自治体の医療介護突合データを用いた訪問薬剤管理についての検討(厚生労働科学研究)

茨城県つくば市の国保・後期高齢者医療制度の医療・介護保険レセプトデータを用いて、て在宅における訪問薬剤管理指導等を受けている患者の人数、特徴、薬局の実態およびこれらの経時的推移を記述することを目的に行われた研究です。(2024.06.05に投稿したものを記事化しました)

【2023厚生労働科学研究】
地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築のための研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/170610

(総括研究報告書)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202321027A-sokatsu_0.pdf

(分担研究)
自治体の医療介護突合データを用いた訪問薬剤管理についての検討
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202321027A-buntan6.pdf

訪問薬剤管理指導に関しては、認知症の周辺症状に対しての見守り・介助に費やす時間を多く必要とする者で特に需要が高い可能性、「口腔・栄養・リハビリの一体的提供」に対しては要介護度が重度である居宅療養者において需要が高い可能性が示唆され、患者家族のニーズに応じて適切なサービスを提供できるよう留意するべきと考えられた。なお、訪問薬剤管理の算定を届け出ている薬局の数のうち実際に応需している薬局数は48.3–63.2%であり、乖離の原因については今後さらに検討する必要性が示唆された。

訪問薬剤管理指導等を行っている薬局の中で行えていない業務として無菌調整(主に設備的問題による)、夜間・休日対応/往診同行/退院時カンファレンス参加/居宅介護サービス担当者会議への参加(人員不足による)などを挙げており、これらの要因が間接的に訪問薬剤管理指導等を実施することそのものの障壁となっている可能性はあるが、他に薬局ごとの薬剤師の経験や知識、薬局ごとの他施設からの認知度の問題なども関連している可能性があると考える。

訪問薬剤管理指導等を受けていた患者を項目別にみると麻薬(持続注射療法を含む)の調剤・無菌製剤(TPN 輸液を含む)の調剤と訪問薬剤管理指導を受けた患者数が少なく、これらを行う薬局を計画・整備する場合やこれらを行う薬局の数を指標として利用する場合には二次医療圏よりも広域での検討を行う必要がある可能性があるが、2019 年度以降の患者数等の推移を踏まえながら判断する必要があると考える。

訪問診療・訪問看護・訪問介護・施設ケア等の量的質的な充実に関わらずこれら医療介護サービスへのアクセスに至らない事例であっても患者の自宅での生活を維持する手段として訪問薬剤が機能する場合があることが示唆された。

有料老人ホームやグループホームの入居者へ訪問薬剤管理指導等が行われることで重複内服の予防やアドヒアランスの向上など患者への直接的な効果のみならずヘルパー等の介護者への知識・技術の支援が齎されており、このことが施設からの訪問薬剤の需要の高さの一因となっていると考えられる。


2025年10月12日 12:41 投稿

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