芍薬甘草湯の運動前の使用はドーピングにあたらないのか?

 きのう、青信号が変わらないうちにと思い、ダッシュしたところ、ズキっとなって、太ももを痛めました。(今も少し痛みがある) きっと、こういった筋肉に無理をかけたときに芍薬甘草湯などを使うのだろうとふと思いました。

 TOPICS 2013.04.20 で、マラソン前のNSAIDsの使用の問題について紹介しましたが、実は芍薬甘草湯もマラソン、トライアスロン、登山などで、筋肉痙攣予防に、運動(大会)や運動(大会)中に使用されていることを、日薬学術大会分科会「公認スポーツファーマシストの役割」での講演で知りました。

 WEBで調べると、使用の実態を赤裸々に紹介するブログが多数あり、正直これでいいのかなという思いです。

レース前夜から当日にかけて飲みます
http://satolog8.blog114.fc2.com/blog-entry-1205.html

粉末タイプの芍薬甘草湯エキスを前日寝る前に1袋服用。当日朝に1袋。レース中は錠剤のコムレケアを飲む。
http://blog.livedoor.jp/kamipack/archives/54102441.html

足つり対策不足。宿にて芍薬甘草湯を飲んでいったのですが、ボトルに3包くらい溶かしておけばよかった。
http://blogs.yahoo.co.jp/poosankazubou/10367903.html

準備しながらもこまめに水分補給、そしてこのタイミングで痙攣防止の芍薬甘草湯を飲んでおきました
http://ameblo.jp/yossuwo/entry-11855268799.html

こんなアドバイスも

少量の「ピクルスジュース」や「芍薬甘草湯」などをエナジーボトルなどに入れておき、つりそうになったら飲む

足つりの予防方法や対処方法に関する情報
http://www.jitetore.jp/contents/fast/list/supplement/201205300700.html

 学術大会で話された静岡県薬の大石順子氏も苦言していたのですが、今年の東京マラソンでもロキソニンの使用が問題(大石氏は水中毒を懸念)になった他、トライアスロンの大会だと芍薬甘草湯(話では、当帰芍薬散と言っていましたがおそらく勘違い)の袋がコース上に散乱しているそうです。

 芍薬甘草湯は、確かに運動時の筋肉痙攣に即効性のある有用な薬で、ドーピング違反に該当する物質は含んでいません。しかし、こういった方法での使用(運動前・運動中の使用)は、見方によっては「運動機能の向上をもたらす=ドーピング」ということにはあたらないのでしょうか?(明確な根拠はありませんが)

 また安易な使用は、ロキソニン(NSAIDs)と同様、乱用につながり、健康リスクを抱えている人(高血圧の人、低カリウム血症の傾向のある人)にとって、害をもたらすことはないのだろうかと懸念します。

 最近のこういった風潮ともいえる、一種のコンディションづくりとしてのこれらの薬剤の使用について、スポーツ選手やスポーツ愛好家に対し、どスポーツファーマシストとしてどのように関わったらいいのか、どうアドバイスをするかたいへん悩むところです。

 ちなみに下記情報によれば、「日本サッカー協会アンチドーピング部会の見解では、芍薬甘草湯は“勧めない”」とされているそうです。(日本サッカー協会HPにはこの情報は掲載されていない。勧めないとした理由を知りたいなあ)

女性サッカーアスリートのためのヘルスコントロール
女性アスリートにとってのドーピング
(西別府病院 スポーツ医学センター スポーツ医学資料)
http://www.nbnh.jp/smc/global-image/units/upfiles/2987-1-20140630095911_b53b0b65fa0bc3.pdf#page=20

関連情報:TOPICS
2013.04.20 マラソン前の鎮痛薬の予防的使用は臓器にダメージを与える


2014年10月19日 23:05 投稿

コメントが3つあります

  1. 申し訳ありません。芍薬甘草湯と当帰芍薬散を言い間違えたようです。
    また、NSAIDSについては、2005年前後から、ボストンマラソンをはじめ大型マラソンで市民ランナーの中に低ナトリウム血症での死亡事故が起きています。脱水とは逆に、水を飲み過ぎて水中毒になり死亡しています。その実態を掌握するため、多くの調査研究が行われた結果、一つのリスクファクターとして、当日話したように、NSAIDSの使用があげられています。
    思えば、ローマオリンピックでの自転車選手のアンフェタミンによる死亡事故が今日のアンチ・ドーピング活動を促進したきっかけでした。一般市民ランナー(スポーツ選手)へのアンチ・ドーピング活動を再考べきではないかと思います。

  2. アポネット 小嶋

    わざわざコメント頂きありがとうございます。当日は興味深くお話をうかがわせて頂きました。

    ツイッターやBlog記事を見ると、マラソンなどの運動の前や運動中にNSAIDs(今はロキソニンがメインかなあ)を使用してしのいだという書き込みがたくさん出てきます。

    ボストンボンマラソンでの調査結果をみると、東京マラソンなどでも相当数の人が事前もしくはマラソン中のNSAIDsの使用しているのではないかと非常に懸念しています。

    現時点ではエビデンスはまだはっきりはしていないと思いますが、体調不良の場合には、無理をして参加しない、棄権する、安易に薬に頼らないといった呼びかけがスポーツファーマシストからできないものかと考えます。

  3. 陸連の担当者の話では、東京マラソンの市民ランナーの中には、ロキソニンを使っている選手が少なからずいるということがわかっているようです。

    その目的は、疲労軽減、とのこと。効果のほどはともかく、これはまさにドーピング行為ではないでしょうか。

    また、使用された薬により、低ナトリウム血症を誘発し、場合によっては死に至るということも考えられます。

    スポーツファーマシストがやらなければならないことはいろいろとありそうです。