日本人はOTCの副作用や依存性はあまり気にかけない?

千葉大の研究グループがOTC医薬品に対する生活者の意識について興味深い調査結果を発表しています。

Self-medication behaviors among Japanese consumers: Sex, age, and SES differences and caregivers’ attitudes toward their children’s health management
Asia Pacific Family Medicine 2012, Published: 11 September 2012)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3523005/

調査は2011年に行われ、対象は関東在住の成人で403人(うち子どもがいる人が331人)から回答が得られています。例によって、WEB調査になので偏り等もあるかと思いますが、収入なども調査しており、経済的な背景を含めた行動傾向についても明らかにしています。

調査は43項目について行われ、一部の質問については、“Strong agree” “Agree” “unsure” “Disagree” “Strongly disagree”の4択で、自分の考えに近いものを選ぶという形式がとられています。

質問内容は、どのようなときに医薬品を使用するか、薬剤師は軽度の病気に対するアドバイザーや情報源となりうるか、子どもが病気になったときの対応、広告の影響などについて尋ねていますが、2005年に Family Practice 誌に発表された2002年に北アイルランドで行われた同様の調査と同じ質問を設定、デンマークアイルランドとOTC医薬品に対する国民性を比較検討しており、興味深い結果となっています。

Societal perspectives on over-the-counter (OTC) medicines
Fam Pract (2005) 22 (2): 170-176.)
http://fampra.oxfordjournals.org/content/22/2/170.long
http://fampra.oxfordjournals.org/content/22/2/170.full.pdf
(オープンアクセス)

アイルランドの調査では、“Strong agree” “Agree” “unsure” “Disagree” “Strongly disagree” の5択となっており、一概に比較できませんが、質問項目が同じだったものについて、両方の結果を並べると次のようになります。

 質問 Strongly
agree
Agree Unsure Disagree Strongly
disagree
More prescribed drugs should be deregulated to OTC status. 日:7.4%
ア:6.5%
日:49.9%
ア:43.5%
ア:15.5% 日:38.5%ア:24.7% 日:4.2%
ア:9.8%
Non-prescription medicines can have dangerous side effects 日:3.5%
ア:5.9%
日:30.0%
ア:59.7%
ア:20.0% 日:62.5%
ア:14.1%
日:4.0%
ア:0.3%
Non-prescription medicines can sometimes mask serious health problems. 日:8.2%
ア:4.0%
日:50.9%
ア:57.7%
ア:28.9% 日:39.0%
ア:9.1%
日:2.0%
ア:0.3%
Some non-prescription medicines interfere with the natural healing process of the body. 日:4.0%
ア:4.1%
日:38.5%
ア:50.5%
ア:31.9% 日:55.1%
ア:13.3%
日:2.5%
ア:0.2%
Some non-prescription medicines may cause dependency or addiction if taken for a long period of time. 日:8.2%
ア:14.7%
日:47.1%
ア:65.2%
ア:10.8% 日:40.9%
ア:9.0%
日:3.7%
ア:0.3%

上記を見ていただければわかるように、アイルランドの調査結果と比べ、日本の調査結果ではOTC医薬品は副作用や依存性についてあまり気にかけない生活者が多いことが示されており、日本では海外と比べて、「OTC医薬品は安全」と考える人が少なくないことがうかがわれます。

調査結果ではこの他に、若い人でも医療費が心配で病院にかからないこと、低収入の人では病気のときでも医者にかかったり、OTCで対応せずに自宅で休むということやプライベートブランドよりナショナルブランドを選ぶ傾向、こどもの病気にはセルフメディケーションで対応するのではなく医者にかかるなどの結果が明らかになったそうです。

関連情報:TOPICS
2012.07.30 OTC薬の乱用・依存の実態(厚生労働科学研究)
2008.10.11 風邪薬販売時に薬剤師からの情報提供は必要とされていない?


2012年09月14日 17:20 投稿

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