緊急避妊薬ついに市販化へ、それまでに準備しておくことは?(Update)

29日、薬事審議会の要指導・一般用医薬品部会が開催され、市販薬としてのノルレボ(レボノルゲストレル)の製造承認と今年の薬機法改正で規定された「要指導医薬品」への指定が了承されたそうです。

部会は非公開で行われ、通常は正式な審査報告書等の資料は正式な承認がされるまで、公開にはなりませんが、審査報告書のポイントなどが今回公表されています。(異例です)

【厚労省 2025.08.29開催】
薬事審議会 要指導・一般用医薬品部会 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_62623.html

審査報告書のポイント(緊急避妊薬のスイッチOTC化について)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001552335.pdf

緊急避妊薬スイッチ OTC 化への評価検討会議からの意見具申
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001552336.pdf

5月23日に開催された医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議での意見(→TOPICS 2025.05.23)などを踏まえ、年齢制限・保護者同意を「不要」とする一方で、面前服用を「必要」とする要件で了承されています。

簡単にいうと、購入希望の女性は身分証(現時点で身分証明書かどうかはわからない)を薬局で提示し、薬剤師から説明を受けて服用、3週間後、妊娠の有無を検査薬や産婦人科施設で確認する。16歳未満や性被害が疑われる場合は関係機関と連携するとのことです。(審査報告書のポイントp4)

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今後は、販売する薬剤師への研修が行われ、販売する薬局や店舗に対しては、「研修修了薬剤師による販売」「プライバシーへの十分な配慮などに対応できる体制の整備」「近隣の産婦人科医などとの連携体制の構築」などが求められることとなっており、今後のアナウンスに留意することが必要です。

「研修修了薬剤師による販売」については、2024年厚生労働科学研究で、その内容と実施方法についてまとめられていて、これを踏まえた体制づくりが行われるものと思われます。(→TOPICS 2025.07.08

緊急避妊薬の薬局販売に備えた薬剤師研修用資材の作成
(2024厚生労働科学特別研究)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/178178

上記報告書に従えば、次のようなプロセスが想定されます

  1. 販売に係る研修は日本薬剤師研修センターの e-learning システムで提供。申し込みは薬剤師会などは介さないで直接実施。
  2. 研修を修了した人には、日付や番号を付した修了証を発行し、修了した人の情報は、日本薬剤師研修センターから厚労省に直接報告する。なおこれには、システム上、勤務先の情報などは含まない。
  3. 厚労省はこれを基に修了者名簿として取りまとめるが、勤務先で緊急避妊薬の取り扱いがない、医療機関勤務、休職中などの理由で、名簿への記載を希望しない人については、自ら申請することも可能。
  4. これら研修修了者の情報は厚生労働省が情報の管理・更新等を行う

審査報告書のポイントによれば、日本薬剤師研修センターによる研修は、9月19日(金)にオープンする予定です。

「近隣の産婦人科医などとの連携体制の構築」については、それぞれの地域ごとでの対応が必要となるので、地域薬剤師会が主体となって情報を取りまとめる必要があるかもしれません。

また、都道府県ごとに、地域にどういった相談支援機関があるかの確認も必要でしょう。

一方、「プライバシーへの十分な配慮などに対応できる体制の整備」については、全ての薬局が専門のカウセリングスペースを有しているとは限らないので、他の患者さんなどがいない時間帯などでの対応でも可能ではないでしょうか。

面前服用など、国会の附帯決議(→TOPICS 2025.05.132025.04.16)にあるように、まださまざまな課題が残ります。27日の自民党の厚生労働部会「薬事に関する小委員会」や今回の部会で、一定期間後、見直しの議論を行う方針も示されたそうなので、今後はこれからの実績や当事者の声が重要となります。

販売の開始時期ですが、近日中にパブリックコメントを開始したうえで、正式な承認と特定要指導医薬品への指定をもって販売が可能となります。(パブコメはこれまで通りの決まりですが、今の陰謀論があるなかで、これをやると意味がない反対意見がたくさん出ると思う)

おそらく製薬会社はかなりの準備をすすめていると思いますので、遅くとも現在の試験販売が終了する来年の3月までには販売が開始されるのではないでしょうか。(研修のシステムがうまく機能するかどうか次第ですが)

懸念は16歳未満の方が来局した場合での対応です。報道では年齢不問とはなっていますが、やはり16歳未満の人には販売はできないと思います。(審査報告書のポイントp5-7

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  • 社会的支援が必要と認められる場合には、ワンストップ支援センター等の支援機関に連絡を促す。
  • 虐待の虐待が疑われる場合は、薬局から直接、児童相談所へ通報。
  • 性犯罪の証拠保全の必要がある場合、産婦人科を紹介するとともに警察等にも相談。

の部分は、薬剤師にとって、かなりの判断やスキルが求められるような気があり、プレッシャーとなることも想定されます。

産婦人科との連携や行政とのつなぎ先を地域薬剤師会単位でしっかりと作る必要があるかもしれません。

あとは価格がいくらになるかですが、試験販売での価格と同等かそれよりも安くなるのか注目です。ただ、個人輸入で医療者が関与せずに安く入手できる現状も考えると、若い人でも入手しやすい価格設定が望まれます。

参考:
緊急避妊薬のOTC化、面前服用を支持  自民・薬事小委、使用年限は「不要」
(日刊薬業 2025.08.27)
https://nk.jiho.jp/article/201416

緊急避妊薬、市販化へ 薬局で薬剤師が対面販売 早期の服用しやすく
(朝日新聞 2025.08.29)
https://www.asahi.com/articles/AST8Y220WT8YUTFL01LM.html

早く飲むほど高効果、課題は価格 緊急避妊薬、薬局でも購入可能に
(朝日新聞 2025.08.29)
https://www.asahi.com/articles/AST8X368MT8XUTFL014M.html

「緊急避妊薬」の市販化了承 意図しない妊娠防ぐ 厚労省部会
(毎日新聞 2025.08.29)
https://mainichi.jp/articles/20250829/k00/00m/040/264000c

面前服用、販売する薬局数… 緊急避妊薬のアクセス改善に課題
(毎日新聞 2025.08.29)
https://mainichi.jp/articles/20250829/k00/00m/040/277000c

緊急避妊薬の市販 年齢制限付けず、対面販売を義務化 厚労省が方針
(毎日新聞 2025.08.27)
https://mainichi.jp/articles/20250827/k00/00m/040/204000c

関連情報:TOPICS
2025.07.08 緊急避妊薬の薬局販売に備えて求められる知識とは?(厚生労働科学研究)
2025.05.23 緊急避妊薬のスイッチOTC化に向けての議論(評価検討会議)
2025.05.17 緊急避妊薬のOTC化についての現場の認識(2020-21年調査)
2025.05.14 令和6年度緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業報告書
2025.05.12 緊急避妊薬の特定要指導医薬品化で想定されること(参院厚労委
2025.04.20 海外における緊急避妊薬の規制状況と日本でも求められる施策
2011.02.23 緊急避妊薬・ノルレボ錠が正式承認、パブコメ結果も公表

2025年8月29日 23:18更新


2025年08月29日 19:47 投稿

コメントが5つあります

  1. アポネット 小嶋

    関連記事です

    審査報告書の概要や研修に関する情報がかかれています
    必読です

    研修は、日本薬剤師研修センターHPにて、9月19日(金)オンライン研修としてオープン予定だそうです

    【厚労省】緊急避妊薬のスイッチOTC薬を承認/改正薬機法の初の「特定要指導医薬品」に指定
    (ドラビズon-line 2025.08.29)
    https://www.dgs-on-line.com/articles/3070

  2. アポネット 小嶋

    パブコメが開始されました。
    受付締切は9月28日です

    特定要指導医薬品への告示は令和7年12月予定だそうです

    【e-gov】
    医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第四条第五項第三号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する要指導医薬品の一部を改正する告示(案)に関する御意見の募集について
    https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&id=495250147

  3. アポネット 小嶋

    パブリックコメントが始まっていることを一度投稿しましたが、昨日確認しましたら、3つになっていました。

    法律の建付けだけの話だと思いますが、どう違うのか非常にわかりづらいパブリックコメントです。

    以下私の解釈です

    医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第四条第六項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する要指導医薬品を定める件(案)に関する御意見の募集について
    https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&id=495250149

    法律第四条第六項のニ

    「一般用医薬品 医薬品の特性及び使用の実態その他を勘案して、その適正な使用のために薬剤師の対面等による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われる必要がある場合」

    に該当するとして、要指導医薬品に指定しますのでよいですか? というもの

    医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第四条第三項第四号ロの規定に基づき厚生労働大臣が指定する特定要指導医薬品を定める件(案)に関する御意見の募集について
    https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&id=495250148

    法律第四条第三項第四号ロ(その薬局において医薬品の販売業を併せ行う場合に必要な書類)

    「その薬局においてその薬局以外の場所にいる者に対して要指導医薬品(その適正な使用のために薬剤師の対面による販売又は授与が行われることが特に必要な要指導医薬品として、厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定する要指導医薬品(以下「特定要指導医薬品」という。)を除く。)又は一般用医薬品を販売し、又は授与する場合にあつては、その者との間の通信手段その他の厚生労働省令で定める事項を記載した書類」

    つまり、今後書類を提出した場合はレボノルゲストレルも含めたものになりますのでよろしいですか? というもの

    医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第四条第五項第三号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する要指導医薬品の一部を改正する告示(案)に関する御意見の募集について
    https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&id=495250147

    法律第四条第五項第三号の規定(要指導医薬品のリスト)
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81ab4084&dataType=0&pageNo=1&mode=0

    の一に、新たにレボノルゲストレルを追加するけど、

    法改正で

    「薬剤師の対面又は映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法その他の方法により薬剤若しくは医薬品の適正な使用を確保することが可能であると認められる方法として厚生労働省令で定めるもの」

    が加えられたので、新たに三というものを設定しますので、レボノルゲストレルは一ではなく、新たに三に指定して一からは削除しますのでよろしいですか?

    ということではないかと解釈しています

    (参考)
    医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145/20260501_507AC0000000037

    ですのでもし、市販化(要指導医薬品の指定)は不適という意見であれば、一番目の意見募集に

    「面前服用への早期見直しを求めたい」「オンラインでの情報提供は好ましくない」という意見であれば、三番目の意見募集となるのでしょうか?

  4. アポネット 小嶋

    研修申込サイトがオープンになりました

    緊急避妊薬の調剤及び販売に関するe-ラーニング
    (日本薬剤師研修センター)
    https://www.jpec.or.jp/kenshu/jyukou/othertraining_jpec_host.html

    研修開始に合わせて、厚労省の「オンライン診療に係る緊急避妊薬の調剤が対応可能な薬剤師及び薬局の一覧」のページに「要指導医薬品たる緊急避妊薬の販売が可能な薬局・店舗販売業の店舗及び薬剤師の一覧」が追加

    研修を終了した薬剤師の登録申請へのリンクもあります

    「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づく薬局における調剤」及び「薬局・店舗販売業の店舗における要指導医薬品たる緊急避妊薬の販売」について
    https://www.mhlw.go.jp/stf/kinnkyuuhininnyaku.html

    一方、後日、近隣の産婦人科医等との連携体制について申告が必要のようです

    >販売要件である「近隣の産婦人科医等との連携体制を構築」の詳細については別途通知することとしており、当該通知に基づき連携構築後、改めての申告が必要になることにご留意ください。

  5. アポネット 小嶋

    上記のページをよく見たら関連の通知がありました。

    こういったいろいろな要求が取り扱いのハードルをあげないといいのですが

    緊急避妊薬を調剤・販売する薬剤師及び販売する薬局・店舗販売業の店舗について
    (厚労省 令和7年9月18日 医薬総発0918第2号,医薬薬審発0918第3号)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001565836.pdf

    1.薬剤師が修了すべき研修について
    2.指針を踏まえ緊急避妊薬を調剤する薬局について
    3.要指導医薬品たる緊急避妊薬を販売する薬局及び店舗販売業の店舗並びに販売する薬剤師について
    4.その他

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