これまでドイツといえば、地域薬局は高齢者施設への医薬品の供給を担っているもの、薬局間で不公平が生じないよう、その供給は輪番制になっている他、施設患者における薬剤の管理等についても研修を受けた介護福祉士の仕事、また、在宅患者に対しても訪看Nrsの仕事とされています。
そうなると、こういった患者へのアドヒアランスを高めるための repackaging(分包作業)はどうなっているかということ頭をよぎりますが、最近の論文で現状を垣間見ることができました。
【Pharmacy 2025 Dec.13】
Impacts of Outsourcing Medication Repackaging in Nursing Homes: Quality and Areas of Pharmacy–Nursing Collaboration
https://www.mdpi.com/2226-4787/13/6/182
ドイツでは介護施設での入居者の薬剤をrepackagingする作業は、介護施設から薬局へますます外部委託される傾向にある
これまでは、コミュニティ薬局から提供された元のパックから薬剤管理装置に入居者の薬をrepackagingしていたのは介護施設だったが、repackaging のプロセスはますますコミュニティ薬局に外注されており、さらにコミュニティ薬局がその作業を実行するために工業的な(半)自動投薬プロバイダーに頼ることが多くなっている。
この研究は薬剤のrepackaging のアウトソーシングが2つの専門職間の連携の質と内容に変化をもたらすかどうかを調査。
136施設(50.7%)は介護施設のスタッフが入居者の薬を服薬管理容器にrepackaging していると回答したが、132施設(49.3%)は薬局にrepackaging 作業を外注していると回答。
介護施設の看護スタッフと薬局薬剤師スタッフとの連携の質は概ね高く、施設内でrepackaging を行っている施設と外部委託している施設の間ではわずかな差しか見られなかった。
「便宜」のサブスケールとそれに対応する項目「利便性への配慮」は院内薬剤再包装を行っている施設でより高く評価された一方、「コミュニケーション」のサブスケールに関連する項目「情報伝達」は、院内薬剤再包装を外部委託している施設の回答者の方が高く評価された。
一方で、在宅患者に対してはさまざまな、服薬管理デバイス(MOD:Medication Organization Device)が訪看Nrsによって行われているようです
【Healthcare. 2022 Mar 25】
Nurse-Filled versus Pharmacy-Filled Medication Organization Devices-Survey on Current Practices and Views of Home Care Nursing Services
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9028845/
在宅患者の 服薬管理デバイス(MOD)へのセットは、薬局ではなく訪問看護サービスにより実施されている。
こういった背景には、薬局では使い捨てのMODが使用されている一方、訪問看護サービスで再利用が可能なMODが使用できる点がある
また、薬剤の変更の場合の柔軟性が不足することや、看護スタッフが自らMODにセットすることで、スタッフの薬剤知識に対する満足度が有意に高い点にある。
これは、看護サービスが自らMODを充填することで、スタッフが患者の薬剤リストや薬剤の外観を把握しやすくなると考えているためとも考えられた。
さらに、ドイツでは薬局は介護施設と取引する際には権利と義務を明確に規定した契約を締結することが法的に義務付けられているが、在宅介護サービスについてはそうではないということ点も背景にある。
上記を見る限り、ドイツでは地域薬剤師が直接現場に赴いて、服薬管理をすることは基本的にないようです。
参考
薬局・薬剤師に求められる役割(No.131)
(健保連海外医療保障 2023.03)
https://knp-digitalbook.libra.jpn.com/#/home#58
日本の薬局薬剤師は、患者や社会にもっとアピールしてもいい~ドイツの薬局開設者・アッセンハイマー慶子氏がエール
(日経DI 2014.06.04)
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201406/536807.html
2025年12月19日 14:16 投稿
