Explor Res Clin Soc Pharm.誌に、“Selfcare for Health System Sustainability: An International Series on the Role of Community Pharmacy”(医療システムの持続可能性のためのセルフケア~地域薬局の役割に関する国際シリーズ)で掲載された、デンマークの取り組みを紹介したい。(Xに2023.10.18に投稿したものを再構成しました)
【Explor Res Clin Soc Pharm.2023 Oct 4】
Danish community pharmacies supporting self-care for patients
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10582730/
デンマークでは、政府の公衆衛生プログラムである「Healthy throughout life」(2002-2010年)において、病気の進行や合併症の予防における重要な要素としてセルフケアが強調されたことで注目を集めるようになった。
デンマークの地域薬局におけるセルフケア行動(self-care activities)の一部は、肥満、sexual health、禁煙、患者やその家族への指導、ワクチン接種に関するより良い予防とセルフケアのための国および地方自治体のガイドラインとして記載されているという。
2022年10月の時点で、デンマークには薬局の支店を含む523のコミュニティ薬局がある。
デンマークの地域薬局におけるセルフケア活動には、カウンセリング(健康、セルフケア、処方薬、OTC薬について)、健康キャンペーン、他の医療従事者や患者会との連携、地域薬局サービスが含まれ、これらはすべてくすりの適正使用や安全使用をサポートし、健康増進と予防に貢献することを目的としている。
デンマークの薬局では患者が症状を訴えたり、特定の医薬品や製品を希望したりした場合には、薬局のスタッフは患者の症状やニーズを把握し、必要な医薬品などを紹介などセルフケアについて情報提供(counsel)が行われている。
具体的には、ACE阻害薬やARBを服用している人がNSAIDsを求める生活者に急性腎障害のリスクを確認する取り組みが行われている
Counselling customers at risk of the triple whammy effect at community pharmacies – A feasibility study
(Explor Res Clin Soc Pharm. 2023 Sep 28)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10585312/
また、デンマークの多くの薬局では、 Danmarks Apotekerforening(https://www.apotekerforeningen.dk/) が提供する健康キャンペーン(health campaign)に参加している。
このキャンペーンの目的は、住民の健康と福祉に焦点を当てることにある。
通常、毎年4つのキャンペーン(期間は1か月)が実施されていて、2018~2022年には、次のようなテーマで行われていて、確認したところ、テーマごとのウェブサイトも開設されていた
- 男性に焦点にあてた取り組み
-勃起不全、胃酸、2型糖尿病 - 子どもに焦点をあてた取り組み
-学校での投薬や感染症 - OTCについて
-風邪と花粉症 - 胃と腸の病気
- OTCに焦点をあてた取り組み
-禁煙と真菌 - 慢性痛と急性痛を中心とした痛み
- 足や口内の健康
- 安全使用にに焦点をあてた取り組み
-インスリンの取り扱いを中心に - より良い睡眠と不眠症治療薬
健康キャンペーンは、必要に応じて患者会などの戦略的協力者とともに実施される。
健康キャンペーンや患者会、自治体との協力の一環として、デンマークの薬局が市民(患者、親族、子供など)にセルフケアについて教えることもある。
このキャンペーンは、セルフケアのかがけるの7つの柱(知識とヘルスリテラシー、メンタルウェルビーイング、身体活動、健康的な食事、リスクの回避と軽減、良好な衛生状態、製品やサービスの合理的な使用)が網羅されている。
こちらが健康キャンペーンのウェブサイト
Sundhedsfaglige kampagner
https://www.apotekerforeningen.dk/apotekerne/sundhedsfaglige-kampagner
キャンペーンでは、テーマごとのWEBサイトを開設、原因や症状、対処法などを紹介、またPodcastやスタッフが答えるチャットの仕組みもある
2023年には膀胱炎、代謝性疾患、一包化についての紹介
2024年には眼疾患、高血圧などが取り上げられている
また、デンマークの薬局では、禁煙、血圧評価、コレステロール評価、2型糖尿病のリスク検査も行っており、これもセルフケアの支援となっている。
COVID-19検査薬の販売や聴力検査を行っている薬局もある。
自治体との地域連携がない場合、患者はこれらサービスは自費となる。
薬局はまた、老人ホーム、在宅介護、居住施設などにおいて、他の医療専門家に対して、薬物療法やセルフケアに関する確立されたエビデンスに基づいた指導を行っている。
Danmarks Apotekerforening では2021年9月、地域医療の強化が求められる中、地域薬局がどのように発展に貢献できるかについての提言をまとめた「未来の医療システムにおける薬局の役割 – 医薬品安全と予防に関する10の取り組み」を公表。
この中には、再処方権限を有する薬剤師には、デンマークの保健当局が承認したプロトコルに基づき、例えばクラミジアや蟯虫症に対する薬物療法を開始する権利が与えられるべきといった提言もある。(提言9)
Apotekerne i fremtidens sundhedsvæsen – 10 forslag
https://www.apotekerforeningen.dk/politik/10-forslag-til-sundhedsaftale
関連報告:
Integration of and visions for community pharmacy in primary health care in Denmark
(Pharm Pract (Granada). 2021 Jan 22)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7844971/
2025年06月27日 19:57 投稿