少し前の論文ですが、前記事(→TOPICS 2025.12.09)関連で調べていたらヒットしたものです
研究ではNDBオープンデータを基に、オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、ペラミビル(ラピアクタ)、バロキサビル(ゾフルーザ)の5種類の抗インフルエンザ薬の処方状況を調査しています。
Prescription of anti-influenza drugs in Japan, 2014-2020: A retrospective study using open data from the national claims database
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37792686/
年間費用は223億~480億円と推定。
さらに関連で、年間に2,110万~3,200万件の迅速抗原検査が実施され、その費用は301億~471億円だった。
ラニナミビル(イナビル)が、2018年の発売年にバロキサビル(ゾフルーザ)に首位を譲ったが、そのほかの年ではトップだった。
論文では、日本ではラニナミビルが頻繁に処方されているが、その有効性を示すエビデンスは限られていると指摘。
12カ国で行われた第II相試験では、プラセボと比較して有効性が示さずれなかったが、日本で行われたランダム化比較試験では、緩和までの時間に関してオセルタミビルに対して非劣性が示されことから、ラニナミビルは日本でのみ承認されている。
米国と欧州で主要な抗インフルエンザ薬はオセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)である。
ラニナミビルとバロキサビルがなぜこれほど頻繁に処方されているのかは不明だが、日本の医師や患者は単回投与の簡便さを好むのかもしれない。
また、医師は従来の薬よりも新薬を好む傾向があり、処方はエビデンスやガイドラインではなく、製薬会社による新薬のプロモーションによって推進されているようだ。
これまでの費用対効果に関する研究では、日本におけるすべての抗インフルエンザ薬を包括的に分析しておらず、決定的な結果は得られていない。
研究者らは、エビデンスに基づいた抗インフルエンザ薬の処方が日本の臨床現場でしばしば無視されていることから、教育的介入の必要性が示唆されたとして、日本の医師がインフルエンザに対する薬剤処方をどのように決定しているかを調査する必要があるとしています。
ちなみに、最近の国内医薬品売上高ランキングによれば、2023年度にイナビルが159億円(2024年度は199億円)、タミフルが99億円だったそうです。
2023年度 国内医薬品売上高ランキング
(Answers News 2024.06.26)
https://answers.and-pro.jp/pharmanews/28186/
2024年度 国内医薬品売上高ランキング
(Answers News 2024.06.25)
https://answers.and-pro.jp/pharmanews/30410/
世界と比べ、抗インフルエンザ治療薬が多く使われていると言われている中、迅速検査も含め、限られた医療保険財源の中で、その負担や処方のあり方を考えた時、将来的には処方箋なしでの供給といったことも考える必要があるかもしれません
TOPICS:
2025.12.09 オセルタミビル、イナビル、シムビコートのスイッチは必要?(意見募集開始)
2014.08.22 ラニナミビル(イナビル)の欧米での開発は困難?
2025年12月11日 11:27 投稿
