特定保健指導と薬剤師

 4月から特定健診・保健指導(いわゆるメタボ検診)が開始されることは皆さんもご存知じかと思いますが、食生活や運動を指導する者(特定保健指導の実施者)として、厚生労働省は看護師、栄養士などに加えて、薬剤師を含めることがようやく決まったようです。薬事日報によれば、近日中に保険局、健康局の通知で示されるとのことです。

 今回の決定は、特定健診・保健指導に関するパブリックコメント(下記)を踏まえたもので、日薬でも「薬剤師は薬学教育で医療や健康、衛生に関する知識を修得しているが、6年制への移行によりそれがさらに手厚くなるため、指導者の条件となっている研修を受講すれば十分に対応可能である」として、薬剤師が関われるよう厚労省に要望を出していました。

意見 厚労省の考え方
食生活改善指導又は運動指導に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者として「看護師、栄養士等であって、内容が別表第1(第2)に定めるもの以上である食生活改善指導(運動指導)担当者研修を受講した者」とあるが、「等」とは具体的に何を指すか、明らかにしてほしい。 「等」については、通知で示す予定である。   

食生活の改善指導においては、歯科医師、薬剤師、助産師、准看護師、歯科衛生士を想定している。

運動指導においては、歯科医師、薬剤師、助産師、准看護師、理学療法士を想定している。

「特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準の規定に基づき厚生労働大臣が定める食生活の改善指導又は運動指導に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者」(告示案)に対して寄せられたご意見等について(公示日 2007年11月28日 意見・情報受付締切日 2007年12月27日 結果の公示日 2008年1月29日)

 薬事日報によれば、日薬は今回の決定について、「薬剤師の活動の幅が広がる」とコメントしていますが、上記にある「生活改善指導(運動指導)担当者研修」には、食生活改善指導担当者で30時間、運動指導担当者では147時間の研修が必要であり、現場の薬剤師にとってはこれら研修は大変重いものです。

 食生活の改善指導又は運動指導に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者(PDF:116KB)
   (「特定健診及び特定保健指導の実施に関する基準」に関する大臣告示)

 すでに、栄養士などはこれら研修を開始しており、出遅れの感も否めません。日薬ではどの程度関与できるかについては、今後の運用状況を踏まえて慎重に検討し、対応したいとの姿勢とのことですがが、現実的には喫煙者を対象とした、禁煙指導に限られるのではないかと思います。

 保険課通信(愛媛社会保険事務局保険課 第八号 平成19年8月)
  http://www.sia.go.jp/~ehime/hokenkatsuushin%20No8.pdf

 今回のメタボ検診については、メタボリックシンドロームの診断基準自体が疑問視されるのに、これを基に実施されるのはおかしいとする意見が根強い他、また自治体などで保健師の確保が十分でない一方で、受診率が低いとペナルティを課す仕組み(特定健診の受診率、特定保健指導の実施率、メタボリック症候群の減少率により、後期高齢者保険の拠出金をプラスマイナス10%の範囲で加算・減算。このため、保険者は拠出金を減らすため健診の受診率を上げ保健指導を強化せざるを得なくなる。)が取り入れられており、「壮大な実験ではないか」「かえって医療費が増えてしまうのではないか」とする意見も出されています。(ネットではさまざまな意見が示されていますので是非参照を)

「特定健診・特定保健指導」制度では国民の健康は守れない-
  「地域・職域丸ごと健康づくり」を進める新たな制度の立案を
  (働くもののいのちと健康を守る全国センター2007.9.8)
    http://www.inoken.gr.jp/sei-ken/070908.pdf

資料:平成20年4月より特定健康診査・特定保健指導が始まります(厚労省)
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02a.html

参考:特定保健指導に「薬剤師」も(薬事日報 HEADLINE NEWS 2月15日)
     http://www.yakuji.co.jp/entry5822.html


2008年02月16日 23:00 投稿

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