide for the Prevention of Acute Mountain Sickness: A Systematic Review and Meta-Analysis
High Alt Med Biol Published online June 22,2012)

最近イブプロフェンが高山病の予防薬となる可能性があるとの論文が出されている(TOPICS 2012.03.22)が、こちらは以前から有用性があるとされているアセタゾラミドについてのシステマティック・レビュー。24の研究を検討した結果、エビデンスの強さはあまりなく、高用量では多尿や味覚障害の有害事象が認められた。
07.16 1,3-Dimethylamylamine (DMAA) in supplements and geranium products: natural or synthetic?
(Drug Testing and Analysis published Online 12 Jul 2012)

ドーピング対象物質として近年問題となっているDMAAについてガスクロマトグラフィによって分析をおこなった結果、市販されているものの一部は植物由来ではなく、合成品の可能性があるとした報告。
07.13 医療機関における採用医薬品集作成と医薬品採否に関する実態調査 ―過去10年間の変遷を踏まえて―
(臨床薬理 43(1) p43-49,2012)
各施設で作成されている医薬品集の作成状況について調査したもの。新規採用の基準や薬事委員会などによる意思決定システム、GE品採用の審議の論点、診療GLの採用状況などの項目がある。2010年に145施設に送付し80施設が回答。採用医薬品集を作成していた施設は56%と前回調査69%から低下、採用医薬品品目は前回までの調査と大差はなかったが注射薬はGE品の採用が倍増した。(2000年、2005年にも同様の調査が行われている)
07.13 わが国の市販後の安全性監視の現状と今後のあるべき姿
(臨床薬理 43(1) p17,2012)
医薬品の市販後の安全性監視の現状について海外の取組状況を引用しながら紹介したもの。ピオグリタゾンによる膀胱がんリスクに言及し、発がん性の検討を含むイベント発現までに時間がかかるイベントの調査は、旧来型の使用成績調査では対応できないという。
07.13 Experiences with adverse drug reaction reporting by patients: an 11-country survey.
Drug Saf. 2012 Jan 1;35(1):45-60.)

世界11か国(米国、カナダ、英国、デンマーク、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、豪州、NZ、マレーシア、フィリピン)の患者による副作用直接報告システムの状況をまとめたもの。日本の状況と比較すると興味深い。
07.13 コーヒー摂取が胃運動および自律神経活動に与える効果の検討
(日本栄養・食糧学会誌 65(3) p113-121,2012)
コーヒーの胃運動および自律神経活動への影響をコーヒー常飲者、非常飲者を対象にクロ5スオーバー試験を行ったもの。コーヒー摂取時のみ自律神経活動使用値が有意に増加、カフェインレスコーヒーでは有意な増加が見られなかったことからこれらの作用にはカフェインが関与している可能性があるとしている
07.13 Knowledge of adverse drug reaction reporting in first year postgraduate doctors in a medical college.
Ther Clin Risk Manag. 2012;8:307-312. Epub 2012 Jun 19)
卒業後1年目の医師に医薬品副作用報告の知識や実際に報告したことがあるかなどを調べたインドからの報告。(日本ではどうなんだろう)
07.13 The Consequences of Ineffective Regulation of Dietary Supplements
Arch Intern Med. 2012;172(13):1035-1036.Published Online July 9, 2012)
(今のところオープンアクセス)
米国における健康補助食品の規制強化を求めた論評記事。2009年公表のGAOのレポート(→リンク)によれば、2008の1月~10月だけで596の有害事象の報告と重篤ではない自発的な有害事象の報告が352例あったとのことで、年間では有害事象の報告は5万件に上ると推測されている。また2010年のGAOのレポート(→リンク)によれば、店頭で処方薬に変えて勧められたというケースやWEBでの誇大な広告が後を絶たないという。
07.13 The Value of Pharmacists in Health Care
Popul Health Manag 12(3):157-162, 2012)

米国チェーンのWargreen での取り組みとAsheville Project として知られる全米10都市で行われている糖尿病患者への薬剤師ケアを紹介して、慢性疾患管理における薬剤師の役割についての将来展望を記したもの
07.10 Maternal Exposure to Amoxicillin and the Risk of Oral Clefts.
(Epidemiology. Online First 2012 Jul 3.)
妊娠初期のアモキシシリンの使用と口蓋裂などとの関連を調べた研究。第一三半期にアモキシシリンを使用した場合、cleft lip(唇裂)はオッズ比は2.0だったが、妊娠三か月(third-gestational month)に使用した場合にはオッズ比は4.3となった。これは他のペニシリン系やセファロスポリン系では見られなかった。また、cleft palate(口蓋裂)は第一三半期全体ではオッズ比は1.0だったが、妊娠三か月に使用した場合にはオッズ比は7.1となった。(妊娠三か月での抗生剤の使用は十分留意が必要ということらしい)
07.10 Periconceptional Over-the-Counter Nonsteroidal Anti-inflammatory Drug Exposure and Risk for Spontaneous Abortion
Obstet Gynecol 120(1) p113-122,2012)
(オープンアクセス)
シクロオキシナーゼを阻害し、妊娠を維持するプロスタグランジン合成を減らすことから、関連性があると指摘されていたNSAIDsの流産との関連を調べた研究。OTCとしての使用と第一三半期での使用と流産との関連を調べたところ、ハザード比は1.00でNSIDsの使用で流産リスクが高まることはなかった。
07.10 Efficacy of chlorhexidine gluconate ointment (Oronine HR) for experimentallyinduced
comedones
Clin Cosmet Investig Dermatol  2012, 5:79-83 Published Online 09 July 2012)(オープンアクセス)
実験的にウサギににきびを誘発させてオロナインH軟膏の効果を調べた富山大の研究。
07.10 C型肝炎治療ガイドライン(第1版)
(肝臓 53(6) p355-395,2012)
 日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会がまとめたもの
07.10 PMDA の活動と方向性
(日本薬理学雑誌 139(5) p211-214,2012)
 
07.10 ドライマウス 過去から現在
(日本口腔外科学会雑誌 55(4) p154–162,2009)
ちょっと古いですが、フルテキスト解禁となった総説。口腔乾燥症の分類や原因など解説。保険適応外だが、L-システインエチルエステルなども有効だという。

2012年07月23日 00:10 投稿

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