2歳未満に去痰薬は推奨できない(フランス)

 小児への風邪薬・咳止め薬の使用については、その有効性と安全性をめぐって各国でレビューが行われていますが、フランスの当局のafssaps(agence française de sécurité sanitaire des produits de santé)は29日、カルボシステイン・アセチルシステイン(日本では吸入薬)などの去痰薬(粘膜溶解薬)、安息香酸メグルミン?について、OTC薬(処方せん薬については現在確認中)の2歳未満への適応を削除すると発表しました。(フランス語による情報です。誤りがあるかもしれませんので、原文をご確認下さい)

Médicaments mucolytiques, mucofluidifiants et Hélicidine® : contre-indication chez l’enfant de moins de deux ans – Communiqué
(afssaps→ANSM 2010.4.29)

Contre-indication chez le nourrisson des spécialités mucolytiques (carbocistéine, acétylcystéine), mucofluidifiantes (benzoate de méglumine) administrées par voie orale et de l’hélicidine – Lettre aux professionnels de santé
(afssaps 2010.4.29)(リンク切れ)

Spécialités mucolytiques (carbocistéine, acétylcystéine), mucofluidifiantes (benzoate de méglumine) administrées par voie orale et l’hélicidine : contre-indication chez le nourrisson – Lettre aux professionnels de santé
(afssaps→ANSM 2010.04.29)

 afssapによれば今回の措置は、気管支炎などでこれらを使用した小児で、気管支内の分泌物増加のため気管支が閉塞し入院となったケースが相次いで報告(2008年2月までに70例、うち半数が1歳未満)されているため(小児は生理機能が対応できないらしい)で、小児のみの適応しかないOTC3製品が回収、その他約30製品のラベル変更が行われるようです。

Contre-indication des mucolytiques chez l’enfant de moins de 2 ans
(サノフィ・アベンフィス社フランスウェブサイト)
http://www.sanofi-aventis.fr/l/fr/fr/layout.jsp?cnt=EBB991EF-1137-41B6-8A22-1665DEA85A9B
(リンク切れ)

 そこで、Pubmedで、carbocystein・france・infantをキーワードに検索をかけ論文をチェックしたところ、2歳未満への使用について安全性への懸念が以前から指摘されているんですね。

[Mucolytic agents for acute respiratory tract infections in infants: a pharmacoepidemiologic problem?]
(Arch Pediatr. 2002 Nov;9(11):1128-36.) 原文はフランス語・英語のアブストラクト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12503503

Acetylcysteine and carbocysteine for acute upper and lower respiratory tract infections in paediatric patients without chronic broncho-pulmonary disease.
(Cochrane Database Syst Rev. 2009 Jan 21;(1):CD003124.)(上記関連論文)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19160217

 去痰薬にこういったリスクがあるというのは知りませんでしたね。去痰薬の種類によってリスクに差があるのでしょうか。

 米国・カナダ・英国・豪州・NZなどが、小児への去痰薬の使用制限を行う理由がうなずけます。

 afssapでは現在、粘液溶解薬のレビューに伴い、気道を乾燥させ、気管分泌液の粘性化の可能性がある抗ヒスタミン剤についてもレビューを行っていて、こちらも今年の10月にレビューの結果が公表されるとのことです。

2019.01.23 リンク修正


2010年05月02日 15:12 投稿

コメントが3つあります

  1. アポネット 小嶋

    英語の記事が出ていました。

    Children’s cough medicines banned(→リンク
    (The Connexion 2009.4.30)

  2.  10月28日付けで、フォローアップの通知がAfssapsから出されています。
     広範な内容となっており、2歳未満(一部は30か月齢未満)の子供には、原則として薬を飲ませるなという、小児科医の主張が全面的に出たものとなっています。
     興味深いのは、単に薬を飲ませるなだけではなく、どのような場合には医師の診察を得るようにすべきかを含めた啓発を行うとしていることです。

  3. アポネット 小嶋

    まいけるさん、いつも情報ありがとうございます。

    掲載ページを見つけましたので、内容を確認してから、コメントまたは記事にします。