2024年2月1日時点で、処方箋なしで薬剤師が販売できるよう法的に分類された医薬品を特定し、ニュージーランドとオーストラリア両国間で比較したうえで、プライマリ・ケアにおける薬剤師の役割を拡大するために医薬品の分類をどのように利用できるかについて考察した。(2024.12.22にXに投稿したものを再構成しました)
【J Prim Health Care. 2024 Dec;16(4):372-381】
Contribution of the community pharmacist workforce to primary care through the lens of medicines classification: comparison of Aotearoa New Zealand and Australia
https://publish.csiro.au/hc/Fulltext/HC24050
研究では始めに薬剤師のみが処方箋なしで供給できると全国的に分類されている医薬品について、ニュージーランドとオーストラリアの主な違いについて概説
薬剤師による供給を可能にするために再分類された医薬品のほとんどは、感染症(インフルエンザ、covid-19)、気管支痙攣、緊急避妊など、治療へのタイムリーなアクセスが有益な疾患に対するものである
この研究で例示された医薬品
サルブタモール吸入
NZ:処方箋医薬品
豪:要薬剤師薬(使用歴がある人、施設での応急処置)
テルブタリン吸入
NZ:処方箋医薬品
豪:要薬剤師薬
トリメトプリム、ニトロフラントイン
NZ:処方箋医薬品だが、UTI治療トレーニングを終了した薬剤師は可
豪:処方箋医薬品だが、一部の州で訓練を受けた薬剤師による(試験)販売が可
セファレキシン
NZ:処方箋医薬品
豪:処方箋医薬品だが、一部の州で単純性UTI治療として供給が可
オセルタミビル
NZ:要薬剤師薬(成人および13歳以上の小児のインフルエンザの治療または予防)
豪:処方箋医薬品(再分類が検討されたが却下)
モルヌピラビル、ニルマトレルビルおよびリトナビル(パキロビッド)
NZ:要薬剤師薬
豪:処方箋医薬品
レボノルゲストレル
NZ:要薬剤師薬
豪:要薬剤師薬
ウリプリスタル
NZ:処方箋医薬品(2017年に再分類が検討されたが却下)
豪:要薬剤師薬
経口避妊薬
NZ:処方箋医薬品だが、研修などの要件を満たせば販売可
豪:処方箋医薬品だが、一部の州で試験販売が開始
シルデナフィルとその構造類似体
NZ:処方箋医薬品だが、研修などの要件を満たせば販売可
豪:処方箋医薬品(2018年に再分類が検討されたが却下)
NZでは、2023年の冬に、救急部門のキャパシティと主要な病院でのプレッシャーに基づき、特定の優先地域で試験的に資金を提供した軽症患者サービスが実施された。
カナダでは、すべての州で軽症患者に対する薬剤師の処方が実施されており、タイムリーで費用対効果の高い医療への患者のアクセスを改善したというエビデンスがある。
全体として、医薬品の再分類による臨床的・経済的転帰に関する発表文献は限られているが、入手可能なものは安全性と有効性の点で有望である。
NZにおける抗ウイルス薬の再分類によって可能になったCOVID-19抗ウイルス薬サービスに組み込まれた重要な要件は、より広いプライマリケアチームとのコミュニケーションと統合であった。
プライマリ・ケアにおける薬剤師労働力の拡大利用を可能にするために、医薬品の再分類以外のアプローチが様々な法域で用いられている。
NZの地域薬局の抗凝固剤管理と痛風管理サービスでは、薬剤師がそれぞれ処方されたワーファリンとアロプリノールのモニタリングと用量調整を行っている。
NZでは、増大するプライマリケアの需要を満たすために薬剤師の貢献を可能にするために医薬品の分類を活用する傾向が続いていることが示され、豪州では州レベルの代替的な法的取り決めが出現していることを明らかにしている。
豪州のいくつかの州では、地域薬剤師による尿路感染症と経口避妊薬の再供給について、国レベルの再分類以外の方法を用いたパイロットまたは試験が進行中である。
また、豪クイーンズランド州では、地域薬剤師の業務範囲を大幅に拡大するための試行が始まっている。
NZでは医療制度全体の基盤となる構造が2022年に改革たが、その影響はまだ明らかにされていない。
ちなみにNZでは現在、アロプリノールの分類変更が検討されていて、すでに提案の会議が開催、分類の可否が明らかになる議事録の公開を待っているところです。
合理的な考え方だよな
ニュージランド当局は、2025年2月26日に開催される医薬品分類委員会で、アロプリノールの分類変更を提案すると発表
【MEDSAFE 2024.11.18】
Agenda for the 73rd meeting of the Medicines Classification Committee to be held on 26 February 2025.https://t.co/VSJIDWSqZD…— 小嶋 慎二@community pharmacist (@kojima_aponet) November 22, 2024
豪ビクトリア州で行われているコミュニティ薬剤師の役割拡大に向けての試行サービス
帯状疱疹の治療
軽度の尋常性乾癬の再発の治療
処方箋なしでの特定の経口避妊薬の再供給
単純性尿路感染症の治療Victorian Community Pharmacist Statewide Pilothttps://t.co/sa7CuYXk59
— 小嶋 慎二@community pharmacist (@kojima_aponet) March 29, 2025
関連情報:TOPICS
2025.04.20 避妊薬と尿路感染症の治療が薬局で直接受けられるよう資金投入(豪州)
2025年04月23日 00:51 投稿