国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究(2024厚生労働科学研究)

個人輸入が濫用等のおそれのある医薬品の入手ルートになる可能性を踏まえ、インターネットを介して国際流通する医薬品の実態や国際的規制の動向を明らかにするため、2023-25年の3年をかけて行われている研究です。

【2024厚生労働科学研究】
国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/177706

2024年度は

  1. 医薬品等の個人輸入代行に係るドイツと英国について規制状況を調査
  2. 2024年度中に論文として報告された偽造医薬品による健康被害事例についての文献調査
  3. インターネットを介して個人輸入される医薬品の実態調査(フォシーガ錠、デキストロメトルファン製剤、ジフェンヒドラミン製剤など)
  4. 偽造医薬品を取り扱う個人輸入代行サイトの推定

などについて検討を行っています。

(分担研究)
偽造医薬品による健康被害に関する調査
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202424028A-buntan2_0.pdf

2024年3月~2025年3月の間にPubMedに掲載された偽造医薬品の記載されている論文58件を検討

  • 58件論文中4件で健康被害が記述(米国の麻薬関連など)
  • 58件論文中7件が低品質医薬品に言及、偽造医薬品と低品質医薬問題が密接に関連
  • 美容やダイエット目的の医療用注射製品の偽造セマグルチドと偽造ボツリヌストキシンも含まれていた
  • 発展途上国では、偽造咳止めシロップの原料が問題となっていた

(分担研究)
医薬品等の個人輸入代行に係る規制状況調査-ドイツと英国-
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202424028A-buntan1_0.pdf

ドイツでは、承認または登録されていない医薬品は、個人輸入も含め、原則として輸入禁止。医薬品の個人輸入は、承認を得た薬局が注文し受け取る場合に限り認められる。英国では、医薬品の輸入は製造業者免許または卸売業者登録を有する者にのみ認められるが、個人が自分または世帯員のために、医薬品を輸入することは可能。

(分担研究)
デキストロメトルファン及びジフェンヒドラミンの試売調査
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202424028A-buntan4_0.pdf

ほとんどのサンプルが、国内の薬局やドラッグストアで同一成分の OTC医品を購入するより安価であり、身分証明などの手続きを必要とせず容易に入手することが可能であった。また、製剤を一度に 1-2ヶ月相当量を容易に入手できることが明らかになった。

オーバードーズ抑止に向けて、医薬品個人輸入に対する規制強化も国内の販売規制と並行して必要であるとした。

(分担研究)
リベルサス錠の試売調査
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202424028A-buntan5_1.pdf

今回入手したリベルサス錠は、すべて真正品であることが確認されたが、入手したリベルサス錠3mgの 1錠当たりの平均価格は、1007.7円/錠で、本邦薬価の7.2倍に相当する額だった。

添付文書や包装箱の表記は日本語ではなく英語表記であったため、正しい情報が日本の消費者に伝えられずに不適正使用や予期せぬ有害事象を招く恐れがあると考えられる。

研究者らは世界的には偽造医薬品の出現が報告されていることから、販売者に対する監視・指導に加え、国民に対する情報提供や実効性のある注意喚起の必要性が示されたとしています。


2025年06月17日 16:50 投稿

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