保険薬局のオンライン請求義務化は1年間先送りへ

 厚労省は21日、レセプトのオンライン請求の義務化の先送りを盛り込んだ改正省令(案)を公表し、パブリックコメントを開始しました。これで、オンライン請求の義務化は1年間猶予されることとなります。

「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令(案)」に関する意見の募集について
 (意見・情報受付開始日 2009年4月21日 意見・情報受付締切日 4月27日)

 皆さんもご存じの通り、レセプトコンピューターですでに請求をおこなっている48,000の薬局と、ベット数400床未満の病院約5,000カ所については、この2009年4月診療分からオンライン請求が義務化されていますが、厚労省によれば、3月末の時点で対象となる約220施設の病院と約2600施設の薬局からオンライン請求の開始届がまだ出されていないそうです。

 厚労省では、「4月分からの診療報酬が支払われなくなり、特に零細な医療機関等について資金繰りの悪化、廃業という事態を引き起こし、ひいては地域医療に重大な影響を与える」として、今回の1年間先送りを決めたようです。

 パブリックコメントは通常1ヶ月程度行われるものですが、今回の案件については、5月10日の最初のオンライン請求期限までに、緊急避難的に今回の改正省令を公布・施行する必要があるとして、異例の意見募集期間の短縮となっています。

 オンライン請求は将来的には必要だとは思いますが、零細な医療機関にとってはやはり導入のためのコストは大きな負担です。医療費の効率化が図られるわけですから、オンライン請求を本当に推進したいのであれば、国や支払い基金が、導入のための費用を負担するなどの措置をとるべきだと思います。

関連情報:医療制度改革に関する情報(レセプトオンライン化に関するもの)(厚労省HP)
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02g.html

参考:
  レセプトオンライン請求1年猶予 零細病院に配慮し厚労省
   (47NEWS 4月21日 共同通信配信)
  http://www.47news.jp/CN/200904/CN2009042101000535.html
 IT Pro 4月21日
  http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090421/328837/

5月15日 リンク追加


2009年04月21日 17:09 投稿

コメントが7つあります

  1. 「国や支払い基金が、導入のための費用を負担するなどの措置をとるべきだと思います。」
      ↑
    そこまでする必要は無いのでは?
    民間企業は努力してそういう費用は捻出しています。
    事実うちの薬局でも事務員を一人正社員からパートに切り替えて捻出しました。
    それが出来ない企業は淘汰されていく運命でも仕方無いのではないかと思います。

  2. アポネット 小嶋

    やま様のご意見はよくわかります。

    しかし、面で受けている薬局など、処方せん枚数があまり多くなく、少ない調剤報酬の中でレセコンのリース料を何とか捻出しているところもまだまだ少なくないと思います。

    レセプト電算化のためのソフトが20万円から30万円(中途半端なので、リースもむずかしい)、そして、オンライン請求のためのネット環境の整備も必要です。こういった費用は処方せんの枚数の少ない薬局には大きな負担です。

    もちろんある程度の負担は必要だと思いますが、こういった薬局にもオンライン請求に参加してもらうには、やはり何らかの配慮は必要ではないでしょうか。

    関連ブログ:薬局のオンライン請求義務化先送り(薬局のオモテとウラ 4月23日、コメント) 

  3. アポネット 小嶋

    平成21年度補正予算(案)で、レセプトオンライン化への対応(自らオンライン請求を行う医療機関や薬局に必要な設備投資等の支援を行う)として291億円の予算が組み込まれています。

     平成21年度補正予算(案)[PDF:618KB](WAMNET 4月28日)

  4. アポネット 小嶋

    規制改革会議は5月7日、オンライン請求義務化1年間先送りとする厚労省の方針に対して、「早期のオンライン化促進の観点から、可能な限り速やかに猶予期限を定め、月次の進捗管理に基づき状況を逐次公表するとともに、厳格な指導監督を行うべきである。加えて、勧奨・指導に従わない病院・調剤薬局に対しては、適切にオンライン化に対応した病院・調剤薬局との間に何らかの差異を設けるとともに、猶予期限到来後については、診療報酬を支払わないとする旨も徹底すべきである。」などとした見解を発表しています。

    「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令」の改正案に対する規制改革会議の見解(規制改革会議 2009年5月7日)
    http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2009/0507/item090507_01.pdf

    規制改革会議では、4月21日付で厚労省に提出した質問状とこれに対する厚労省の回答書もあわせて発表しています。

    療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の改正案について
     (規制改革会議2009年4月21日)
    http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2009/0507/item090507_02.pdf

    厚労省の回答書
    http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2009/0507/item090507_03.pdf

    厚労省の回答書によれば、今回オンライン請求の義務化に間に合わなかった薬局については、次のような取り組みを行うとしてます。

    診療報酬請求時に、オンライン請求化の予定等に関する書面を提出させるなどの方法により、年度半ばから、期限を迎える医療機関の実態を月次で把握する。

    書類を提出しない、今後の予定が未定である等、問題のある薬局等に対しては、早い段階から、審査支払機関から勧奨を行うとともに、勧奨に応じない薬局等については、国が直接指導する。

    繰り返しの指導にかかわらず従わない薬局等については、猶予期限徒過後は報酬が支払われないことについて十分警告を発する。

    つまり、オンライン請求に従わない薬局については、今後厳しい姿勢で臨むことのようです。

  5. アポネット 小嶋

    8日、パブリックコメントの結果が発表されています。

    「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令(案)」に対して寄せられたご意見等について(結果公示 2009年5月8日)

    開業医が多いとは思いますが、「オンラインに反対、手挙げ方式にすべき」との意見が904件も寄せられ関心の高さがうかがえます。

    また、「電子媒体での請求も認めるべき」(12件)などとした意見に対し、厚労省はオンライン請求のメリットを示して理解を求めています。

    オンライン請求には、
    1.形式的エラーが事前にチェックされ、同月中にエラー修正の上、再請求が可能となり支払の早期化につながること
    2.診療翌月の5日から10日の17時以降や休日も受付が可能となるほか、エラー修正後の再請求が12日まで可能となるなど、受付時間が拡充されること
    3.電子媒体の搬送の手間や、紛失等の事故を回避でき、審査支払機関側でも受付や電子媒体内の情報を機械に読み込ませる作業が不要になるなど、医療機関や審査支払機関の事務の効率化が図られること
    4.社会保障カードが(仮称)が導入されれば、オンラインでの医療保険資格確認やレセプト等への自動転記が可能となり、医療費の過誤調整事務が軽減されるなど、事務コストが軽減できる

    また引き続きFDやMOなどの電子媒体による場合は、事務代行者を介してのオンライン請求(代行請求)の一つの形態である、代行送信を利用して請求することも認めている。

  6. アポネット 小嶋

    15日、8日に都道府県、地方厚生局宛に出された通知が掲載されています。オンラインでの請求が可能にもかかわらず、対応していない施設に対しては厳しい姿勢で臨むことが伺えます。

    「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令の施行について」(平成21年5月8日付保発第0508001号)
     
    通知:
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/info02g-12.pdf
    別添1,2:
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/info02g-13.pdf

    通知の留意事項を見ると、既に光ディスク等を用いた請求を行っている薬局については、自らオンライン請求を行うための回線敷設について具体的な予定がない場合には、特別な事情がない限り事務代行者(薬剤師会)による代行送信を利用してオンライン請求を行う必要があるとしている他、期限猶予措置の対象となった薬局(電算化処理して紙で提出している薬局)については、今後、オンライン請求化の準備状況等を書面で提出を求めるようです。(別添1.2)

    猶予期間は、一応一年間とされていますが、薬局での実態把握、設備の導入等の準備に必要な期間として、実態を見極め、半年以内を目処に実現するよう、具体的な猶予期限を設定する予定だとのことです。

  7. アポネット 小嶋

    オンライン請求を促す通知が改めて出されています。

    「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令」の施行に伴い地方厚生(支)局が行う指導に当たって当面必要な取組について」
    (平成21年6月18日付保総発第0618001号、保医発第0618002号)
     http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/info02g-17.pdf

    「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令」の施行に伴い期限猶予措置の対象となった保険医療機関等に対する勧奨等について」
    (平成21年6月18日付保総発第0618003号、保医発第0618004号)
     http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/info02g-18.pdf

    オンライン請求義務化対象の保険医療機関等が必要な準備を進められるよう、まずは支払基金及び国保連が、翌月請求時までに電話や直接訪問等による勧奨を行い、勧奨を行ってもオンライン請求に向けての準備が進まない場合には、指導権限を有する地方厚生(支)局が直接指導を行うとのことです。