令和7年12月13日に武蔵野大学で開催された教養講座での、松本俊彦先生の講演動画です。
アリルイソピルアセチル尿素やカフェイン配合などのOTC メーカーの戦略や、旧薬事法改正以降の薬事政策を厳しく批判し、ドラッグストア業界のあり方や薬剤師不在の販売現場を懸念されています。
また、OTCを濫用する若者が登録販売者の試験に挑戦しているという話には驚きました。
前半の部分を一部抜粋しました。(動画が削除されないといいな)
学校法人 武蔵野大学後援会 第94回教養講座 なぜ若者はオーバードーズをするのか? ~市販薬乱用の理解と援助~(講師:松本俊彦氏)
(武蔵野大学後援会 2026.01.08)
https://www.youtube.com/watch?v=ENhO-DI3BPQ&t=1527s
(16:30)
これまで皆さんは、「市販薬っていうのはお医者さんでもらう薬よりも効果が弱いけれども副作用も少ない」そう思ってませんでしたか?それ嘘ですから。
市販薬はめちゃくちゃ古いんですよ。医療の現場で 使い物にならなくなったものがドラッグストアで売られている。
残念ながらこれが市販薬の現状です。
(21:13)
何で販売の個数が制限されてるのにこんなに乱用者が増えちゃうんだと思います。
何ででしょう?
だって1つしか買えないんですよ。
それはドラッグストアがめちゃくちゃ増えてるからですよね。
(23:13)
(国は年々高騰する医療費を少しでも削減するために)とにかく病院じゃなくて ドラッグストアでなんとかやってっていう形に流そうとしている。
国民が病院に行っちゃう前にドラッグストアに行ってもらうためには、ドラッグストアの店舗を増やさなきゃいけない。
でもこれまで店舗を増やすのでネックになっていたのは専従して管理する薬剤師が必要だった。
つまり処方薬の調剤する権限も市販薬を売る権限をも全て薬剤師が持っていた。
この薬剤師から市販薬の販売権の一部を奪い取る。これがまあ国として行われたわけです。
そこで2009年登録販売者という資格ができました。
高校を卒業して、え、そして1年以上の市範薬の販売実務の経験があれば、 国の定める試験を受けて合格すると都道府県知事から登録販売者として市範薬を売ることができます。
(24:10)
市販薬の96%は2類もしくは3類です。
そして先ほど紹介した乱用者に人気のある薬剤、あれは全て2類です。
つまりドラッグストアでは薬剤師さんは乱用者に一切関わることができません。
調剤室にこもりっきりだという状況です。
さらにこの登録販売者を増やすための施策変更が行われました。
これまでは高校卒業以上の学歴を問うていた。
それから市販薬の販売実務経験を問うていたんですが、それ全部不問にしました。
学歴も問わない。
販売実務経験も問わない。
試験一発勝負にしたんですよ。
そうすると若者たちの中で高校生とか大学生の中で腕に覚えのある、ちょっと市販薬に詳しいんっすよねっていう人たちが試験を受けるようになったんですよ。
でも市販薬に詳しい若者ってどんな若者だと思います?
愛好家の方たちですよね。市販薬の。
だからもう元々関心があるから勉強を始めるとなんか砂漠に水が吸い込むように知識が入ってくわけですよ。当たり前なんですけど。
実際私の外来に来ている市販薬依存症の子たちに「将来の夢は何」と、みんな登録販売者ですっていうふうに言っています。
試験勉強もしてます。合格者も出ています。
(25:59)
私の患者さんなんかでも登録販売者目指してる子たち、どんな目的で目指しているかって言うと、
「自分も昔、市販薬のオーバードーズで悩んでいたから、今悩んでいる若い子たちを救いたい」だったら美談なんですが
いや、そうじゃなくて、
「最近ドラッグストアすごく売り渋るからなかなか購入するのも大変。だったら売る側に回っちゃえばいいかなと思いまして」って
え、それって覚醒剤愛好家の方たちが しばしば販売業者の方も担ってしまうのと一緒じゃんっていう、こういう状況なんですよ。
(27:15)
しかも今年の5月には国会で今度は市販薬をコンビニでも売ろうという法案が可決されてしまいました。
この時にある野党の議員はですね、「今若者たちの市販薬のオーバードーズがこれほど問題になってるのにコンビニで売ったらもっとやばくならないですか」って話をしたんですね。
そうしたら、与党の議員で元々厚生労働大臣をされた方が、それに対してですね、
「少数の不届き者のために国民全体の医薬品へのアクセスが妨げられてはならない」
みたいなことが言われて、この法案が可決されてしまったんですよ。
多分日本の未来はあんまり明るくない気がしています。
ちなみになんですが、こちらはですね、今言った代表的な市販薬に含まれてる様々な成分を示してます。
健康・医療・介護ワーキング・グループ事務局提出資料
(2024.11.25 規制改革推進会議)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2409_04medical/241125/medical_ref0101.pdf
エフェドリン、これ覚醒剤。それからコデインは麻薬、ジヒドロコデインも麻薬、それからブロモバレル尿素、あの、もう自殺未遂の道具じゃないかって言った古いタイプの睡眠薬の成分。それから、プソイドエフェドリン。これ覚醒剤剤原料。メチルフェドリン。
日本は全部オッケーなんですが、アメリカ、イギリス、フランス 、ドイツ、カナダと、西側の先進国見てどうですか?
結構市販薬に入れちゃダメとか、昔は市販薬に入れてよかったんだけど、やっぱりいろんな問題が生じたからもう処方箋がなきゃダめにしたとか、あるいは 処方箋があってもダメとか結構厳しくしてるんですよ。
ま、当たり前ですよね。
だって覚醒剤原料や麻薬ですから。ところが日本はなんか全部ゆるゆるでオッケーなんですよ。違法薬物には異様に厳しいんだけど、医薬品には異様に緩いんですね。
(30:05)
でも本当にこのスイッチOTCって、安全なのかってことなんです。
例えばこれロキソニンです。皆さんもよく ご存知の鎮痛解熱薬ですよね。
昔は、処方箋がないといけなかったんですが、数年前からスイッチOTCとして ドラッグストアでも購入できるようになりました。
で、ドラッグストアに行ってロキソニンのコーナーを見てみると、たくさんロキソニンがありますよね。 めっちゃあります。
どのロキソニンを買ったらいいか分からなくないですか?
皆さんが頭痛や腰痛あるいは生理痛で苦しくて、ロキソニンが欲しいと思ってる時にたくさんロキソニンで裏側を見て成分を調べて。「あ、私はこれだな」とか分かりますか? わからないですよね。
で、痛くて痛くて切発詰まってる時にどうします?
たぶん国民の消費者の一般的な心理は1番高い、1番高級なロキソニンを買うと思うんですよ。
その市販されてるロキソニンのハイエンド商品、最高級品は何かというとロキソニンSプレミアムという製品なんですよ。
大体市販薬で新製品が出ると プレミアムとかエースとかクイックとかつきますよね。
そのたびに、やばい物質がどんどん増えてって、やばくやばさが増してるわけなんですが、ロキソニンSプレミアムはまさにその通りです。
ロキソプロフェンという、鎮痛解熱成分はもちろん入っていますが、処方薬には入っていないおまけの成分が色々と追加されています。
1つはアリルイソプロピルアセチル尿素。
これは先ほど出たブロモバレリル尿素の親戚みたいな尿素系の鎮鎮成分なんです。
で、この成分は実は80年前からアメリカでは医療の現場では一切使用禁止になってます。
なぜならば、漫然とこの成分が入ってる医薬品を摂取してると血小板減少性紫斑病といって血小板の数が下がってしまって出血しやすい体質になる。
ちょっとどっかにぶつけただけで皮下出血・青たんができてしまう。
こうなってるので、使うのは禁止になってます。
そして、現在もアメリカ以外にもオーストラリア、 カナダ、韓国で、市販薬に使っちゃいけないというふうに言われています。
でも日本の製薬メーカーめっちゃこれが好きです。
イブAとか、ナロンとか、セデスとか、これたくさんこれ入ってます。
それからもう1つカフェインです。
結構市販薬にはカフェインが入っています。
なんでカフェイン入れるのかメーカーに聞いてみると、「薬効を強めるのにカフェインがいいんです」って言ってるけど 、いや、薬効を強めるんでしょうと。
カフェインって疲れた時に飲むと元気出た感じしませんか?
変な話、カフェインって割とあの効果が自覚しやすいドラッグですよ。
だから市販薬に入れると効いてる感じがするんですよ。なんか体がポッポしてきて。
だからそれで入ってるんだと思うんです。
問題はこのカフェインを含まんでるものを常用することの問題なんです。
もちろんコーヒーが大好きで、ていうかもうコーヒー中毒って言ってもいいぐらいコーヒーが大好きな人は、こんな市販薬に含まれているカフェインはどってことはないんだけど、中には自分はカフェインに敏感の体質だから、なるべくそのカフェインを取らないようにしてる、コーヒーは飲まないようにしてるし、お茶なんかもできればほうじ茶にしている。いや、もちろん朝は煎茶を飲んだりするけど、午後にはカフェインの入ってるものを取らないようにしてるんだよねっていうふうにしてる人いると思います。
それはいいことなんですよ。だってカフェインって血液血中の濃度が半減するのが個人差ありますけど5時間から8時間かかるんですよ。
だから午後3時以降にカフェインを摂取すると、夜眠る頃にまだカフェインが残ってるんですよ。
でそれで眠れないからって眠剤飲むとか馬鹿げててるじゃないですか。
で朝起きたら眠剤が残っていて眠いからまたコーヒー飲むとかってもう地獄の なんかこうね永久機会みたいになっちゃうので。
いやそれは正しいんです。でもそんなふうに慎重にカフェインを下げてる方がロキソニンSプレミアムを頭痛のために飲んでたとしますよね。
毎日飲んでたら、あ、頭痛治ったからもうカフェインを飲むのやめようと思ってロキソニンをやめると多分その日のうちに頭痛がすると思うんですよ。
なぜかというと、多分カフェインを1日100mg以上取ってる人は急にやめると離脱症状、カフェインの離脱で頭痛が生じるんです。
やっぱ飲まないと頭が痛いわっていうことで、またロキソニンを飲んで、そういえばロキソニンになるんですよ。
何を言いたいかと言うと、やっぱり市販薬は売らんかなの世界なので 、多くのユーザーたちに延々と長く飲んでもらう、愛され続けるための、こう微妙な工夫がされてるっていうことなんですよ。
これがその市販薬っていうものの性質なんですね。 商業だってこと。
そのことをですね、やっぱ我々は忘れてはならないのかなっていうふうに思うわけです。
こちらも目に留まっていました
市販薬に含まれる成分は、今日の医療の水準から見ると驚くほど旧式で,大量摂取による健康被害が処方薬より少ないとはいえないことであり、もう一つは,すでに10代の子どもはその被害に遭っている,ということである
薬物依存症の今 ─乱用薬物の動向と今後の課題─ (松本 俊彦)
(Animus 2021.No107)
https://www.medience.co.jp/drugabuse/column/pdf/no107_05.pdf
関連情報:TOPICS
2024.08.16 海外におけるアリルイソプロピルアセチル尿素の規制状況メモ(未定稿)
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2026年04月27日 16:06 投稿

