ライフガード・ファーマシー(Lifeguard Pharmacy)とは(英国)

海外では、自殺とDomestic Abuseの予防という2つの主要な公衆衛生上の優先事項における地域薬局の役割が認識され始めている。

英国では、自殺念慮またはDomestic Abuse を経験した人やサポート組織、薬剤師によるインタビュー、ワークショップを通じて、「ライフガード・ファーマシー(Lifeguard Pharmacy)」という新しいサービスが共同で開発された。

World Suicide Prevention Day 2023: the Lifeguard Pharmacy study
(BMC Blog Network 2023.09.11)
https://blogs.biomedcentral.com/on-medicine/2023/09/11/world-suicide-prevention-day-2023-the-lifeguard-pharmacy-study-isrctn/

Lifeguard Pharmacy は、lifeguard しての訓練を受けた地域薬局のスタッフ(薬剤師、技術者、カウンタースタッフ、調剤スタッフを含む)によって提供される。

スタッフは、「cue card」というカードを提示する顧客から声をかけられたり、苦痛を感じている顧客を積極的に見守ったりする。

自殺念慮やdomestic abuseを経験している成人には、相談室での個人的な相談が提供される。

ライフガードの相談には、最初のアセスメントとトリアージが含まれる。

その結果、トリアージ評価に応じて、支援的な道案内、紹介の促進、緊急対応などが行われる。

ライフガードには、心理療法士とのオプションセッションやバディ制度など、包括的なサポートが用意されている。

サービス開始後、Lifeguard Pharmacy taisuru 対する一般の認識や、サービスの妥当性に関する一般市民の意見をまとめた研究が行われている

A mixed-methods cross-sectional study to evaluate the public acceptability of a novel pharmacy-based
response service for domestic abuse and/or suicidal ideation
Res Social Adm Pharm. 2024 Jul 18)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1551741124002055

研究者らは、

  • 薬局は大半の住民にとって近い存在であり、都合に合わせて訪問できること、中立的な環境であり、フレンドリーで協力的な医療訓練を受けたスタッフがいることから、利用しやすいと認識されている。
  • このようなサービスを提供するには、スタッフの適切なトレーニング、十分な人員配置、慎重さと守秘義務が必要である。
  • サービスに非医学的な名前を使用することで慎重さと中立性が得られるが、その名前の知名度を上げるには、慎重に広範囲なマーケティングが必要となる。
  • 調査結果は、特定の基準を満たす薬局のみが対応サービスを提供できるよう認定される段階的アプローチを支持する。
  • さらに、より多様で幅広い人口層での受容性を評価するには、より広範な調査が必要である。

などとした

これらを踏まえ、新たにどのような具体的なサービスが必要かという検討が行われ、36名でサービス コンポーネントを共同開発が開発されている

Lifeguard Pharmacy: the co-development of a new community pharmacy response service for people in danger from domestic abuse or suicidal ideation
Int J Pharm Pract. 2024 Sep 4)
https://academic.oup.com/ijpp/article/32/6/452/7749555

慎重かつ人間中心のこのサービスの性質は、自殺念慮やdomestic abuseを経験している人々がよりタイムリーかつ個別に支援を求めることを促進する可能性があることを研究結果は示唆しています」と著者らは結論付けた。

2つの論文を見て、感じたことは、これもファーストアクセス機能ではないかと。

高齢者を地域包括支援センターにつなげるのと同様に、地域薬局が社会的に困難を抱える人たちを必要な所につなげるという役割の認識が世界的に広がってきているのだと思う。

こういった役割は高齢者のくすりの問題と違って、フィーにつながらないことだし、日本ではあまり関心がないのかもしれないが、海外では地域薬剤師に既に、basic suicide awareness や domestic abuse awareness のトレーニングをしっかり行っている国もあるという。

調剤の深化や物販の拡大もいいが、こういった身近に相談できる、つなげてもらえることで、地域薬局の存在意義が海外では国民に認知されているのかもしれない。

地域包括ケアシステムで、薬局ができることは何かを改めて考えた方がいいかもしれないと思った。

(この記事はXに2024.09.07、2024.08.15に投稿した記事を再構成しました)

参考:
Community Pharmacist-Led Intervention for Victims of Domestic Abuse, Suicidal Ideation
(Drug Topics 2024.09.06)
https://www.drugtopics.com/view/community-pharmacist-led-intervention-for-victims-of-domestic-abuse-suicidal-ideation

関連情報:TOPICS
  2025.04.30 地域薬局はDV被害者の相談場所(欧州)


2025年05月01日 00:50 投稿

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>