ビタミンB6を多く含むサプリメントの店頭からの撤去を求める中間報告書(豪州)

つわり症状緩和に有効だとして、妊婦向けサプリにも配合されているビタミンB6ですが、豪州当局のTGAは27日、大量に摂取すると末梢神経障害のリスクが高まるとして、販売規制をすべきとした暫定決定(中間報告書)をまとめ、公表しています。

【TGA 2025.06.27】
Notice of interim decision on proposed amendments to the Poisons Standard in relation to pyridoxine, pyridoxal or pyridoxamine (vitamin B6) – ACMS #46 – November 2024
https://www.tga.gov.au/resources/publication/scheduling-decisions-interim/notice-interim-decision-proposed-amendments-poisons-standard-relation-pyridoxine-pyridoxal-or-pyridoxamine-vitamin-b6-acms-46-november-2024

暫定決定の報告書によれば、2025年6月4日までに、TGAにはビタミンB6を含む製品について、末梢神経障害、末梢感覚神経障害、小線維神経障害、慢性多発神経障害についての報告が174件寄せられていて、実態はさらに多いのではと指摘されています。

暫定決定では、2027年2月までに

  • サプリメントとして販売できるのは1日量当たり50mg以下とする
  • 1日量当たり50mgを超え200mg未満までは要薬剤師薬(schedule3)とする
    (当初提案は5mg超200mg未満だった)
  • 200mg以上は処方箋医薬品(schedule4)とする

と、用量ごとに規制を設定するとともに

  • 過剰摂取の悪影響についての国民の意識を⾼めるための教育キャンペーンうぃ行う
  • 消費者の理解を深めるため、ラベルには「ピリドキシン」ではなく「ビタミンB6」を使用する
  • 警告⽂の⽂言を強化するなど、ラベル表示要件を強化する
    (製品に含まれるビタミン B6 の存在をより明確に表示する)

を求めています

豪ABCによれば、この規制が実施された場合には約100種類の製品に影響があるとしています。

暫定決定にあたっては次のような理由を示しています

  • 末梢神経障害は、⻑期間にわたる⾼用量(100 mg/日以上)の服用に関連しているが、症状は⼀般的に服用を中止すると改善する
  • 末梢神経障害の症例はまれであり、特に 50 mg/日未満の用量では、⼊⼿可能な製品の数や販売量の多さを考えると、リスクは無視できる
  • 当初提案の5mg超を要薬剤師薬とすると対象製品が1500種類を超え、影響が大きい

日本でもビタミンB6を配合したサプリメントは多くありますが、1日最大量でも最高でも40mg(ピリドキシン塩酸塩として)のようです

一方、日本のOTCの配合上限は100mg/日なので、100mg/日を含む商品があります。

一般用医薬品では、それぞれ1日量あたり

  • アリナミンEXプラス・・・・ピリドキシン塩酸塩100mg
  • アリナミンEXプラスα・・ピリドキシン塩酸塩100mg
  • エスファイトゴールド・・ピリドキシン塩酸塩100mg
  • ユンケル1・6・12EX・・・・ピリドキシン塩酸塩100mg
  • トラフル錠a・・・・・・・・・・・ピリドキシン塩酸塩50mg
  • ペラックT錠a・・・・・・・・・ピリドキシン塩酸塩50mg
  • ナチュラルバランスBB・・ピリドキシン塩酸塩50mg
  • ハイチオールシリーズ・・ピリドキシン塩酸塩50mg
  • アリナミンメディカルゴールド・・ピリドキサールリン酸エステル水和物60mg

医療用医薬品では、それぞれ1錠あたり

  • ビフロキシン配合錠・・ピリドキシン塩酸塩10mg
  • ノイロビタン配合錠・・ピリドキシン塩酸塩40mg
  • アリシア配合錠・・・・・・ピリドキシン塩酸塩50mg
  • ビタダン配合錠・・・・・・ピリドキサールリン酸エステル水和物30mg
  • ビドキサール錠30mg・・ピリドキサールリン酸エステル水和物30mg

を含む製品があります。

医療用は添付文書「その他の副作用」項で 大量・長期投与:手足のしびれ、知覚異常等 観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止すること の記載がありますが、OTCにはそういった記載はありません

総合ビタミン剤などを長期に服用している人は留意が必要かもしれません。

なお豪TGAでは、これまでも1日あたり10mgを超える量で含む製品には、末梢神経障害のリスクがあるとした注意喚起を行っています。

Health supplements containing vitamin B6 can cause peripheral neuropathy
(TGA 2022.11.10)
https://www.tga.gov.au/news/safety-alerts/health-supplements-containing-vitamin-b6-can-cause-peripheral-neuropathy

参考:
Australia’s TGA issues interim report to remove supplements high in B6 from shelves as toxicity cases rise
(豪ABC 2025.06.28)
https://www.abc.net.au/news/2025-06-28/tga-takes-action-over-b6-toxicity/105470210

Warnings high doses of vitamin B6 over a long period could cause irreversible nerve damage
(豪ABC 2025.01.08)
https://www.abc.net.au/news/2025-01-08/vitamin-b6-toxicity-peripheral-neuropathy-health-supplements/104793006

Medical professionals fear cases of B6 toxicity are under-reported
(豪ABC 2025.01.28)
https://www.abc.net.au/news/2025-01-28/vitamin-b6-toxicity-cases-rise-vitamins-supplements-tga-review/104863232

関連情報:
Vitamin B6 (pyridoxine) and peripheral neuropathy
(Prescriber Update 46(2): 29-30)
https://www.medsafe.govt.nz/profs/PUArticles/June2025/Vitamin-B6-and-peripheral-neuropathy.html

Neurotoxic risks from over‐the‐counter vitamin supplements
(Med J Aust.13 Feb 2023)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.5694/mja2.51851

TOPICS
2025.04.26 栄養補助食品を通じてビタミンB6を過剰に摂取すると、潜在的な危険性がある(オランダLareb)(暫定決定での報告書でも言及)
2018.10.14 ビタミンB6の漫然使用は大丈夫?~オランダでの摂取制限(メモ)(リンク切れ)
2008.08.05 ビタミンB6の摂りすぎは体に有害かもしれない(豪州)(リンク切れ)


2025年06月29日 15:47 投稿

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