管理薬剤師のワークエンゲージメントに影響を与えるものとは?

ワークエンゲージメントという概念をご存じでしょうか? 私はこの論文でワークエンゲージメントという概念を初めて知りました。

日本能率協会マネジメントセンターによれば、「従業員が仕事に対してポジティブな感情を持ち、充実している状態」とのことで、ワークエンゲージメントを構成する特徴として以下の3つが挙げられるとしています。

活力(Vigor)
活力は、仕事に対してのエネルギーが高く、心理的な回復力、そして仕事への努力、困難な課題にも積極的に解決に取り組める状態に寄与。仕事から活力を得て生き生きしており、ストレスを感じることなく仕事を楽しめている状態。

熱意(Dedication)
熱意とは、仕事にやりがいを感じており、積極的に取り組もうとすることで、新しい商品の開発やサービスなどを生み出したりすることができる状態。常に仕事に対しての努力を継続することができ、新たな知識をインプットできるようになる。

没頭(Absorption)
没頭は、仕事に取り組んでいる際に幸福感や、時間が早く進むような感覚を得る状態のことを言う。没頭している状態では仕事の効率が上昇し、業務の品質や速度の向上、そして人為的なミスの削減にもつながる。

今回紹介する論文は、大手チェーン薬局4社の管理薬剤師に調査することにより、管理薬剤師が抱えるワークエンゲージメント(活力・熱意・没頭)の実態を明らかにし、関連要因を特定するというものです。

Explor Res Clin Soc Pharm.2025 Dec.5】
Exploring work engagement and its associated factors among supervising pharmacists in Japan
https://sciencedirect.com/science/article/pii/S2667276625001325

大手チェーン薬局4社(クオールアインI&Hスギ)の管理薬剤師を対象に横断調査を実施。

研究者らは、薬剤師が地域薬局において質の高い薬学的ケアを提供するためには、管理薬剤師が自身の職場環境と心理状態に配慮する必要があり、この役割を踏まえ、管理薬剤師のワーク・エンゲージメントを理解することは、現場の薬剤師が安全かつ効果的なケアを提供できる職場環境づくりにおいて重要な知見をもたらす可能性があるとして、ワークエンゲージメントの実態を明らかにし、関連要因を特定を試みた。

解析の結果、管理薬剤師のワーク・エンゲイジメントに有意に影響を与えるものとして、「仕事の意義」「適性」「職務のコントロール」「同僚からのサポート」「劣悪な物理的環境によるストレス」「職務の量的過負荷」「年齢層」の7つの因子が特定された。

一方で、参加者の25%以上が「仕事の量的な過負荷」に起因して高いストレスを経験していることが判明。薬局の拡大と地域格差による慢性的な人員不足の中、管理薬剤師はプレーヤーと管理者の役割を調整し、幅広い薬局業務を処理する必要があり、高い職務要求が生じているとしている。

研究者らは今後の人材育成においては、人員不足や職務の高需要の影響を緩和するために、専門スキルに秀でた「学習する個人」の育成だけでなく、チームワークを可能にする「学習コミュニティ」や「実践コミュニティ」の育成にも重点を置くべきであるとしています。

参考:
ワークエンゲージメントとは?高めるための取り組みから、測定方法まで詳しく解説
(JMAM 2025.11.21 Update)
https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0075-workengagement.html

人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-
(厚労省 令和元年版 労働経済の分析)
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/19/19-1.html

第II部 第1章 第1節
ワーク・エンゲイジメントに着目した「働きがい」をめぐる現状について
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3_01.pdf


2025年12月15日 15:32 投稿

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