去痰薬、乳児への有用性はない(フランス研究)

 以前、気管支内の分泌物増加のため気管支が閉塞し入院となったケースが相次いで報告されているとして、フランス保健製品衛生安全庁(afssaps:agence française de sécurité sanitaire des produits de santé)が、カルボシステイン・アセチルシステイン(日本では吸入薬)などの去痰薬(粘膜溶解薬)の2歳未満への使用を禁止したことを紹介(TOPICS 2010.05.022010.11.21)しましたが、その根拠ともなった有害事象の症例の事例をまとめた報告をフランスの研究グループが Plos One 誌に発表しています。

Respiratory Paradoxical Adverse Drug Reactions Associated with Acetylcysteine and Carbocysteine Systemic Use in Paediatric Patients: A National Survey
PLoS ONE 6(7): e22792.Published: July 27, 2011 オープンアクセス)
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0022792

 検討した事例は、製薬会社に報告のあった7例とpharmacovigilance センターに寄せられた52例の合わせて59例(カルボシステインが30例、アセチルシステインが28例、2剤使用が1例)です。

 症例のほとんどが2歳未満で、咳や呼吸困難など症状の悪化のために入院が必要なケースも51例あったそうです。(死亡例も1例)

 研究者らは、乳幼児の生理機能の問題や投与量の問題などが関連しているのではないかと指摘し、これら去痰薬は有用性が十分でなく、安全性に懸念があるとして、親、医師、薬剤師、規制機関はこれらの去痰薬はほとんど無効で、乳児への使用は入手できるデータからほとんど役に立たないと知っておくべきであるとしています。

 日本だけでなく、欧州でも乳幼児に対してこれら去痰薬は広く使われているようですが、こういった有害事象はフランスだけのことなのか、それとも医療専門職が気づかないのか、私たちもちょっと関心を持ってもいいかもしれません。

関連論文
Acetylcysteine and carbocysteine for acute upper and lower respiratory tract infections in paediatric patients without chronic broncho-pulmonary disease.
(Cochrane Database Syst Rev. 2009 Jan 21;(1):CD003124.)(上記引用論文)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19160217

(2012.04.19追記)関連記事(要会員登録):
乳幼児への去痰薬使用に警鐘,フランスの小児科医ら
(MTPro 2011.08.01)
https://medical-tribune.co.jp/mtpronews/1108/1108004.html

関連情報:TOPICS
  2010.05.02 2歳未満に去痰薬は推奨できない(フランス)
  2010.11.21 小児に咳止め薬は使用すべきでない(フランス)


2011年07月29日 16:23 投稿

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