薬局薬学誌で、OTC医薬品販売の現状と課題について、「保険調剤を主とする薬局が OTC 医薬品販売に取り組む際には、仕入れ先の確保、商品選択、在庫管理等の実務上の障壁や制度の複雑さが心理的ハードルとなる」などとした総説がアップされています。
【薬局薬学 早期公開 2026.03.11】
OTC医薬品販売の現状と課題
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakkyoku/advpub/0/advpub_ra.2026-2000/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakkyoku/advpub/0/advpub_ra.2026-2000/_article/-char/ja
目に留まったところをいくつか紹介します(いくつか独自情報も追記してあります)
●OTC医薬品販売の歴史
- 1975年まではいわゆる距離制限があった
- 1992年大規模小売店舗法(大店法)の改正で郊外にあるような薬局等の大型店舗は自由に出店が可能に
- 1997年の再販指定廃止で、価格競争の面でも街の薬局は対抗が困難に
- 医薬分業推進の国策もあり、薬局経営は OTC医薬品販売から調剤業務に向かい、「調剤薬局」なる言葉も登場
- 一方で今日では、保険調剤においても、度重なる薬価差益の縮小や医療用医薬品の供給不足により、OTC医薬品販売への原点回帰の動きも
●OTC医薬品の分類
- 6 つの分類が存在。顧客に分かりやすいどころか、複雑で薬剤師にさえ整理が難しいなど、制度的複雑さも,OTC 医薬品販売に対する心理的ハードルの一因となっている
●OTC医薬品販売を開始する薬局の障壁
- 「薬粧卸」「ボランタリー」の新規取引口座を作る敷居は高い
- 直販(OTC)メーカーとの直接取引は特殊な条件等が存在することが多い
- 価格維持等を目的として、メーカーが一部の大手チェーン薬局にしか流通させない商品が存在
- 保険診療で提供される処方薬の自己負担額とOTC 医薬品の価格差により、OTC を選択する金銭的インセンティブが乏しい
- 多忙な日常業務をこなしながら,すべての薬効群について十分な知識を習得し,適切に対応することは容易ではない
●OTC医薬品販売開始時の商品選択
- 医療用医薬品と同一成分であるスイッチOTCについては、処方箋調剤での知識・経験を生かしやすく、心理的ハードルは低い(単剤製品は生かせるが、配合剤も多いけどね)
- 湿布薬など、不足分をOTC医薬品で購入したいというニーズがある(でも効能でNGのものがあるんだよな)
- ブランド名が同じでも、名称の後ろにS、DX、α、プレミアム等がついただけで含有成分が異なるものが存在するので注意が必要
●その他
- 大学で教えることの難しさ~過度に安全面を重視してしまうと、最初からトリアージや受診勧奨に重点を置いて教育してしまいがちに
- POP広告を作成することで,提供する情報の内容の違いに気づくことができる
- 殺虫薬の知識などは総合的な薬学知識が活用できる
- 生活上のアドバイス行うことが望ましい(海外ではリーフレットとかをつくってこれをやっている)
価格維持等を目的として、メーカーが一部の大手チェーン薬局にしか流通させない商品が存在
この総説でも示されていますが、ありますよね、アライ(オルリスタット)、アレグラFXプレミアムとか、これ以外にもいろいろありますよね。現場からもこういう声が。
あちこちでOTCについてお話をしてるんだけど。
結局、個店の薬局は、ロート製薬のアルガードエピナスチン、小林製薬のポリフルなど、売りたいOTCは仕入れできない。
チェーンのところだけ。国はOTCを置けというけど、流通がままならないこと知ってるのかなあ。
なら、零売を認めるべきじゃない。
— みどりママ (@mCwpwQ3Rv8KnVAD) March 9, 2026
タリオンARなどは製造販売の承認後、2年以上販売開始が送れた挙句、当初は地域限定でした。
また、ナプロキセン、フルルビプロフェンテープなど、要指導医薬品としての承認を受けながら、販売開始に至っていない、承認を取り下げる成分もいくつかあります
【厚労省】
要指導医薬品
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/yoshidoiyakuhin.html
ここまでくると、やはり零売という形で、生活者に必要な薬を供給するという体制も模索する必要があるのではないでしょうか?
あと、この総説で触れていませんが、課題としてあるのは、多くの量販店で採用されている、セルフセレクションという販売スタイルです。
平成に入り、量販店は本来であればオーバーザカウンターで販売する必要があるものまで、薬剤師の関与する必要はないと主張し、生活者(消費者)の選択の自由の名の下にセルフ販売をすすめました。
やがて、生活者(消費者)の間でも、OTCはドラッグストアで(自分で選んで)購入するものという認識が広がっていきました。
その結果、2009年の、旧薬事法改正で医薬品販売制度の見直しにつながり、市販薬が薬剤師の手から離れて、ちょっとした症状は、OTCを(セルフセレクションで)ドラッグストアで買うか、医者にかかってもらうしかなくなってしまいました。
そして、薬局はセルフ販売をメインとする「ドラッグストア」、「調剤専門」、漢方専門など調剤や売れ筋のOTCの取り扱いは行わない、いわゆる「相談薬局」の3つに分かれてしまったと考えています。
空き箱陳列も含めて、セルフセレクションの功罪については、しっかり調査・検証が必要だと考えています。
結局日薬は、OTCを置け置けといっておいて、こういった現場の声を取り上げて動こうとしないんですよね。
これだけ、OTCの流通とか販売体制とかに課題があるのに、審議会や検討会の場で話を出さず、「なぜ、(調剤)薬局には市販薬がないのか」という指摘にどう応えるのでしょう。
少し潮目が変わった感もありますが、結局は調剤の方が大事で、セルフケア・セルフメディケーションのサポートのための体制づくりは二の次なのでしょう。
(X記事としても投稿しました)
関連情報:
【特別企画】市販薬販売、これからの薬剤師にできることは?
(家庭の薬学 2021.06.14)
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2021/06/14/202200
OTCはドラッグストアで購入するもの~一般消費者の認識?
(アポネットR 2010.07.12)
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/100710.html
2026年03月11日 13:04 投稿
