論文・報告あれこれ 2011年8月

 今月のちょっと気になった論文や報告です。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。 

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ)
概要・コメント
08.19 Knowledge and attitudes about emergency contraception among pharmacist and physician preceptors in South Carolina
(Journal of Contraception August 2010 Volume 2010:1 Pages 73 – 78)
(オープンアクセス)
サウスカロライナの地域薬剤師と開業医に行われた緊急避妊薬(EC)についてのアンケートの調査結果。(回答率、薬剤師:93人、31.8% 医師:89人、35.2%) 処方したことがある医師の割合が28.1%であったのに対し、調剤(おそらく販売も含む)したことのある薬剤師は62.4%と多かった。一方で副作用などの知識不足は双方で見られた。
08.19
Moderate alcohol consumption and cognitive risk
(J. Neuropsychiatric Diseases and Treatment, 2011; vol17: pp465-484.)
(オープンアクセス)
アルコール摂取と認知機能の関係についての19か国143研究の365,000人以上のデータを分析したもの。従来から言われているように適度(男性2杯、女性1杯程度)の摂取は問題なく、認知症のリスクを23%減らすとした一方、3杯を超えると認知症や認知障害をもたらす可能性がある(有意さがない)、ビールよりワインの方が有益(ただデータは限られる)などといったこともわかったそうです。但し、古い研究やさまざまな研究が含まれるため、科学的根拠に欠ける、RCTが必要との指摘があります。
08.19 Influenza Vaccination Coverage Among Health-Care Personnel — United States, 2010–11 Influenza Season
(CDC MMWR 60(32);1073-1077)

米国疾病対策センターがインフルエンザワクチンの医療従事者の先シーズンの接種状況についてまとめたもの。サンプル調査のうち医師・歯科医師・看護師では80%超の接種率となったが、全体では63.5%に留まった。調査では接種をワクチンに対する考えや職場での接種勧奨の状況についても尋ねています。
08.19 Adherence of Pharmaceutical Advertisements in Medical Journals to FDA Guidelines and Content for Safe Prescribing
(Plos ONE Published August 17, 2011)

医学雑誌掲載の医療用医薬品の広告が米FDAのガイドラインに沿ったものになっているかどうかを調べた研究。(NEJM、JAMAなど12雑誌83製品の192の広告を検討) FDAの指針が守られていたのは15製品(18.1%)に留まった他、57.8%の広告で深刻なリスクが表記されていない、48.2%の広告では証明できる引用が欠如していたなどの結果となった。
08.16 Adverse drug reaction profile of oseltamivir in children
J Pharmacol Pharmacother. 2011 Apr;2(2):100-3.)
インドのある病院におけるオセルタミビルによる有害事象をまとめたもの。191人(2か月から11歳)中69人(36.1%)に有害事象が見られ、内訳は、嘔吐(16.2%)、下痢(12.0%)、耳疾患(8.9%)、不眠症(6.8%)などだった。神経精神系の有害事象は全体の13%未満で、不眠、めまい、頭痛などでいずれも軽度のものだった。
08.16 A randomized, double-blind, placebo-controlled study of Ten-Cha (Rubus suavissimus) on house dust mite allergic rhinitis
Auris Nasus Larynx. 2011 Oct;38(5):600-7. Epub 2011 Jan 7)
甜茶がハウスダストによる鼻アレルギー症状に影響があるかどうかを調べた国内5施設で行われたRCT。甜茶投与群で鼻水・くしゃみ・鼻づまりなどの症状の改善率が見られたものの、QOLはどちらのグループでも改善しなかった。結論では用量が少ないことも一因としていますが、本当にどこまで効果があるのかどうか、アブストラクトだけでは読み取れません。
08.11 Nicotine dependence phenotype, time to first cigarette, and risk of head and neck cancer
Cancer published online: 8 AUG 2011)Nicotine dependence phenotype and lung cancer risk
Cancer published online: 8 AUG 2011)

同じ喫煙でも、「目覚めの一服」をする喫煙者の方が健康リスクが高くなるという研究報告。
08.11 子どもが使用することのあるアクセサリーに関する調査結果
-カドミウム、鉛の溶出について(2011年)-
(独立行政法人国民生活センター 2011.08.10)

2010年3月発表の調査のフォローアップに行われた再調査。東京都、大阪府にある雑貨店、100 円ショップ、ベビー用品店、子ども服店等で販売されている子どもが身につける可能性のある金属部分を含むアクセサリー243 銘はについてテスト実施。カドミウムは検出されなかったものの、食品衛生法の「金属製のアクセサリーがん具」の方法で調べたところ、食品衛生法の対象外の10 銘柄で一定量(90μg/g)を超える溶出が認められた。内訳は、ネックレス7銘柄、イヤリング2銘柄、バッジ類1銘柄で、いずれも雑貨店等で購入したものだった。(ベビー用品店や子ども服店など、子ども用品の専門店で購入した銘柄では一定量を超える鉛の溶出はみられなかった。)
08.11 ジェネリック医薬品の使用促進に関するアンケート調査(第2回)
(健保連 2011.08.05)

ジェネリック医薬品に対する①使用促進に向けた取り組み状況、②使用促進に取り組んでいない理由、③差額通知の実施状況、④被保険者等からの意見、⑤健保連及び国に対する要望」などを尋ねたアンケート調査の結果。、健保組合の59・4%が、後発品に切り替えた場合の、医療費差額通知サービスを実施していることや、ジェネリック医薬品の普及が進まない要因として、「医療機関の対応の不足」や「ジェネリック医薬品への不安」などがあることが明らかになった。
08.05 FDA Drug Safety Communication:Use of long-term, high-dose Diflucan (fluconazole) during pregnancy may be associated with birth defects in infants
(FDA  Drug Safety and Availability 2011.08.03)
フルコナゾール(ジフルカン)を高用量(400-800 mg/day)で妊婦が使用した場合、胎児に先天性異常の可能性があるとする安全性情報。一方、膣カンジタ症で使われれる150mgの単回投与では今のところ問題ないとしている。
08.05 Economic Effects of Smoke-Free Laws on Rural and Urban Counties in Kentucky and Ohio.
Nicotine Tob Res. 2011 Jun 20. Epub ahead of print)

禁煙条例が地域の経済活動に影響を与えるかどうかを調べた研究。雇用や賃金などを比較、禁煙条例は経済活動には影響しないとしています。
08.05 Is non-prescription oseltamivir availability under strict criteria workable? A qualitative study in New Zealand.
(J Antimicrob Chemother.2011 Jan;66(1):201-4.)

ニュージーランドではインフンエンザシーズンに限って、12歳以上の大人に対し、処方せんなしでのタミフルの販売が可能ですが、この研究は、販売にあたった26人の薬剤師に対して行われたアンケート結果をまとめたもの。(詳細は見れないので残念) 多くの薬剤師は処方せんなしでのタミフルの販売に有用性を感じる一方、対応の難しさも明らかになったようです。一方で、商業的な販売増加は見られず、不適正な購入者には適切な対応されていたようです。この論文は4月行われたニュージーランドの医薬品分類の委員会でも取り上げられ、11月の委員会でこの分類の取扱いも含めて検討されるようです。
08.01 職域従業員を対象とした産業医-薬剤師協働による啓発文書の配布及び広報による高血圧管理活動
(日本衛生学雑誌.66(3)608-615,2011)
産業医と薬剤師協働による取り組みを紹介。診療所薬局では、処方薬交付時に検診結果の相談が同時にでき、企業の健康管理室と比べて相談しやすい環境にあり、効果的な血圧管理が行えるとしています。地域薬局に置き換えてもおそらく効果があることでしょう。
08.01 高齢入院患者の血清マグネシウム値への腎機能障害と酸化マグネシウム投与の影響
(老年医学会雑誌.48(3)263-270,2011)

高齢入院患者で酸化マグネシウム0.5~3gの使用が血清マグネシウムにどう影響するかを腎機能と関連させて調べた研究。eGFRの低下(特に30ml/min/1.73m2未満)は血清マグネシウムを増加させる。血清マグネシウムの定期的モニタリング(4mg/dl以上とならないように)やビコサジルやピコスルファートナトリウムの使用である程度防ぎえる。
08.01 薬物治療におけるリスクコミュニケーションのと評価の試み
(医療と社会.21(1)41-53,2011)
薬物治療のリスクコミュニケーションには、計画段階、実施段階、評価段階それぞれに課題がある。また、医療者と患者の双方向のリスクコミュニケーション方法や評価方法の検討が必要であるとしています。
08.01 医薬品に関するリスクコミュニケーション
―米国FDAリスクコミュニケーション戦略計画を中心に

(薬剤疫学、15(1)11-21、2010.)
米国における患者や医療専門職への医薬品の安全性に関する情報提供、情報の発信(=リスクコミュニケーション)の状況や考え方にについて解説したもの。米国では患者用の医薬品情報としてMedication Guides、PPI(患者用の添付文書:Patient Package Insert)と薬局が自主的に提供している説明文書(CMI:Cousumer Medication Information)があるが、過剰な情報提供やその情報の内容・様式に一貫性がないことが患者を混乱させているとの指摘を受け、「対象となる人々についての調査およびフィードバックに基づき、一つの文書のみを患者に手渡すことにより、処方薬についての有用な情報文書を確実に入手できるようにするか解決法の確立」が必要だとしている。
08.01 ACE阻害薬使用による高カリウム血症・血中カリウム上昇の関連要因の検討
(薬剤疫学、15(2)49-59、2010.)
ACE阻害薬使用症例における高カリウム血症、血中カリウム上昇に関する要因(併用薬・合併症など)を降圧薬データベースを使用して検討したネステッド・ケース・コントロール研究。腎炎・ネフローゼ、泌尿器系の疾患、利尿薬の併用などが発現との関連性が示唆された。

2011年08月19日 21:10 投稿

Comments are closed.