Explor Res Clin Soc Pharm.誌に、“Selfcare for Health System Sustainability: An International Series on the Role of Community Pharmacy”(医療システムの持続可能性のためのセルフケア~地域薬局の役割に関する国際シリーズ)で掲載されたスイスの取り組みを紹介したい。(Xに2023.06.09に投稿したものを再構成しました)
Vision and practice of self-care for community pharmacy in Switzerland
(Explor Res Clin Soc Pharm. 2023 Mar 30)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10121475/
スイス政府の健康政策のアプローチと具体的な戦略には、「セルフケア」という用語が含まれていないが、「疾病予防」「健康増進」「ヘルスリテラシー」「依存予防」という用語は使われている
スイスでは1,844の地域薬局で22,700人が働き、毎日約260,000人の患者の対応に当たっている。
薬剤師は法律に基づき、「健康の増進及び維持並びに疾病の予防に寄与し、これに対応する技能、特に予防接種の分野における技能を習得する」ことが求められている。
薬剤師の専門機関であるPharmaSuisse(スイス薬剤師会)は、患者のヘルスリテラシーの向上、さまざまな健康問題のスクリーニング、セルフメディケーションの教育、非処方薬(OTC、非処方薬(non-prescription products)、薬剤師が処方する医薬品)に関連する推奨などのセルフケア活動を含む住民へのケアを提供する地域薬剤師(医療制度から資金提供)の役割を定めている
2019年の医薬品医療機器等法の改正で、政府は薬剤師のスキルを医薬品供給に活用する方針を決定。医薬品の分類の見直しが行われ、従来は薬局でしか入手できなかった医薬品が、他の店舗でも入手可能となるよう再分類されました。次に、一般的な疾患の治療に用いられる約100種類の医薬品が、医師の処方箋から薬剤師の自主的な処方が可能となった。
また2012年からは、27種類の疾患について、遠隔医療を組み合わせたnetCareという取り組みも行われている(→TOPICS 2012.01.12)
さらに患者の予防に寄与するため、セルフケアとしてのインフルエンザワクチンなどの処方箋なしでの予防接種も全州で許可されている。
スイス連邦政府がまとめた報告書では、プライマリーヘルスケアに地域薬局を取り込むことの重要性が指摘、薬局が public health の分野で果たすことのできる役割と、卒前・卒後教育に必要な変化が強調されている。
また報告書の提言と行動では、医療システムの課題(軽症で病院にかかることが多い、一般開業医が不足しているなど)を克服するために、プライマリーヘルスケアにおける薬剤師の重要な役割を強調している。
それらの提言の中には、セルフケアに関連する行動も含まれていて、プライマリーヘルスケアにおけるそのような役割を実現するために、現在では様々な活動や健康サービスが地域薬局や薬剤師によって提供されている。
この論文では、スイス薬剤師会(PharmaSuisse)がまとめた年次報告が引用されている
Faits et chiffres Pharmacies suisses (2023)
(PharmaSuisse 2023)
https://pharmasuisse.org/system/files/media/documents/2023-11/A6_fr_Fakten_Zahlen_2023_web.pdf
論文図5にある「Gateway to care ~ Services for acute probrems」という概念が印象的(上記引用12-13ページをGoogle翻訳などで翻訳)
健康、病気、またはウェルビーイングなど、薬局のスタッフはお客様のニーズに
合わせてアドバイスを提供し、フォローアップし、迅速かつ専門的に対応します。
これらのサービスを受けるためには、予約や必ずしも医師の処方箋は必要ありません。
薬局は、健康に関するあらゆる問題における最初の相談先の一つです。
急性疾患の場合でも、通常は救急外来に行く必要はありません。
多くの健康に関する質問は、薬局で直接かつ簡単に相談し解決できます。
救急外来に行く必要はありません。
多くの健康に関する質問は薬局で直接かつ簡単に解決できます。
実際、スイスには約1,800の薬局があり、これらは最初の便利な接触点となっています。
地理的に分散しており、営業時間も便利なため、薬局は基本的な医療サービスを容易に提供し、公的医療システムに完全に統合されています。
急性の軽度な症状や軽傷の場合、薬局は貴重なサポートを提供します。
しかし、薬剤師にはさらに多くの権限が与えられています。
薬局は、特に予防接種を含む予防の分野において、数多くの医療サービスを提供しています。
処方箋なしで販売ができる reatment of common illnesses (“List B+”)と呼ばれるリストはこちらから入手できる(零売ができるってことか)
Simplified provision of List B medicinal products
(スイス連邦公衆衛生局 FOPH)
https://www.bag.admin.ch/bag/en/home/medizin-und-forschung/heilmittel/abgabe-von-arzneimitteln.html
リスト
Indikationen und Arzneimittel nach Artikel 45 Absatz 1 Buchstabe a
(Version Oktober 2024) (ドイツ語)
https://www.fedlex.admin.ch/filestore/fedlex.data.admin.ch/eli/oce/2024/107/de/pdf-a/fedlex-data-admin-ch-eli-oce-2024-107-de-pdf-a-2.pdf
処方箋なし/事前医師相談なしでの販売は、医薬品添付文書に記載の情報を考慮し、特に年齢制限に留意することが求められている(パッケージや治療期間が限定)
目に留まった薬品名
・サルブタモール、テルブタリン吸入
・ブデゾニド・フォロモテロール吸入
・ドンペリドン
・PPI
・オルリスタット
・スルファジアジン銀(外用)
・アシクロビル(外用)
・アダバレン(外用)
・イソトレチノイン(外用)
・イベルメクチン(外用)
・フィナステリド(内服)
・シルデナフィル(内服4錠まで)
・トリプタン各種
・緊急避妊薬(レボノルゲストレル、ulipristal acetate)
Explor Res Clin Soc Pharm.誌では、他に11か国の取り組みも紹介されており、下記論文では各国の取り組みについて、比較してまとめている。
Community pharmacy and selfcare provision: An international perspective
(Explor Res Clin Soc Pharm. 2024 Jun 12)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667276624000635
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12121434/
参考:
Assessment of minor health disorders with decision tree-based triage in community pharmacies
(Res Social Adm Pharm. 2022 May;18(5):2867-2873.)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1551741121002473
関連情報:TOPICS
2012.01.12 netCare~薬局でプライマリ・ケア(スイス)
2025.06.03 持続可能な医療システムの中での地域薬局・薬剤師の役割
2025年06月03日 13:54 投稿