論文・報告あれこれ 2013年9月

 先月は結局更新追加ができずすみませんでした。他のメディアではとりあげられていないものを中心に、先月から今月のちょっと気になった論文や報告などをピックアップしました。気になったものは独立記事にするかもしれません。誤りがあったらご指摘下さい。これから随時追加する予定なのでチェックしてみて下さい。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

 ★更新することが多いので、2013年1月分よりスタイルとURLのタイプを変えました。サイドバーに各月記事へのリンク、右下に最終更新日を記してあります。

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
09.14 Professional Standards for
Public Health Practice for Pharmacy~For pharmacists and pharmacy teams
(英国王立薬剤師会 2013.08)

英国王立薬剤師会がまとめた Public health 領域におけるプロフェッショナルスタンダードの草案。興味ある内容なんだけどまだ十分内容を把握しきれていません。
09.14 非ステロイド性抗炎症薬貼付剤の処方に対する患者意識と自宅残薬の取り扱い実態
(医療薬学 38(9) p592-598 2012)
2010年9月にQlifeが行ったWEBアンケートの結果を検討したもの。医師が処方した NSAIDs 貼付剤の量に対する患者の意見として、治療に必要な量
よりも「かなり多め」「やや多め」の回答が合せて40.1%に達した他、半数以上の人がかゆみやかぶれなどの何らかの症状を経験していた。
09.14 Antiepileptic drugs and breastfeeding
Italian Journal of Pediatrics Published Online 28 Aug 2013)
抗てんかん薬の授乳への影響をについての総説
09.14 トランキライザーの流行 ―市販向精神薬の規制の論拠と経過―
(Core Ethics vol.6 p385-399,2010)
少し古いですが、内容は興味深いです。昔はトランキナイザーも処方せんなしで販売されており、新聞広告もすごかったそうです。
09.14 Tiotropium Respimat Inhaler and the Risk of Death in COPD
(NEJM Published Online 8 Sep 2013)

これまでの研究と異なる結果となった、あちこちで話題となっているスピリーバレスピマットの安全性についての研究。死亡リスクはハンディヘラーと同等とした。利益相反といった声も。
09.14 Frequency and pattern of Chinese herbal medicine prescriptions for urticaria in Taiwan during 2009: analysis of the national health insurance database
(BMC Complement Altern Med Published Online 15 Aug 2013)
台湾で蕁麻疹に処方される処方名ベスト10を紹介したもの。1位は消風散、2位は荊防敗毒散、3位は黄連解毒湯、4位は当帰飲子、5位は竜胆瀉肝湯、6位は加味逍遥散、7位は温清飲、8位は桂枝湯、9位は銀翹散、10位は小柴胡湯だった。台湾の高温多湿の気候も関係しているものと思われる。
09.14 Significance of Kampo, Traditional Japanese Medicine, in Supportive Care of Cancer Patients
Evid Based Complement Alternat Med. Published Online 19 June 2013)
がん化学療法の副作用軽減のために併用して行われている漢方薬による治療を紹介した金沢医大の報告。
09.14 Kampo medicines for gastrointestinal tract disorders: a review of basic science and clinical evidence and their future application
J Gastroenterol  2013 April; 48(4): 452–462)
消化器系疾患における漢方薬についての総説。いろんな処方が出てくる。
09.14 Efficacy of Topical Atorvastatin for the Treatment of Pressure Ulcers: A Randomized Clinical Trial.
(Pharmacotherapy Published Online 12 Aug 2013)
イランで行われたRCT。 標準的な治療に加えアトルバスタチン1%軟膏の2週間使用をすると、ステージ1、2の褥瘡の治癒が早まったという。
09.14 Short- and Long-Term Mortality Risk Associated with the Use of Antipsychotics Among 26,940 Dementia Outpatients: A Population-Based Study.
Am J Geriatr Psychiatry Published Online 6 Sep 2013)
認知症通院患者の抗精神病薬の使用と死亡リスクとの関係を調べた、ノルウェーのPopulation-Based Study。ハザード比は30日以内の短期使用で2.1、2年を超える長期使用で1.7だった。薬剤別ではハロペリドールで1.7となった。
09.14 The Activity of Palliative Care Team Pharmacists in Designated Cancer Hospitals: A Nationwide Survey in Japan.
J Pain Symptom Manage Publishe Online 6 Sep 2013)
フルテキストで確認したい報告。がん診療連携拠点病院での緩和ケアチームにおける薬剤師の役割についての全国調査結果をまとめたもの。304施設(回答率77%)が回答、79%で病棟回診、94%でカンファレンスに薬剤師が参加ていた。日本での報告もあるかも。
09.14 Combination Gefitinib and Methotrexate Compared With Methotrexate Alone to Treat Ectopic Pregnancy
Obstet Gynecol Published Online 11 Sep 2013)

子宮外妊娠の治療に対して、メトトレキサート単剤と肺がん治療薬のゲフィチニブを上乗せした場合の有効性を調べた非盲検の研究。併用療法の方が単独より治療が34%短縮したとした。今後さらなる臨床試験が行われる。(→BMJ Open
09.14 Increased Risk of Cognitive Impairment in Patients With Diabetes Is Associated With Metformin
Diabetes Care published Online  Sep 2013)

メトホルミンの使用と認知機能への影響を調べた研究。調整オッズ比が1.51となった一方、カルシウムやB12サプリメントを使用していた人ではオッズ比が逆に0.41と低くなった。
09.14 Randomised clinical trial: rabeprazole improves symptoms in patients with functional dyspepsia in Japan
Aliment Pharmacol Ther Published Online 20 Aug 2013)
ラベプラゾールの機能性ディスぺプシアに対する有用性を調べた国内66施設で行われたRCT。4つの消化器症状は20mg/日で最も改善された。
09.14 Breastfeeding and Obesity Among SchoolchildrenA Nationwide Longitudinal Survey in Japan
JAMA Pediatr Publisehd Online 12 Aug 2013)
日本で行われたNationwide Longitudinal Survey。母乳で育てると、学童期の太りすぎや肥満のリスクを減らすとした。
09.14 健康食品に関する健康被害事例の情報源およびその有用性評価
(食品衛生学雑誌 54(4) p282-289 2013)
健康食品による健康被害の因果関係評価を視点に,3つの情報源(保健所情報,PIO-NET情報,企業情報)で収集された事例の実態を調べたもの
09.14 A survey describing the use of complementary therapies and medicines by women attending a family planning clinic
BMC Complement Altern Med Published Online 11 Sep 2013)
豪州の家族計画クリニックに通う女性の補完療法や医薬品の利用状況をまとめたもの。補完療法の情報源は約半数が家族や友人、インターネット、印刷物(書籍、雑誌)だった。
09.14 Adherence to antidepressant medications: an evaluation of community pharmacists’ counseling practices.
Patient Prefer Adherence Published Online 21 Aug 2013)
豪州の20人の地域薬剤師を対象に行われた研究。「セルトラリンのメモを持った女性の不安」「fluoxetine を2週間服用も効果がなく、友人が飲んでいるセントジョーンズワートを飲んでみたい」「escitalopram の長期服用に不安でやめたい」という3つのシナリオどのような対応を行ったかを評価したもの。
09.14 To develop and measure the effectiveness and acceptability of a pharmacy-based chlamydia screening intervention in Australia
(BMJ Open published Online 16 Aug 2013)
豪州の20薬局で行われた Selective, opportunistic, cross-sectional study。緊急避妊薬を購入した女性へのクラミジアスクリーニング介入の有効性と受容性を検討したもの。
09.14  「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」について
(厚労省 2013.07.12)
大分前にあちこちで紹介されていますが、忘れないようにメモ。でもこれをどうやって周知させるんだろう。
09.14 Effectiveness of aripiprazole for medication overuse headache: A case report
(Psychiatry and Clinical Neurosciences 65(3) 296-298,2013)
ナロンエースによる薬物乱用頭痛に対してアリピプラゾールが効果があったとした症例報告
09.14 Pharmacotherapeutic determinants for QTc interval prolongation in Japanese patients with mood disorder.
(Pharmacopsychiatry. 2012 Nov;45(7):279-83.)
気分障害の日本人患者729例のQT間隔のデータを解析。三環系抗うつ薬、特にクロミプラミン及びアミトリプチリンの服用がQT間隔の延長に有意に関連した。
09.09 Quasi-Drugs Developed in Japan for the Prevention or Treatment of Hyperpigmentary Disorders
Int J Mol Sci. 2010; 11(6): 2566–2575.)
日本で開発されたの美白成分についての総説
09.09 Changes in ambulance calls after implementation of a smoke-free law and its extension to casinos.
Circulation. Publied Online 20 Aug 2013)
カジノでの喫煙を禁止した法律が施行されたことで、カジノからの救急車出動要請がどのように変わったかを調べた研究。
09.09 The impact of eating quickly on anthropometric variables among schoolgirls: a prospective cohort study in Japan.
(Eur J Public Health. Puablished Online 27 Aug 2013)
伊奈町の小中学生の女子を対象に行われている前向きコホート研究。早食いと身体特性の関係について検討。早食いの習慣をやめると肥満の防止につながるらしい。
09.09 Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors and Alzheimer’s Disease Progression in Older Adults: Results from the Réseau sur la Maladie d’Alzheimer Français Cohort.
J Am Geriatr Soc. 3 Sep 2013)
フランスのコホート研究。ACE阻害薬はアルツハイマー患者の認知機能の低下を遅らせるかもしれない
09.09 Exploration of 100 commonly used drugs and supplements on cognition in older adults.
Alzheimers Dement Published Online 14 Aug 2013)
フルテキストで確認したい報告。よく使われる100の医薬品等について、認知機能への影響を調べた研究。ナプロキセン、カルシウム、ビタミンD、硫酸第一鉄、塩化カリウム、亜麻、セルトラリンで心理変化テスト?が改善された一方、ブプロピオン、オキシブチニン、フロセミドでは低下した。
09.09 Psychopharmacological prescriptions for people with autism spectrum disorder (ASD): a multinational study.
Psychopharmacology Published Online 5 Sep 2013)
自閉症スペクトラム(ASD)を有する人への薬物療法の状況について、日欧、北南米の諸国で比較したもの。ASDへの処方率最も高かったのは、若者ではリスペリドン、英国ではメチルフェニデート、日本ではハロペリドールが多く処方された。
09.04  Q10 triggered facial vitiligo.
Br J Dermatol. Published Online 17 Aug 2013)

タイトルとCONCLUSIONSが気になった報告。Q10の外用での使用はよくないってこと? 他でも白斑の状態を悪化させるとの指摘があった。フルテキストで確認したい。(CONCLUSIONS:Over the counter availability of Q10 containing topical formulations can be harmful to individuals susceptible for vitiligo.)
09.04 The Transfer of Drugs and Therapeutics Into Human Breast Milk: An Update on Selected Topics
Pediatrics Published Online 26 Aug 2013)
薬剤の母乳への移行についてのトピックをまとめたもの
09.04 Community-associated Clostridium difficile infection and antibiotics: a meta-analysis
(J Antimicrob Chemother. 2013 Sep;68(9):1951-61.)
抗菌剤の暴露とClostridium difficile infection (CDI:クロストリジウム-ディフィシル感染症)のリスク増の関連を調べた研究。オッズ比はクリンダマイシンで最も高くフルオロキノロン、セファロスポリンと続いたが、テトラサイクリンはリスク増とは関連していなかった。
09.04 Prescription Sleep Aid Use Among Adults: United States, 2005–2010
(CDC 2013.08.29)

米国成人の眠剤の使用状況を調べたCDCのレポート。成人の約4%が使用、男性より女性の方が使用率が高く、また50歳代と80歳代超で利用した割合が高かった。
09.02 患者·消费者を対象とした医薬品情報収集·提供ネットワークの構築
(薬学雑誌 133(9) p1023-1034,2013)

患者や消費者に医薬品情報を提供するとともに、患者からの医薬品情報を収集することのできるインターネットサイト「みんくす」の開発と運用状況を紹介したもの。(このサイトの存在は知らなかった。会員登録をしていないので詳細はこれから確かめたい)
09.02 2013 ESC guidelines on the management of stable coronary artery disease~
The Task Force on the management of stable coronary artery disease of the European Society of Cardiology

(Eur Heart J Published Online 30 Aug 2013)
(オープンアクセス)
欧州心臓学会がまとめた安定型冠動脈疾患のマネジメントに関するガイドライン。イペント予防(PDF34ページ)では、ARBについては有益な結果が得られた臨床研究はないとした一方、スピロノラクトンやエプレレノンによるうアルドステロンブロックは腎機能障害や高カリウム血症がない場合において勧奨されるとした また、NSAIDsの使用はCVイベントのリスク増があるとして、アセトアミノフェンかアスピリンの最少量での投与を勧奨した。
09.02 How youth-friendly are pharmacies in New Zealand
Surveying aspects of accessibility and the pharmacy environment using a youth participatory approach.

Res Social Adm Pharm. Published Online 24 Aug 2013)

NZの研究。若者の地域薬局のアクセシビリティなどについて調べたもの。ググったら学会発表のスライドが出てきた。(→リンク) 健康相談の場として、「若者にやさしい薬局」はどのような取り組みを行うべきかを考えさせられる。研究者らは、2010年にも関連の論文を発表していた。(これもおもしろそう)
09.02 Alcohol intake, wine consumption and the development of depression: the PREDIMED study
BMC Medicine Published Online 30 Aug 2013)

5505人の55歳から80歳までの中高年の男女7年間を追跡調査したところ、適度のアルコール摂取はうつ病(depression)の発症リスクを減らし(HR:0.72 95%CI 0.53-0.98)、ワインに限るとさらに発症リスクが減少した(HR:0.68 95% CI 0.47-0.98)。(研究結果には賛否あり)

最終更新日:2013年9月14日

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