ED治療薬のスイッチOTC化に向けての議論(評価検討会議・速報)

25日、医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議が開催され、緊急避妊薬のスイッチOTC化に向けての議論が行われました。

第32回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議
(厚労省 2025.05.23開催)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58149.html

今回の検討会では、去年11月におこなわれたパブリックコメントを受けて、スイッチOTC化の成分としてのED治療薬のタダラフィルについて、その妥当性について検討されました。

タダラフィルのスイッチ化の妥当性について、関係医学会・医会・業界見解は次のとおりでした。

スイッチOTC医薬品の候補成分に関する見解
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001492239.pdf

日本泌尿器学会:賛成
日本臨床泌尿器学会:賛成
日本性機能学会:賛成
日本臨床内科医会:反対
日本OTC医薬品協会:賛成

専門の学会ではおおむね賛成の意見で、その理由として

  • 15年以上の使用経験があり、重篤な副作用を経験することはまれ
  • EDは自覚症状で薬剤の適応が判断され、また治療効果が判断できる点においてOTCには適している
  • 心理的要因や経済的な理由により、医療機関を受診せずにインターネットの個人輸入により入手する患者さんが多く存在するが、この多くに偽造医薬品があり、健康被害が懸念
  • EDは満足な性交渉ができないことにより、男性の自尊心の体か、不妊の原因、夫婦・パートナー間の関係の良好な関係を損なう
  • ED患者の掘り起こしに寄与すると考えらえると同時に、千愛的な生活習慣病を早期に治療介入することができる

一方で課題として

  • 心血管系の併存疾患を有していることが少なくなく、併存症や併用薬の確認などが必要
  • 大手問屋を投資手の流通は横流しや非正規流通へ流れる危険があるので、直販ルートが望ましい

などが挙がりました。

ついで、エスエス製薬がプレゼンを行いました(最初に社長が挨拶、のち担当者)

スイッチOTC医薬品の候補成分
ED治療薬 タダラフィル
~EDに悩む多くの方々に品質の確かなED治療薬を届けたい~
(エスエス製薬)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001492511.pdf

同社は、懸念されている心血管系(CV)イベントのリスクについて、「 タダラフィル自体がCVイベントの直接的な原因であることを示唆する報告は認められていない」として、適正使用で安全使使用できると説明しました。

そして、海外の経験などを踏まえ、

  • ED未治療者が治療のきっかけを持つことができる
  • 生活者のEDに対する理解の向上
  • 受診の促進及び併存疾患への早期介入

といったベネフィット説明、スイッチ化された場合の適正使用ガイド案を示しました。

さらに、企業側参考人として、循環器内科学分野の教授がプレゼンを行い、

  • 適正使用により、心血管リスクを上昇させることはない
  • 問診表により動脈硬化性疾患の早期発見につながる

として、OTC化には問題はないとしました

PDE5阻害薬は安全に服用できるのか?
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001492242.pdf

議論では、医師会の宮川構成員より、「薬局は受診勧奨ができていない。薬剤師が本当に実力を持っているのか考えながら、販売の仕組みを作って欲しい」と苦言が出されました。

また、参考人から個人輸入やあやしげなEDクリニックの実態などもあらわになりました。(医政局よ見て見ぬふりをするなよ)

OTC医薬品協会の磯部構成員からは、「怪しげなオンライン診療に飛び込んでいる状況がある。正規なものを適正販売をして、医療につなぐことが新たなOTCの役割」との意見が示されました。

一方女性の構成員からは、転売リスクについての懸念を指摘、これに対して、メーカーは、「適正価格で適正量を供給します。そうすれば、転売マーケットが形成しなくなります。弊社は直販しているので把握できます」と答えました。(ちょっと待てよ、アライやアレグラFXプレミアムの二の舞になるじゃん)

また、別の女性の構成員からは健康な人に使うという考えはおかしいという意見も出されました。(でも生活改善薬ってそういうものじゃないの?)

パブリックコメントの結果も公表されました。

候補成分のスイッチ OTC 化に関する御意見募集にて寄せられた課題等
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001492243.pdf

パブコメには516件の意見(481番が私の意見)が寄せられましたが、性犯罪の助長や悪用や乱用、緊急避妊薬のスイッチが遅れていることをひきあいに反対意見が多数寄せられています。(ちょっと怖い)

新スキームでは、これで意見を取りまとめることとなるのですが、座長がとりまとめの意見をのべようとしたところ、女性の構成員から、「緊急避妊薬と同じように時間をかけるべき」とした反対の意見が出されました。

しかし、座長は新スキームに沿って、議論を終了させました。(再度のパブコメもたぶん実施しない。新スキームなのでこれでいいと思う)

おそらく、エスエス製薬がもうスイッチ化の準備をすすめていると思いました。

これで製造販売申請に弾みがつくと思いますが、直販とすることにより、多くの店舗が果たして取り扱ことがができるのか不安に思いました。(アライやアレグラFXプレミアムの前例がある)

個人的に、後味が悪かったのが、女性の構成員がもっと議論に時間をかけるべきと抵抗したことです。

緊急避妊薬は時間をかけているのに、ED治療薬はなぜこんなに簡単にすますのかというのがその理由のようです。

しかし、緊急避妊薬の議論に時間が費やされたのは、あなた方女性の構成員の方々が、女性の当事者に立たずに議論を先延ばしにしてきたからではないでしょうか?

パブコメの異常ともいえる反対意見もそうですが、感情的なものはしっかり分けて考える、そして構成員の構成も、当事者たる年齢層に合わせた構成員の選出をすべきだと思います。

ちなみにED治療薬のスイッチ状況については、当局が審議の末に認めていない国もありますが、タダラフィルについては、 ポーランド(2022)、英国(2023)、アイルランド(2023)、ノルウェー で、また、シルデナフィルは、 ポーランド(2016)、英国(2018)、ノルウェー(2019)、スイス(2020)、アイルランド(2021)、マルタ、ニュージーランド(トレーニングプログラムを完了した薬剤師が供給、2014)で処方箋なしで販売が可能となっています。

メーカーによるプレゼンも行われ、これまでの検討会の中で一番、生活者に近い立場での話が行われたように思います。生活者視点での意見や課題が出され、ようやくスイッチ促進の為のあるべき議論が行われるようになったと思います。

一方で、スイッチ化には販売のための資材づくりなど、大きな負担がかかることから、メーカーはやはり、採算を天秤にかけることになるでしょう。

そして我々も、調剤傾注ではなく、新たな薬局サービスという視点で、こういた生活改善薬の販売にも関心を持つことが必要でしょう。

関連情報:TOPICS
2025.05.19 EDの管理とセルフケアにおける薬剤師の役割(FIP)
2025.04.23 プライマリケアにおける薬剤師の役割を拡大するための医薬品の分類(豪・NZ
2025.04.22 シルデナフィルのOTC化は今回も認めず(独・専門委)
2017.11.29 バイアグラの処方箋なしでの購入が可能に(英国)
2014.10.17 シルデナフィルが処方せんなしで購入可能に(NZ)


2025年05月24日 00:43 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    関連記事

    【厚労省検討会議】シアリスOTC化一部反対‐泌尿器科学会などは賛同
    (薬事日報 2025.05.28)
    https://www.m3.com/news/general/1275567
    https://www.yakuji.co.jp/entry118420.html

  2. アポネット 小嶋

    上記記事のとおり、宗林構成員が、「正常な性行為以外での乱用の危険性はないのか。オーバードーズや性犯罪につながる懸念もある」と発言していましたが、何を根拠にこれを言い出したのでしょうか?

    パブコメの際の、スイッチ OTC 医薬品の候補成分の成分情報等シート(p13)でも、「タダラフィルは、催淫剤又は性欲増進剤ではなく、習慣性や依存性は報告されていない」と書かれているのに
    https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000282992

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