ほとんどの副鼻腔炎に抗生剤は不要(米国感染症学会GL)

 米国感染症学会(IDSA:Infectious Diseases Society of America)は20日、毎年7人に1人がかかることがある副鼻腔炎について、原因の90~98%はウイルス起因のものだとして、抗生剤の適正使用などを促すガイドラインを発表しています。

IDSA Clinical Practice Guideline for Acute Bacterial Rhinosinusitis in Children and Adults
Clin Infect Dis. (2012) First published online: March 20, 2012 )
http://cid.oxfordjournals.org/content/early/2012/03/20/cid.cir1043.full
http://cid.oxfordjournals.org/content/early/2012/03/20/cid.cir1043.full.pdf
(今のところオープンアクセス PDFでも41ページもある)

 ガイドラインでは、18のクリニカルクェスションに関する指針(勧告)が示されていてます。

 まず抗菌剤の使用の目安としては、症状が10日以上たってもよくならない場合や、発熱(華氏102度以上)・鼻汁・顔の痛みなどの症状で始まり3~4日間症状が続く場合、典型的なウイルス性上気道炎感染後に起こる発熱・頭痛・鼻汁の増加が5~6日続く時を、細菌性の急性副鼻腔炎(ABR:Acute Bacterial Rhinosinusitis)として抗菌剤の使用が勧告されるとした上で、薬剤の選択や使用方法などについては、以下のような勧告を行っています。(多くが、empiric therapy=経験的治療 となっています)

  • 子どもは、中等度~重度のABRにおいて、アモキシシリン単剤より、クラブラン酸との合剤が推奨される
    (クラブラン酸により、抗生剤を分解する酵素の働きを妨げ耐性菌発生の予防となる)
  • 成人は、軽度~中等度のABRにおいて、アモキシシリン単剤より、クラブラン酸との合剤によるものが推奨される
  • 軽度~中等度のABRにおいて、βラクタム系抗生剤やフルオロキノロン系抗菌剤は推奨される
  • マクロライド系抗生剤(クラリスロマイシン・アジスロマイシン)は肺炎球菌に対して耐性率が高いため推奨できない
  • トリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤は、肺炎球菌やインフルエンザ菌に対する耐性率が高いので推奨できない
  • 第三世代のセフェム系は肺炎球菌への耐性を考慮し、ABRの単剤療法として推奨されない
  • 投与期間は大人のABR(軽度)で5~7日、子どものABR(軽度)で10~14日まで
  • 生理食塩水などによる鼻腔内噴霧は軽度のABRで推奨される(子どもには使用感から不向き)
  • ステロイド点鼻は抗生剤による治療の補助として推奨される
  • 局所の鬱血除去薬はリバウンドによる鬱血や炎症を誘発する可能性があるのでABRでの使用は避ける
  • 経口の抗ヒスタミン剤は眠気や口内乾燥などを誘発する可能性があるのでABRでの使用は避ける

 ここでいう、アモキシシリンとクラブラン酸の合剤は、日本ではオーグメンチンやクラバモックスのことを指しますが、この2つは配合比率が異なるので、どちらが推奨されるかはGLで確認して下さい。

 対症療法は、解熱剤と食塩水などにとどめるということなので、ちょっとした鼻かぜには、OTC医薬品は不向きということになるのでしょうか? (Health DAY 記事だと、鬱血除去剤は症状を軽快するので、有用との意見もある)

 他の学会の反応も注目です。

 参考:
Most sinus infections don’t require antibiotics
IDSA releases first rhinosinusitis guidelines, helps doctors distinguish between bacterial and viral cause
(Eurek Alert! 2012.03.21)
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2012-03/idso-msi031912.php
Antibiotics useless for most sinus infections
(CBC Ca. 2012.03.21)
http://www.cbc.ca/news/health/story/2012/03/21/sinus-infection-antibiotics.html
Hold Off on Antibiotics for Sinus Infection, Guidelines Urge
(Medpage TODAY 2012.03.21)
http://www.medpagetoday.com/InfectiousDisease/URItheFlu/31754
Antibiotics Useless for Most Sinus Infections, Experts Say
(Health DAY 2012.03.21)
http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=662908

3月22日 13:10追記


2012年03月22日 12:05 投稿

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