仏当局のANSMは、2012年と2015年に医療従事者向けに警告と勧告が出されたにもかかわらず、ニコランジル含有薬剤の使用に関連する潰瘍や重篤な合併症の症例が依然として報告されていることから改めて注意喚起を発出しています
【ANSM 2025.11.12】
Médicaments à base de nicorandil : rappel sur le risque d’ulcérations et l’importance d’arrêter le traitement en présence de signes évocateurs
https://ansm.sante.fr/actualites/medicaments-a-base-de-nicorandil-rappel-sur-le-risque-dulcerations-et-limportance-darreter-le-traitement-en-presence-de-signes-evocateurs
ニコランジルは、身体の複数の部位（皮膚、粘膜、眼）に同時に発生し、穿孔、瘻孔、膿瘍、さらには消化管出血などの重篤な合併症を引き起こす可能性のある重篤な潰瘍を引き起こすことがあります。これらのリスクは、高齢者、多剤併用の患者、憩室疾患のある患者で特に高くなります。
潰瘍は、ニコランジル治療開始後数週間から数年後に発生する場合があります。
2012年に医療従事者向けの最初の警告が発せられた後、2015年11月には医療従事者に対して2通目の書簡が送られ、これらの薬剤は第一選択薬として使用すべきではないという適応制限について通知するとともに、潰瘍が発生した場合は治療を中止すべきであるとの勧告が再度強調されています。
ニコランジルに関連する潰瘍のリスクのモニタリングは、国内および欧州レベルで継続されています。
2016年から2017年にかけて、欧州医薬品庁の医薬品安全性委員会の要請により調査が実施、その結果を受けて、2021年には、製品概要（SmPC）と添付文書に記載されている副作用のリスクに関する情報と使用上の警告および注意事項が更新されています。
これらの更新では特に、潰瘍の発生の可能性に関連する新たな部位が追加され、既知の副作用の発生頻度が明確化されています。
こうした警告やSmPCおよび添付文書の更新にもかかわらず、フランスでは、誤用（抗炎症薬やコルチコステロイドの併用に関する禁忌や注意事項の遵守不履行）や、他の疾患（糖尿病、癌、アルコール乱用など）を併発している患者においても、新たな重篤な潰瘍症例が報告され続けています。
ANSMでは、服用中の患者に対し、以下の症状が 1 つ以上ある場合には服用を中止し、直ちに医師に相談することを呼び掛けています。
- 目の充血や痛み、涙目になる
- 口腔、皮膚、消化器、または会陰部の潰瘍（傷）
- 消化器出血（便に血が混じったり、血を吐いたりする）
- 腹痛、または原因不明の急激な体重減少
また、医師に対しては、労作性狭心症（安定狭心症）については、β遮断薬やカルシウム拮抗薬、徐放性硝酸塩製剤を優先とし、潰瘍の兆候が現れた場合は、その部位に関わらず、ニコランジルの投与を直ちに中止し、完全に中止することを呼び掛けています。
Médicament à base de nicorandil : Rappel sur le risque d’ulcérations, les interactions médicamenteuses (avec les AINS, l’aspirine et les corticoïdes) et l’arrêt du traitement en cas de signes évocateurs
（ANSM 2025.11.12）
https://ansm.sante.fr/informations-de-securite/medicament-a-base-de-nicorandil-rappel-sur-le-risque-dulcerations-les-interactions-medicamenteuses-avec-les-ains-laspirine-et-les-corticoides-et-larret-du-traitement-en-cas-de-signes-evocateurs
また薬剤師に対しては、ニコランジル系薬剤を調剤する際には、より一層の注意を呼び掛けています
- 患者に潰瘍化のリスクと対処法について周知徹底してください。
- 患者が緊急の診察を必要とする兆候について理解していることを確認してください。
- 併用薬（特にアセチルサリチル酸を含むNSAIDs、コルチコステロイド）を確認してください。
Risque d’ulcérations cutanéo-muqueuses lié au nicorandil : données récentes de la base nationale de pharmacovigilance française et du programme de médicalisation des systèmes d’information (NICORUC)Risk of mucocutaneous ulcerations associated with nicorandil: Recent data of the French Pharmacovigilance DataBase and Toulouse Hospital Discharge DataBase (NICORUC)
（Therapie. 2025 Sep 5）
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40987646/
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0040595725001064?via%3Dihub
関連情報：TOPICS
2012.03.21 ニコランジルによる潰瘍はさまざまな粘膜で発現しうる
2025年11月14日 22:46 投稿
