OTCはドラッグストアで購入するもの~一般消費者の認識?

 11日、TOPICS 2010.06.27 で紹介したOTC薬販売をテーマとした模擬患者研修に行ってきました。

 研修は、よくある症状(今後も研修で使うシナリオだそうなので、詳しい内容はご勘弁を)を訴えてOTC薬の購入求めるという設定で、4人の模擬患者さん(SP)が別々のシナリオで参加者がどう対応する(情報収集、薬剤の選択、情報の提供などを、持ち時間7分で行う)というものです。

 実はSPには、いわゆる模擬患者(Simulated Patient)と、標準模擬患者(Standardied Patient)の2つがあるそうで、前者は医療コミュケーションの訓練で活用(自由度が高く、答えたくない時は答えなくてもよい)、後者はチェック項目などが標準化され、型や手順の習得に適していることから、6年制学部学生のOSCEで活用されています。(今回の研修は、両方の中間の位置づけ)

 またこのSPは、薬学部では自前で養成することが求められているそうで、東京理科大学では60人30~40人のSPが登録されているそうです。(総合大学では医学部などから派遣、全体ではまだ3割程度が自前で対応できてないとのこと)

 SPは学部学生の実習とOSCEで協力して(理科大では年に7~8回、10回を超える大学もあるそうです)もらっているそうですが、悩みの種は患者役としての技術やモチベーションを保つために、大学教育以外でのSPとしての活用の場も必要ではないかとのことです。

 さて、SPはこういった研修では、事前にシナリオを渡してもらい、SPとしてどのように演じてもらったらいいかを説明するそうなのですが、担当の後藤先生の話だと、OTCをテーマとした今回のシナリオはSPになかなか理解されなかったそうです。どうも、SPにはOTCは薬局で相談して買うものという認識がないためのようです。

 実際、研修後「私はOTCはドラッグストアで買うものだとずっと思っていました。今回、薬剤師さんに説明を受けて買うものだとわかりました。今後は薬局で相談して買いたいと思います。」と何人ものSPが感想を話していました。正直言ってショックだったですね。

 この20年で、調剤薬局とセルフ販売を主体としたドラッグストアに2極分化した歪みが、すでにこういった深刻な形で消費者に植え付けられてしまったことを痛感させられます。(私のところでも、OTCを陳列しているにもかかわらず、「ふつうのくすりは買えるの?」という人がしばしばいる)

 さて、研修会の感想ですが、今自分が行っている販売方法(スタイル)について、客観的に助言がもらえること、他の参加者の対応方法を見て、自らのスタイルに工夫ができる、販売時における確認が必要な事項やその収集方法をどのようにしたらよいかなどを考える機会となり、大変有意義でした。

 SPに報酬を払っていることを考えれば、正直1000円の参加費は安いです。にもかかわらず、参加者は17名(病薬の方や、新卒の方も参加していました。)でした。(実際は、2グループに分かれてこの人数でやるのがちょうどよい) もしかしたら、年内にもう1回開催することも検討しているそうなので、皆さんも参加してみてはいかがでしょう。

 日薬では15日、覆面調査の結果を受けて担当者を集めて会議をする(TOPICS 2010.6.18)そうですが、伝達講習なんかより、こういった模擬患者(大学養成SPを活用)による研修の実施の方が、現場の認識が高まるんじゃないかと思いました。

 なお当日は、じほうの「調剤と情報」の記者さんが取材に来ていました。もしかしたら、あとで記事になるかもしれません。

関連情報:TOPICS
  2010.06.27 模擬患者と学ぶコミュニケーション(生涯教育)

7月12日 15:40訂正


2010年07月12日 00:52 投稿

コメントが5つあります

  1. アポネット 小嶋

    調剤と情報の9月号に「模擬患者と学ぶコミュニケーション~「自己流」の対応を改善する機会に~」というレポートとして掲載されました。(p6-9)

    同大学の薬剤師基礎実務研修プログラムの紹介とあわせて、内容が紹介されていますので、是非一読をお勧めします。

    ちなみに、p6の左下のインタビューをしている写真は私です。(恥ずかしい)

  2.  現在のOTC医薬品流通では、8割がドラッグストアと言われています。 日本では、薬局に先行して薬種商があり、かつ薬局で調剤が主流になるに従い、「調剤専門薬局」という奇妙なものが雨後の筍のように乱立し、OTCの姿も無い「薬局」が多数になっています。
     薬剤師法には、薬剤師の職能として3つ掲げているのにもかかわらず、薬事法では薬局とは調剤所であるかのように述べている部分もあり、混乱の原因となっています。

  3. アポネット 小嶋

    10月9日に日大で、頭痛をテーマに日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会がワークショップを開催します。(一般用医薬品セルフメディケーション振興財団が後援)

    セルフメディケーションをテーマに薬剤師のコミュニケーション力を磨こう!
    「頭が痛い」と訴えるお客様にどう対応しますか?
    (ワークショップ2011 in 千葉)
    http://www.pcoken.jp/form3/contact.php

    トリアージ力を高めるために症候学についての講義もあるそうです。

  4. アポネット 小嶋

    上記の10月9日開催のワークショップですが、諸般の都合により中止となったとの連絡がありました。

  5. アポネット 小嶋

    11月20日(日)に、東京理科大(千葉県野田市)を会場に2010年7月と同じ形式で研修会を行うそうです。

    興味ある方は是非、ご参加を。

    東京理科大学薬学部第53回薬剤師基礎実務研修プログラム
    -模擬顧客と学ぶコミュニケーション-
    (千葉県薬剤師会HP、リンクすみません)
    http://www.c-yaku.or.jp/ken/ken.htm#111120_53