豪業界団体 Pharmacy Guild of Australia は、“Towards 2035”と題する、地域薬局を通じてより健康的なコミュニティを築くための10年間のロードマップを発表しています
【Pharmacy Guild of Australia 2025.08.05】
Guild plan puts community pharmacy at the forefront of primary healthcare
https://www.guild.org.au/news-events/news/2025/guild-plan-puts-community-pharmacy-at-the-forefront-of-primary-healthcare
Towards 2035~Creating Healthier Communities
https://www.guild.org.au/towards-2035
この“Towards 2035”は、パンデミックの教訓、人材不足の課題、患者と政策決定者の高まる期待に対する大胆かつ現実的な対応としての明確なビジョンを提示したもので、策定にあたっては、1,100件を超えるアンケート、対面イベントでの400人のワークショップ参加者(患者)の声、さらに現場や業界関係者など、幅広い意見を反映したものになっています。
~2035年に向けて準備が整いました
これは Guild の plan だけではなく、次の10年に向けてのあなた自身の職業のビジョンついての plan でもあります。
オーストラリアでは高齢化に伴う医療制度の制度の必要性がさらに高まっています。
オーストラリアのあらゆる地域薬局と薬剤師は、地域社会への貢献をさらに高める大きなチャンスです
Towards 2035 launch
“Towards 2035”では患者だけでなく、メンバーに対しての支援など、コミュニティ薬局の目標、ビジョン、ミッションが示され、次の4つの重点分野を掲げています
- Patient Services and Innovation(患者サービスとイノベーション)
~アクセス可能で革新的なケアを通じて患者を最優先に - Member Services, Value, and Engagement(会員サービス、価値とエンゲージメント)
~変化する医療環境で会員が活躍できるよう支援 - Advocacy and Partnerships Strategy(提言とパートナーシップ)
~薬局をオーストラリアの医療システムの柱として推進 - A Thriving Community Pharmacy Network(活気あるコミュニティ薬局ネットワーク)
~持続可能で均一かつ強靱なコミュニティ薬局セクターの構築
豪州では、2025年に薬剤師が一般的な疾患の診断、評価、および処方を行う能力を備えるための処方訓練プログラムが開始されているとのことで、 Doctor of Pharmacy”(薬剤師博士号?)というものも設けられているようです。
これを受けて報告書では、2035年までに、地域薬局の80%が業務範囲の拡大を実現し、地域薬剤師の80%が処方権限を取得することを目指すとした大胆な目標も掲げています(報告書24ページ)
“Community Pharmacists’ Journey to being Qualified Prescribers”
地域薬剤師の資格を持つ処方者になるまでの道のり(処方権取得への道のり)
薬剤師を処方権を有する医療従事者として養成することは、地域薬局を現代的でアクセスしやすいプライマリヘルスケアの礎に変える上で重要なステップです。
私たちの戦略的ビジョンには、2035年までにオーストラリアの地域薬剤師の80%が処方権を有する薬剤師として資格を取得するという大胆な目標が含まれています。
これは、質の高い専門家へのタイムリーなアクセスを強化することで、より健康的なコミュニティを創造するという私たちの目的の中核を成すものです。
今後数年間で、処方資格は登録可能な基本学位に組み込まれ、すべての新卒者が安全かつ効果的に処方する臨床能力を備えて職業に就くことが保証されます。
これにより、学校卒業生やキャリア変更を検討する個人を含む、新たな薬剤師の入学が促進されます。
Guild は、地域薬局が現代の家族生活、多様性、そしてキャリアの流動性を支援する柔軟で包摂的な専門職となることを望んでいます。
処方資格の道筋は、薬剤師が自律的に働き、患者とのより深い臨床関係を築き、その能力を最大限に発揮する機会を提供します。
重要なのは、地域薬局が新卒薬剤師にっとって好ましい臨床の現場としての位置付けを確立することです。
さらに、新たに認定された“ Doctor of Pharmacy”は、理学療法士や歯科医師といった類似の専門職と肩を並べる薬剤師の地位向上につながります。
国際的な相互承認を可能にし、卒業生が海外で経験を積み、 帰国後、高度なスキルを活かしてオーストラリアの医療システム強化につながります。
最終的に、薬剤師を処方権限者として養成することは、患者を第一に考え、職業の将来性を確保し、オーストラリアのコミュニティにより良いケアを提供することにつながります。
豪州に限らず、これからの地域薬局・薬剤師は、ファーストアクセスの場を提供し、プライマリヘルスケアの担い手としての活躍がより求められていると思います。
また、NHSの“10 Year Health Plan”(→TOPICS 2025.07.08)もそうですが、こういったロードマップは、提供する側の一部の人の考えだけでなく、多くの現場の声や、患者・生活者の声も反映したものにする必要があるのではないかと改めて感じました。
関連情報:TOPICS
2025.07.08 国営医療サービス(NHS)に関する10カ年計画における地域薬局の役割(英国)
2025年08月06日 11:59 投稿