豪州の薬局・薬剤師関連の3団体の、Pharmaceutical Society of Australia、the Pharmacy Guild of Australia(PSA)、AdPha (Advanced Pharmacy Australia)は29日、共同で薬剤師が業務範囲内で自律的に医薬品を処方できる枠組みを提案しています。
【Pharmaceutical Society of Australia他 2025.10.29】
Patients to get Improved Access and Care from Autonomous Pharmacist Prescribing Model
https://www.psa.org.au/patients-to-get-improved-access-and-care-from-autonomous-pharmacist-prescribing-model/
自律的処方(autonomous prescribing)とは、医療専門家が認定研修課程の修了に基づき、患者および医療チームの全てのメンバーとの適切な協力関係の下で、各自が自己決定し文書化され承認された業務範囲内で、あらゆるスケージュール(Schedule)の医薬品の処方を実施することを指すものです。
提案した枠組みでは、認定トレーニングコースの修了後、資格を有する薬剤師が、Schedule2(pharmacy medicines)、Schedule3 (pharmacist-only medicines)、Schedule4(prescription-only medicines)、Schedule8 (controlled drugs)の医薬品を入手、所持、処方、販売、供給、または使用できるようになるというものです。
認定処方者(endorsed prescribers)として薬剤師を国家登録することで、薬剤師による処方箋発行が20年間実施されている英国、カナダ、ニュージーランドなどの他国・地域と同水準に並ぶことになり、国際的およびオーストラリア国内のエビデンスに基づけば、患者の安全性、ケアの質、アクセスの向上、医療システム資源の効率的な活用につながります。
重要な点として、本提言は政府との連携を求め、認定薬剤師が処方した医薬品について患者がPBS補助金を確実に受けられるようにすることを提唱しています。これにより経済的障壁が取り除かれ、医療における公平性が向上します。
薬剤師が自律的に処方できるようになれば、次のようなメリットがあります。
- 特に医療サービスが行き届いていない地域において、タイムリーな医療へのアクセスを改善します。
- 一般診療(general practice)と救急部門への負担を軽減します。
- 統合された患者中心のサービスを通じてケアの継続性を強化します。
- 管轄区域間の差異を解消し、労働力の移動をサポートします。
- モデル化により年間豪6億ドル(600億円)以上の節約が可能となり、大きな経済的メリットをもたらします。
こちらが、保健相の指⽰により、3団体がまとめた認定薬剤師による処方モデル
Joint Pharmacy Organisations’Paper for Endorsed Pharmacist Prescribers
https://www.guild.org.au/__data/assets/pdf_file/0035/168947/Endorsed-Pharmacist-Prescribers-Submission.pdf
過去数十年にわたり、医療従事者不足と医療需要の増加という環境下で、医療システム内の非医師による処方がその業務範囲を広く認められるようになり、質の⾼い医療へのアクセスを確保する上でますます重要になっている。
従来、医薬品は主に開業医によって処⽅されていたが、オーストラリアがこのモデルに依存し続けると、医療へのアクセスは深刻な支障をきたす可能性が高い。
薬剤師は、薬理学、治療学、病態管理、薬物動態学、薬物相互作用、副作用、薬剤安全、そして法的要件に関する訓練と専門知識を有しているため、非医師処⽅者として適任である。
国際的には、薬剤師による処⽅は、英国、⽶国、カナダ、ニュージーランドで様々なモデルで導⼊されている。
オーストラリアでは、過去10年間に薬剤師による処⽅の安全性と質を評価するための多数の研究が実施されてきた。
これらの研究は、薬剤師による処⽅が安全かつ効果的であることを実証している。
本稿は、国家法第14条に基づく薬剤師による処⽅発行承認モデルの開発を裏付けるエビデンスを概説する。
委員会は、適切な資格を有する薬剤師のみが登録されることを保証する。
さらに、委員会は薬剤師の登録基準、規範、ガイドラインの策定、および届出の管理を担当する。
国家処⽅能力フレームワークで定義されている処⽅とは、情報収集、臨床的意思決定および共同意思決定、コミュニケーション、そして評価というステップを経る動的なプロセスであり、その結果として薬剤の開始、継続、または中止が決定さる。
このフレームワークでは、患者中⼼の処⽅に必要な能力領域が、専門的実践能力によって支えられている。
上記モデルでは豪州国内外の様々なエビデンスを提示、また英国などの海外の取組と、豪州の各州、準州で行われているパイロットプログラムも紹介されています。
日本ではフォローアップなど、医師をサポートとすることで、医師への負担やケアの継続性、効率化につながるとした施策がとられていますが、海外では、むしろ薬剤師自身がスキルを確保し、限られた医療リソースとして直接ケアの継続性を目指しているように感じます。
こういったことは、もはや政治的マターだと考えますが、日本でも将来を見据えて、まずは試験的な取り組みを開始し、広げていくこと、そしてそれを踏まえて、薬剤師会、業界団体、そして薬科大学などが協力してこういったものをつくることが必要になっていくかもしれません。
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2025年10月29日 11:27 投稿

