酸化マグネシウムのリスク分類引き上げ再検討か

 以前、緩下剤や制酸剤として広く利用されている酸化マグネシウムが、服用との因果関係が否定できない高マグネシウム血症により死亡例の報告を受けて、医薬品のリスク分類が第3類から第2類リスク分類が引き上げられる(TOPICS 2008.11.28)とお伝えしましたが、21日の日刊薬業は、この引き上げが再検討されるのではないかと伝えています。

厚労省 酸化マグネシウムのリスク区分再検討へ(日刊薬業フリーサイト4月21日)
 http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226551200417.html?pageKind=outline

 これは、去年11月に公表された厚労省の「医薬品・医療機器等安全性情報・第252号」で「重大な副作用」として発表された酸化マグネシウム投与による高マグネシウム血症の症例(→リンク)について、「調査期間中の件数や内容が正確性に欠け、一貫性や整合性が無く、しかも死亡2例とも被疑薬(酸化マグネシウム)投与と死亡との直接的な因果関係が医学的には無い可能性の強い」などとした、日本マグネシウム学会からの見解・要望書に対し、厚労省の医薬食品局安全対策課が「要望を踏まえて検討する」旨を同学会に回答を行っていたことが明らかになったためです。

日本マグネシウム学会が学会見解・要望書を厚生労働大臣に提出
  (MAG21研究会 マグネシウムってすごい! 3月26日)
 http://mag21.jugem.jp/?eid=152

 同会では既に、慢性腎不全があり、酸化マグネシウムを大量にしかも長期に渡り服用した場合には高マグネシウム血症を来たす可能性があるとしながらも、酸化マグネシウムは日本では50年以上も広く使用され年間4500万人に処方され安全性が確立され、食品添加物としても全世界で使われているにもかかわらず、今回リスク分類を第3類から第2類へ引き上げることも決定したことは科学的にも妥当な判断ではないとの見解を発表しており、今回の要望書についても関連医学会として日本内科学会、日本透析医学会等からも賛同を得ているとしています。

「便秘薬で副作用15件2人死亡」のニュース 
(MAG21研究会 マグネシウムってすごい! 2008年12月10日)
  http://mag21.jugem.jp/?eid=131
「便秘薬で副作用」のニュース −第2弾−
(MAG21研究会 マグネシウムってすごい! 2009年1月27日)
  http://mag21.jugem.jp/?eid=140

 同会では、健康な人ならば1日3g程度では何ら問題ないとの見解のようで、リスクとベネフィットを考えれば、公表はもっと慎重にすべきだったとしていますが、薬局によっては、既に高マグネシウム血症の注意喚起を行っているところもあると思います。今後は不必要な服薬指導となってしまうのでしょうか。

 個人的には、疑わしきは注意喚起というスタンスでよいと思うのですが、このMAG21研究会ブログの『マグネシウムってすごい!』というマグネシウムを賛美するような見出しやコンテンツを見ると、何ともすっきりしない思いがあります。きちんと検証して、なるべく早い見解を出してもらいたいと思います。

関連情報:TOPICS 2008.11.28 酸化マグネシウムのリスク分類を第2類へ引き上げ


2009年04月22日 09:32 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    5月8日に開催された平成21年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会で、この問題が取り上げられました。

    資料1-3[PDF: 72KB]:パブリックコメントに寄せられた酸化マグネシウムについての意見
    資料1-4[PDF:914KB]:日本マグネシウム学会からの要望書
    資料1-5[PDF:136KB]:一般用医薬品のリスク区分の変更手順について(案)
    (平成21年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会→資料 厚労省5月14日掲載)

     今回の日本マグネシウム学会からの要望書を受けて、厚労省では医薬品の使用上の注意の変更に伴うリスク区分の変更、スイッチOTC等の市販後調査の終了に伴うリスク区分の変更等の手続きにおいて、今後、諮問を行った後、医薬品等安全対策部会長の了解を得て、次のように調査審議事項の事
    前整理等を「安全対策調査会」に行わせるとした新たなルールを導入するようです。

    1)安全対策調査会の調査審議に当たり、必要に応じ、関係学会等の有識者等の出席を求め、意見を聴取し、事前整理を行い、その結果、リスク区分等の変更を行う必要があるとされた場合、厚生労働省は、変更案についてパブリックコメントを行う。

    2)厚生労働省は、医薬品等安全対策部会を開催し、安全対策調査会における事前整理の結果、パブリックコメントの結果等について調査審議を行い、指定の変更の要否について答申を得る。

  2. びっくりです!

    ”新たなルール”を逆読みすると、「今回の調査審議には有識者(関係学会?)への相談すらありませんでした。パブコメ(世間の声?)にも 耳をかたむけておりませんでした。」と「ごめんなさい」を白状しているようにしか思えません。「今回焦点となった2件の死亡例との因果関係が 限りなく白に近い灰色でした・・・」と認めているのならば、年末の忙しいときにこの対応に追われた関係者(何千人?)と、患者さんに 報道各社とマス添大臣は、頭をさげて 早く決着つけなさいと言いたい(怒)