連携薬局は現場や患者さんにとって本当にニーズがあるものなのか?(2024厚生労働科学研究)

前回の薬機法改正で鳴り物入りで制度化された、地域連携薬局・専門医療連携薬局ですが、制度化の意義に疑問を投げかける調査結果が明らかになっています。

【2024厚生労働科学研究】
地域連携薬局・専門医療機関連携薬局が地域で果たすべき機能に関する調査研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/177586

この調査は研究は、全ての地域連携薬局(1085件、回収率26.5%)、専門医療連携薬局(60件、回収率33.7%)と、ランダム抽出した地域連携薬局ではない薬局(42件、回収率9.3%)、地域連携薬局の利用者(118名)への調査結果を解析。

調査項目も多岐にわたるかなり踏み込んだ調査内容で、制度設計に対するさまざまな意見が寄せられ、多くの課題が明らかになっています

研究者らの総括によれば次のような点が明らかになったとしています

  • 地域連携薬局では地域において利用者に対する認定要件に含まれるサービスは提供できているものの、利用者におけるサービス内容の認知度は十分でなかった。
  • 地域連携薬局の認定前後における近隣の医療機関や地域住民の反応、薬剤師の業務変化、認定を取得していない薬局との違いなどについて質問したが、大半の薬局でこれらの変化を感じてはおらず、地域連携薬局になったことで業務などが好転したという意見はほとんどなかった。また、地域連携薬局の機能を利用者からあまり理解してもらえていないとの回答が多かった。
  • 一方、利用者の回答からは認定薬局だからとの理由で当該薬局を利用しているとの反応は少なく、連携薬局の認定(機能の充実)が利用者の薬局選択に影響していなかった。
  • 地域連携薬局のイメージは「信頼できる」、「病気や健康維持のことなどについて相談しやすい」などの地域連携薬局の特徴をある程度反映した項目も高い値を示したが、特別なイメージがないとの回答も多く、認知度の低さが反映していると思われる。
  • 利用者の回答では、地域連携薬局の内容まで知っているという利用者であっても具体的な内容の理解度は十分でなかった。
  • 専門医療機関連携薬局でも地域で利用者に対する認定要件に含まれるサービスは提供できているものの、サービス内容の認知度は十分でなかった。
  • 地域連携薬局や門医療機関連携薬局のいずれについて、認定要件に基づくサービスは提供できているものの、利用者の認知度は低く、認定が薬局選びに影響していない。
  • 薬局側でも認定による業務の変化やメリットを感じていない場合が多く、利用者もその機能を十分に理解していない。

自由記載の個別の意見では、ビジョンや制度のあり方について疑問や辛辣な声も寄せられています

  • あるべき姿や将来のビジョンがわからないためより良い取り組みやルールの案が出ませんでした。
  • 認定にあたりクリアする条件は多々あるが、それが利用者の求めているものか疑問に思うものもある。利用者のニーズをより組み込んだ制度にするのがよいと考えます。
  • これを取得しても特にメリットはなく、むしろ報告義務などただ業務が増えただけのように思う。
  • 地域支援体制と重複する箇所が多く、差別化するためにも、地域連携薬局制度の見直しなど必要と感じている
  • 所属する薬剤師に特定の認定薬剤師を配置する。例えばプライマリ・ケア認定薬剤師などである。
  • インセンティブが全く発生しないので実質名称にしか価値がない。必要条件を認定してもらいフィーが発生する形が望ましい。患者側からは地域支援体制加算と何が違うのか把握されていないと思います。
  • 名前ばかりで特に患者から認知もされていない印象。違いが理解されていないから実態が薄い。
  • 件数実績に縛られる色が強すぎる。地域支援体制加算のように年間の受付件数あたりの実績にするべき。
  • 地域によって決まった薬局しか会議に参加できない等があり、参加が難しい状況のため、他に代わるルールがあると良いと感じる。
  • 大手調剤は専属部署があるため、実施していなくても作文製作は得意。また資金力があるため設備投資も容易。果して大手調剤に地域連携薬局のタイトルを提供して良いものなのか。

研究者らは、薬剤師の知識やコミュニケーション力の向上とか、薬剤師会などの組織による認知活動を高めるといった提言を行っていますが、制度部会や検討会の一部の委員の人たちの考えだけで決められた制度が、いかに現場や生活者・患者のニーズにあったものではなかったことが明らかになったと私は考えています。

現場からは、まずは質の向上を求める意見も寄せられていますが、実態として理想とする医療連携の中で本当に機能していくのかどうか、即ちこの際、連携薬局の制度が本当に必要なのかどうかの検討も必要ではないでしょうか。

個人的には、薬剤師というリソースを医療の中で有効活用したいと考えるのであれば、連携薬局の制度自体をいったん止めて、改めて注力することは何かを考えるべきだと考えています。


2025年07月29日 11:38 投稿

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