中学生から見たセルフメディケーション

 平成24年度からは新中学校学習指導要領に従い、医薬品の適正使用についての教育(くすり教育)を行うことになっていますが、東京薬科大学の研究グループがその効果的な方法論を構築する目的で中学生を対象としたくすりに関する意識調査を行っています。

中学生を対象とした医薬品適正使用に関する意識調査と学校薬剤師による教育の効果
(薬学雑誌 132(2),215-224 2012)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/132/2/132_2_215/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/132/2/132_2_215/_pdf

 対象は、地元八王子市内の公立中学の2年生103名とサンプルが小さく、全国の中学生の意識を反映したものではありませんが、興味ある結果が得られています。

質問項目 回答率(重複回答可)
自分の体の調子が悪くなったとき、どこに行こう(相談しよう)と思うか 病院88.3%、薬局28.2%、ドラッグストア25.2%、同じ症状がある家族や友人10.7%
上記の答えの中で、自分で「くすり」を買うことができるのは? ドラッグストア68.0%、薬局61.2%、病院42.7%、コンビニ35.0%
「くすり」を飲むときに、飲み物は何で飲んでいるか? 水・ぬるいお湯95.1%、お茶35.9%、スポーツドリンク13.6%、ジュース9.7%、飲み物は飲まない3.9%

 中学生を対象にした調査とのことでわかりやすい質問項目となったのでしょうが、「薬局」「ドラッグストア」とあえて分けた理由がよくわかりません。生徒さんのとらえ方にもよるのでしょうが、質問者がもし「薬局」=『調剤薬局』としたかったのであれば、ちょっと問題があると思います。

 また、「くすり」を飲むときにお茶やスポーツドリンクで飲んだことがあるという人が結構いたのには驚きです。大人がくすりを飲む姿を見てこういうものだと思う場合もあるのでしょうから、やはり日頃から、飲食物がくすりの効果に影響を及ぼすことを大人に対してもきちんと行う必要性を感じます。

 そして、コンビニで自分で「くすり」が買えると思った生徒が35%に達したのも驚きです。研究者らはマスコミでいろいろと取り上げられたことが影響しているとしていますが、裏を返せば、OTC医薬品の販売において薬剤師の存在感が低下しているのではないかとも考えることができます。

 平成24年度から行われる中学生を対象としたこの「くすり教育」は、くすりとの関わり方だけではなく、地域薬局への見方を変える大きなチャンスとなりそうですが、「生徒たちが生涯にわたり継続して自分自身の健康に責任を持ち管理していくことができるようサポートするためには、地域薬局の機能、薬局薬剤師の職能がどうあるべきか模索していくことが重要である」と研究者らが指摘するように、地域薬局が果たすべき機能(即ち、OTC医薬品の供給)を充実し、それを広げていくこともしていかないと、ますますセルフメディケーションにおける地域薬剤師の存在意義や、理想とする「かかりつけ薬局」づくりがすすんでいかないのではないかと感じます。

関連情報:TOPICS
 2008.06.07 日薬、「くすりの正しい使い方」啓発資材を公表


2012年02月06日 17:49 投稿

Comments are closed.