危険ドラッグ(脱法ハーブ)等摂取後の救急搬送の実態(Update)

 現在、危険ドラッグ摂取後による健康被害や危険行動は大きな社会問題となっていますが、Internal Medicine 誌の最新号に、救急搬送の事例についての調査結果が掲載されています。

A Multicenter Retrospective Survey of Poisoning after Consumption of Products Containing Synthetic Chemicals in Japan
(Intern Med 53(21) 2439-2445, 2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/53/21/53_53.2344/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/53/21/53_53.2344/_pdf

 この調査は危険ドラッグ(脱法ハーブ)など合成薬物(SC:synthetic chemicals)を摂取後に60施設に救急搬送された518人を解析したもので。おそらく、7月に日本中毒学会で発表されたものが論文化されたものと思われます。(厚生労働科学研究としてもまとめられる)

以下、調査結果を抜粋します。

  • 調査は、会員が、日本救急医学会、日本中毒学会に所属している467の救急施設を対象に行われ、60(12.8%)の施設から回答を得た。(つまり実態はもっとこれより深刻という可能性がある)
  • 調査機関は2006年1月~2012年12月で、搬送数は2009年まではゼロ、2010年は1人だったが、2011年に48人、2012年は469人に急増した。
  • 男性が425人(82.0%)で女性の4.57倍だった。
  • 患者の平均年齢は28.4歳で、20歳未満も9.3%で、最も若かったのは父親のハーブ製品を摂取した1歳の男児だった。
  • 入手経路が明らかになった202人について尋ねたところ、84人(41.6%)が店舗で購入、56人(27.7%)が他人から譲受、39人(19.3%)がインターネットで購入、27人(13.4%)が自販機などのルートで入手した。
  • 450人で使用製品が確認され、その形態の内訳は、consumed herbs(お香?)が387(86.0%)ともっとも多かった
  • 480人で使用方法が確認され、87.5%はハーブ等を燃やした煙の吸引だったが、肛門から挿入する事例もあった。
  • 23.6%でアルコール、4.9%でBZ系など中枢神経系薬剤との同時摂取がみられた。
  • 10.8%で他者への暴力、交通事故、自殺目的などの危険行動を伴った。
  • 搬送時には、頻脈(100回以上/分が48.5%)や呼吸数増、意識障害などのバイタルサインが見られた他、嘔吐(24.9%)、興奮(23.6%)などの症状がみられることが多かった
  • また10.0%で横紋筋融解症、4.8%で腎機能障害、4.8%で肝機能障害が認められた。
  • 182人(35.1%)が入院となり、精神神経症状のために専門病院に転送された人もいた。

 論文では、検出された物質や人体に与える影響、治療なども取り上げられていますので、興味ある方は一読をお勧めします。

 なお、広島県の事例が下記冊子(p20)で紹介されていたので、ご参考下さい。(薬物乱用教育などでも活用できる非常に有用な資料です)

知っておきたい薬物の乱用・依存に関する基礎知識
(広島県医師会 2013.09)
http://www.hiroshima.med.or.jp/pamphlet/276/
http://www.hiroshima.med.or.jp/pamphlet/docs/2013.pdf

 また、消防庁では9月に、2009年1月から2014年6月までの「危険ドラッグ」によるものと疑われる救急搬送人員数をの調査結果を公表しています。

「危険ドラッグ」によるものと疑われる救急搬送の状況
(消防庁2014.09.19)
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h26/2609/260919_1houdou/03_houdoushiryou.pdf

 上記論文と同様、救急搬送数は、2009年の30人、2010年の65人から、2011年に602人と急増。2012年は1785人で3倍増となった。2013年は1346人とやや減少したが、2014年は上半期だけですでに621人に上っています。

 さらに、10月16日の参院厚生労働委員会で、民主党の津田弥太郎氏の質問に対し政府参考人が、危険ドラッグを使用したことが原因で死亡したとみられる人は今年1~9月の間で計74人に上っていることを明らかにしています。

参院厚生労働委員会議事録(2014.10.16)
http://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0107/187/18710160062002a.html

関連記事:
危険ドラッグ、救急搬送が急増 2011年を境に
(朝日新聞 2014.07.24)
http://www.asahi.com/articles/ASG7H4HWRG7HULBJ00S.html
命を奪う危険ドラッグ
(クローズアップ現代 2014.07.30)
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3537_all.html
違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)の乱用拡大とその規制
(精神保健研究 (60) 11-15,2014)
http://www.ncnp.go.jp/nimh/pdf/kenkyu60.pdf#page=10
危険ドラッグ、5年半で4469人搬送 消防庁が初集計
(日本経済新聞 2014.09.20)
http://s.nikkei.com/1qRU0Jc
中毒事故の集中発生にどう手を打つ?|危険ドラッグ対策
(弁護士小森榮の薬物問題ノート 2014.10.17-18)
http://33765910.at.webry.info/201410/article_7.html
http://33765910.at.webry.info/201410/article_8.html

14:25 更新


2014年11月02日 11:04 投稿

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