ここのところ、海外の地域薬局・薬剤師による軽度疾患サービス(Minor Ailment service)について調べています。
英語圏のものは結構把握していますが、スペイン語圏のものはなかなか実態が明らかになっていませんでした。いろいろと調べていくうちに、スペインでの取組の概要がわかったので、現時点ではメモになりますが紹介したいと思います。(あまりに引用参考文献が多かったのでどれがどうだかわからなくなっていますが)
現在、スペインでは、患者のセルフケアと市販薬の適切な使用を促進することに焦点を当てた合意に基づき、プライマリケア医との協力のもとで作成されたプロトコルである“El servicio de indicación farmacéutica (SIF:薬剤アドバイスサービス)”が行われている。
SIFが現在に至るまでの歴史は長く、2005年にまず、薬剤師と患者との面談において考慮すべき3つの重要な要素(症状の持続期間、症状の軽重、医師の診察が推奨される他の健康問題や服薬状況の有無)を定義した‘Guía de Indicación Farmacéutica’ (薬剤適応ガイド、処方ガイド)が開発。
Guía de Indicación Farmacéutica’ (薬剤適応ガイド、処方ガイド)
https://digibug.ugr.es/handle/10481/33049
https://digibug.ugr.es/bitstream/handle/10481/33049/guia%20ind-dader.pdf?sequence=1&isAllowed=y
2008年には、薬学と医学の専門家グループ間の連携を図るため、スペイン家庭・地域医療学会などと共同で、Guía de Síntomas Menores「軽微な症状に関するガイド」を共同で作成された
Protocolos de Indicación Farmacéutica y Criterios de Derivación al Médico en Síntomas Menores
(現在は第3版が発行(こちらは有償)で下記は古い版だと思われる)
https://digibug.ugr.es/bitstream/handle/10481/33050/ProtocolosIndicacionFarmaceutica.pdf
7日以内に治る31種類以上の一般的な軽度の疾患(咳、下痢、ニキビ、痛みなど)を管理するためのプロトコルが提供。これには、医薬品の適応症と医師への紹介基準を明確が示された。(第3版では、以前の版に含まれていた31の軽微な症状の管理プロトコルが更新され、新たに5つの症状が追加)
業界紙のDiariofarma では、ファクトシートとして、抜粋したものを紹介している。
Protocolos de Indicación Farmacéutica y Criterios de Derivación al Médico en Síntomas Menores
(Diariofarma 2015.02.23)
https://diariofarma.com/2015/02/23/protocolos-de-indicacion-farmaceutica-y-criterios-de-derivacion-al-medico-en-sintomas-menores
これを踏まえて、2010年にSIFが提起された
SERVICIO DE INDICACIÓN FARMACÉUTICA
https://www.sefac.org/sites/default/files/sefac2010/private/documentos_sefac/documentos/BBPP_indicacionmedicamentos.PDF
イントロダクションで、このように定義している
患者が自身の健康管理に積極的に関与するようになることは、薬剤師という専門職がこの役割、特に軽微な症状に関する助⾔において責任を負うことを意味する。
軽微な症状とは、深刻ではなく、自然治癒する、あるいは短期間で治まる健康上の問題を指し、患者が抱える他の健康問題の臨床症状や、、服用している薬の望ましい効果または望ましくない効果とは関係なく、したがって医師による診断を必要とせず、対症療法によって改善または緩和されるもの、あるいは薬剤師が対応を許可されている健康問題を指している。
軽微な症状に対処することを目的とした薬剤師による支援業務が「薬剤アドバイスサービス」(SIF)である。
薬局に入ってきて、来局者から、悩みを打ち明け、どうすればいいのか、何を服用すればいいのかを尋ねることあるだろう。
この一見ありふれた状況こそが、地域薬局の基盤の一つである薬剤指導サービスのきっかけとなる
つまり薬剤アドバイスサービス(SIF)とは、利用者の健康上の問題や特別な身体的状況に関する相談に応じるケアサービスだ。
これは、服薬管理や調剤と並ぶ薬局の基本的な役割の一つだ。そして、おそらくその価値が最も顕著に表れる役割の一つでもあるだろう。なぜなら、利用者は自身の悩みを解決するために、他の専門家ではなく、まずここを訪れることを選んだからだ。
スペインでは、2022年には、Practical guideの中で地域薬局におけるサービスを大きく2つのカテゴリー(ファーマシューティカル・ケアと地域保健関連)を規定し、その中でSIF(=Minor Ailment service)を業務として位置付けている(→TOPICS 2025.06.07)
薬剤アドバイスサービス(SIF)は、PASITAMAEというプロトコルと5つのステップ(問診、情報の評価、介入、専門的処置、記録)によって行われている
P – Persona/Paciente(人/患者):誰が症状を訴えているか?
A – Antigüedad(期間):いつから症状が続いているか?
S – Síntomas(症状):具体的な症状は何か?
I – Intensidad(強度):どのくらいの強さか?
T – Toma de medicamentos(薬の服用):何か薬を飲んだか?
A – Alergias(アレルギー):アレルギーはあるか?
M – Medicación actual(現在服用中の薬):他の病気で薬を飲んでいるか?
A – Antecedentes(既往歴):何か慢性疾患があるか?
E – Efectos secundarios(副作用):服用した薬で何か影響が出たか?
現在では、本サービスの最新の定義は、2024年にForo AF-FC(地域薬局におけるファーマシューティカル・ケア・フォーラム)によって「薬剤師が、薬局を訪れ、自身に最も適した治療法を求める患者または介護者からの健康上の問題や特別な健康状態に関する相談に対し、その専門知識を活用するサービス。これは『…のために何を処方してくれますか?』というフレーズで象徴される」と定められている。
このサービスは、スペインの地域薬局における業務の9%から16%が実践しているという。
現在、スペインではこの取り組みの検証を行う、INDICA+PROという、スペイン家庭・地域薬局学会(SEFAC)、バレンシア薬剤師会(MICOF)、およびグラナダ大学薬剤ケア研究グループが推進するプロジェクトが進行中。
INDICA+PROとは、地域薬局におけるSIFの実践のばらつきを減らし、標準化された行動および紹介プロトコルを使用する地域薬局におけるSIFの有効性を理解することを目的として実施されている。
その成果も最近示されている。
Impacto del SIF en la práctica habitual de las farmacias comunitarias: estudio INDICA+PRO Implantación
(Impact of a minor ailment service (MAS) on the daily practice in community pharmacies: The INDICA+PRO Implementation Study)
(Farm Comunitarios. 2025 Jul 15;17(3):42-64. )
https://www.farmaceuticoscomunitarios.org/es/journal-article/impacto-medicamentos-seguridad-vial-espana-sus-efectos-conduccion-0/full
- 相談の平均所要時間は約5分
- 81.3%で薬剤を処方
- 31.8%で非薬物療法も推奨
- 8%が受診を紹介。最も一般的な紹介基準は危険信号に関連するものだった。
(口唇ヘルペス以外のヘルペスやプロトコルに含まれていない別の種類の痛みなどの健康問題が含まれる) - 相談者の4分の3が薬局での相談から10日後にフォローアップを完了しており、薬剤師主導のフォローアップが日常診療で実現可能であることが示された。
SIFは、薬局の普及、営業時間延長、予約不要のウォークインアクセスなどにより、プライマリケアサービスへのアクセスを改善することが示された。
医療システムの観点から見ると、SIFは軽症疾患の相談を地域の薬局に移行することでプライマリケア医療システムの能力を高め、保健センターの負担を軽減し、医師がより複雑な症例に集中できるようになった。
このサービスは、全体的なコストを削減し、軽症疾患のケアへのアクセスを改善することで健康格差に対処することにより、長期的な医療システムの持続可能性に貢献する。
現時点では、SIFの取組についての報酬は確認できませんでしたが、こういうエビデンスの積み重ねが、英語圏(英、加、豪など)での取り組みのように公的保険での資金投入につながっていうことになるのかもしれません。
日本では、地域薬局・薬剤師によるセルフケア・セルフメディケーションの支援が求められていますが、あまりにも抽象的なように思いました。
スペインからの学びを得るなら、「何を支援するかを明確化する」「支援のための医薬協働でのプロトコルづくり」「サービスの手順書づくり」といったことへの取組があまりにも遅れているように感じました。
そしてこれを踏まえた、パイロットプロジェクトの実施と検証も不可欠です。
日本は職能団体も大学もこれをあえて避けているのではないでしょうか。
参考:
INDICA+PRO
https://web.cofrm.com/indicapro-2/
Talleres prácticos sobre el servicio de Indicación farmacéutica en varios síntomas menores
https://www.campussefac.org/indicacion/inicio
¿Qué es la Indicación Farmacéutica?(2022.09.21)
https://ludapartners.com/blog/que-es-la-indicacion-farmaceutica/
El servicio de indicación farmacéutica es uno de los pilares de la farmacia comunitaria. Conoce qué es, cómo se realiza y 7 consejos prácticos.
https://faesfarmafarmacias.faesfarma.com/indicacion-farmaceutica-servicio/
“Reivindicamos un mayor aprovechamiento del farmacéutico para mejorar la sanidad pública”
(2025.12.19)
https://www.micof.es/ver/57010/.html
Development of self-care in Spanish community pharmacies
(Explor Res Clin Soc Pharm. 2023 Sep 26)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10568415/
関連情報:TOPICS
2025.06.07 海外の地域薬局・薬剤師によるセルフケアにおける取組⑥(スペイン)
2026年04月05日 13:54 投稿
