市販薬配合成分の用量を医療用と同量にしたら要指導医薬品?

5月15日、薬事審議会の要指導・一般用医薬品部会が開催され、総合感冒薬などに配合される一般用医薬品のトラネキサム酸の配合用量について、引き上げるかどうかの審議が行われました。

この部会は通常非公開なのですが、この案件は公開案件としてYoutube配信があったので、その様子のメモと感想です。(一部聞き違いがあるかもしれませんので、後日アップされる議事録でご確認下さい)

【厚労省 2026.05.15 開催】
薬事審議会 要指導・一般用医薬品部会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72788.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72903.html

(資料1)
有効成分としてトラネキサム酸を含有する既承認の一般用医薬品の用量の引き上げについて
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001697907.pdf

これまで一般用医薬品は、医療用医薬品とその使用方法が異なることから、1967年、厚生省は「医薬品の製造承認の基本方針」をとりまとめ、両者を区分して承認審査を行うことを明確にしていました。

そして、一般用医薬品は、より安全性を重視して、医療用医薬品より、有効成分の分量、用法・用量を一定程度低く抑えて承認されてきた時代がありました(この部会でも、この点の根拠は何かと指摘されていましたが、明確な回答はありませんでした)

また、医療用医薬品のスイッチ化における審査に時間がかかりすぎるとする指摘が規制改革推進会議WGからあり、2024年2月に厚生労働省・PMDA・日本OTC医薬品協会による「スイッチOTCワーキンググループ」が新設され、さまざまな検討が行われてきました。

第9回 健康・医療・介護ワーキング・グループ
(規制改革推進会議 2024.03.28)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_04medical/240328/medical09_agenda.html

スイッチOTC WGからの報告について
(要指導・一般用医薬品部会 2024.09.04)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001298435.pdf

前回のスイッチ OTC WG 報告からの進捗について
(要指導・一般用医薬品部会 2026.02.02)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001647937.pdf

今回の審議は、WGの報告を踏まえて今年4月21日に発出された通知に基づき事前評価が行われた初めてのケースで、PMDAの説明後にはさまざまな意見が寄せられています。

【厚労省】
既承認の一般用医薬品の有効成分を医療用医薬品の分量及び用法・用量まで引き上げる際の薬事手続き等について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/ippanyaku_yoryoup.html

現在、トラネキサム酸の1日と1回の最大用量は

一般用:1 日750 ㎎、1回250 ㎎
医療用:1 日2000 ㎎、1回500 ㎎

となっていますが、PMDAでは、

以上の調査結果から、一般用医薬品において、トラネキサム酸の用量を医療用医薬品と同量の1日最大用量2,000mg、1 回最大量500mg まで引き上げることは可能と判断した。ただし、用量の引き上げに際しては、腎機能が低下している人が医師等への相談なしに使用することがないよう、使用前に医師等へ相談するよう注意喚起が必要と考える。

とのまとめを提示し、議論が行われました。

用量の引き上げに対しては委員から異論は出なかったのですが、腎機能低下者への対応が求められたことから、冒頭、ある委員(誰だったかはチェックしていなかった)からの

(注意喚起が必要なら)要指導にすべき

との意見をきっかけに、さまざまな意見が噴出しました。

宮川委員(日医)
登録販売者が腎機能低下者への対応が可能なのか

川名委員
腎機能低下者への対応が必要なら、用量の上限を引き上げる場合、第3類のままでいいのか

宗林委員
(連用による腎機能低下者への配慮が必要なら)包装数の制限もセットで考えるべきでは

こういった指摘に対しPMDAは、「用量を上げるかどうかの審議は、指導・一般用医薬品部会だが、リスク区分の変更については、医薬品安全対策部会の審議事項」と回答(だったら初めから安全対策部会で検討すればいいのにと思った)、宮川委員からはリスク区分について丸投げするのはどうなのかといった不満の声も。(本審議会の立場はどうなのかとも言いたかったと思われる)

結果、この部会での最終的な了承は得られなかったようです

15日朝の日経の記事を読むと、OTC類似薬の追加負担対象品目の選定(→TOPICS 2025.12.24)において、医療用と一般用とのこの最大用量の違いが今後足かせになることから、今後、アセトアミノフェンやファモチジンなども検討の対象になるように思いますが、最大用量を引き上げで薬剤師が関与しない第2類や第3類のままでよいのかという議論は当然出てくるでしょう。

日本は旧薬事法で導入されたリスク区分について、成分ごとの医療用での安全性のみ着目して今の区分が決められていますが、海外では1回服用量とパッケージごとの最大包装数でも制限が設けられています。

例えばアセトアミノフェンについて、小包装のものは一般商店でも買える一方、1回最大量が多いものは薬局専用、包装単位が多いものは薬剤師専用医薬品、そらにそれを超えるものは処方箋医薬品など、生活者が使う場合の連用といった潜在的リスクが配慮されています。

日本もアセトアミノフェンとか総合感冒薬とかは、単に販売時の濫用対策ではなく、連用による潜在的なリスクを考えて、大包装品についてはリスク区分を引き上げるといった考え方も必要だと思っています。

今後、用量を引き上げた場合のリスク区分は安全対策部会での検討になるようですが、医療用での使用実績を重視してきた経緯を考えるとまた議論がややこしくなるような気がします。(最近では、イラクナのリスク区分の引き下げが当初第2類だったのが、委員の一声で指定第2類に変更になったということも)

今回の件についてXに投稿したところ、さまざまな声を頂いています

  • 腎機能云々言うなら、もう医薬品は100%医師の管理下で販売すれば良い。医師会もそれを望んでいるのだろう
    薬剤師は独立した免許と思われていない
    現場に任せれば「薬剤師ウザっ」と言う消費者対応で皆消耗する
  • 薬剤師界隈で薬局薬剤師の需要が上がると同時に、仕事量も増え、薬剤師の質の良し悪しが議論され、薬局におけるOTC販売に力を入れたカリキュラムや薬局経営が始まるところまでは見えた
  • この話とロキソニンのリスク区分緩和の話が同時に流れてくる2026
  • 市販用量拡大版は「薬剤師のみ」取り扱いって、もう市販販売薬剤師は減らし始められてるがな・・・
  • なんなら零売
    依存性のある成分のある商品を販売中止で

私も薬剤師の関与が必要ということになると、今の日本の医療文化を考えると、市販薬を買うより、医者にいって(OTC類似薬を)処方してもらおうということになりかねないと思います。

こういった複雑な手続きをすすめれば、結論が遅れるだけです。ですので、私も一定の条件の下で零売も選択肢が必要ではないかと思います。

関連情報:TOPICS
2025.12.24 追加料金の対象となるOTC類似薬77品目は?
2025.04.19 零売をめぐるこれまでの経緯とこれからの展望と私見


2026年05月16日 13:18 投稿

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